今月の読本「ニッポンの山里」(池内紀 山と渓谷社)

今回から読書のタイトルも様子を見ながらこちらに移動してみる。

一回目は「ニッポンの山里」(池内 紀著、山と渓谷社)

ニッポンの山里表紙

ドイツ文学者が語る、日本の山里の風景という一風変わった内容の一冊。

版元からして山と渓谷社なので、ちょっとした期待を持ちながら読んでみる。

表題にあるように甲信近郊の山村を中心に30カ所の山里を巡ったエッセイ集(雑誌連載記事らしい)。いずれも10ページ程度の本文に直筆の小さなイラストが添えられている。

いずれの章も始めに地名の興味から入り、山里へのアプローチ、その地勢と土着に関する考察、山里特有の食に関する話へと誘う、正確なパターンを刻んでいる点は流石に学者の筆遣い。

要所にひねりも洒脱もあるが、比較的淡々とした筆致で進み、特別なドラマが起こるわけではないので、里山の風物に興味がないとちょっと退屈する内容かも知れない。

ただし、着目点は流石で、何故そこに住み着いたのか、道や家、棚田が伸びる方向の訳を述べ挙げた上で「今と昔では住みやすさの基準が異なる」と述べる。

すなわち自給自足、もしくは足りない物を購入するに充分な換金収穫物が得られる、日当たりの良い、水の便がある土地であれば住みやすい土地となる事を各章で丹念に述べていく。

「二本の足、馬と人が通れる幅の道」これだけあれば人々は縦横無尽に山里を結び、物資を運び、情報を伝え合ってきた。車社会の現代とは違う観点のネットワークと住環境があったことを繰り返し述べていく。

筆者は決して現代の利便性を否定していないし、変化に対応していく山里の今をも捉えて伝えている。しかしながら、そこにはある種のオマージュを感じさせる寂しさも隠さず述べられている点が心打たれる。

私自身は勝手知ったる信州/甲州/上州の山里が次々と紹介されているので、とても楽しく読むことが出来たが、一方で「地勢」への着目が全然なっていないと反省させられる一冊でもあった。

もし、今度山里を訪れる事があれば、筆者のように、その成り立ちに思いを馳せて頂けるとより一層楽しめるかもしれませんね。

<おまけ>

  • 中表紙にちょっとした「仕掛け」が施されています。是非実物を手に取ってご覧ください
  • 最近の本にしては極めて珍しくしおり糸が織り込まれています(しかも鮮やかな緑色)。山と渓谷社様の気合いが伺われる、ちょっとうれしい装丁です
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今月の読本「ニッポンの山里」(池内紀 山と渓谷社)」への1件のフィードバック

  1. ピンバック: 今月の読本「山の仕事、山の暮らし」(高桑信一 ヤマケイ文庫)哀惜の先はきっと今に続くと信じて | 八ヶ岳の南麓を彷徨って

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