今月の読本「コンビニたそがれ堂」(村山早紀 ポプラ社)

New!2015.3.3:これまでのシリーズ作品からの選りすぐりと、新たな描き下ろしを加えた愛蔵版がこの度刊行されることになったようです。既に著者の村山早紀さんがtwitterで書影の見本を公開されています。ご興味のある方はこちらもどうぞ。

 

<本文此処から>

ある方のtwitterを眺めていて気になっていたので、一度読んでみようと東京に出張に行ったついでに探して購入した一冊。文庫では珍しいポプラ社より刊行されたシリーズで、初出も児童書の「コンビニたそがれ堂」(村山早紀 著・ポプラ社)。

コンビニたそがれ堂本編は150ページちょっとと非常に薄い本ですが、児童向けの書籍に合わせたフォーマットであったこともあり、僅かなページ数で5編のエピソードが綴られています。

帯にあるように児童書としては大変に好評であったようであり、昨年末に刊行されたシリーズ4冊目は全編書き下ろしでページ数は2倍以上と児童書発祥とは思えない本格的な小説へ成長しているようです。

シリーズ1冊目の本書は本当の意味で「児童書」からの出典であり、帯にあるように所謂「癒やし系」の内容なんだろうなと、気軽に出張帰りのあずさ号の中で読み始めたのですが正直、とても重かったのです。

お客さんが欲しい物なら何でも手に入るコンビニ「たそがれ堂」。夕暮れ時、何か強い想いを抱いた物語の登場者達が、ふと振り返るとそれは現れる。

愛想の良い店員さんに諭されるままに想いを語り出す登場者達。そこには「ある想い」に対しての切ないくらいの未練さ、心苦しさ、感謝の念が語られていきます。

普段の生活の中では、これらの「想い」を必死に押し殺し、忘れ去ろう、振り払って次に進もうと悶え、苦しむのでしょうが、店員さんは優しくも、残酷にその「想い」に繋がる商品を登場者達に見つけ出させます(お代が5円なのは…判りますよね)。

購入した商品を受け取った後、登場者達はリフレインのように「ある想い」に再び巡り会い、そして自らの想いをその中で昇華させる事で、再び日常へと戻っていきます。

取り上げられている5つのお話はどれもファンタジー小説ならあり得そうなシチュエーションですが、たった一つ違うところがあるとすれば「失われた想いに再び巡り会う」事でしょうか。

そして、「心からそれを望んでいる」人だけが再び巡り会うチャンスを得られるというファンダジー故の残酷な設定に戦慄が走るのです。

厳しく自戒をする人、心から真心を願う人、自分の想いを貫こうとする人、誠意と愛情に応えたいと思う人、強く、強く思いを馳せることが出来る人…どれも一筋縄ではいきません。

それでも想いを馳せ続けた人にだけ、ほんのちょっとの「慰め」を与えてくれる存在、「赦し」と表現すれば良いのでしょうか、を与えられた人達だけが得られる一瞬の安息をファンタジーに昇華した物語なのだなと、感じていました(これは宗教的な説話にも通じる内容ですね)。

それ故に、想いを馳せる事などとうに忘れ、他人の想いを握りつぶし、薄汚れた心で現実を這い回り、生き残ることだけに汲々としている自分にとっては余りにも眩しすぎる物語だったのです。

登場人物達が「赦し」によって変化していく心境に触れるたびに、心が強く締め付けられていくのです。「どうして自分もそうできなかったんだろうか」「もっと優しくしてあげられなかったんだろうか」と。

薄暗いあずさ号の中、街の明かりが徐々に減って車窓が黒々した夜の森を写す頃には読むほどに苦しくなっていく自分がそこにありました。

<おまけ>

  • 「赦し」の話と感じたのは「世界名作劇場アルプス物語 わたしのアンネット」のストーリーに通じる物を感じたからかもしれません(キリスト教文学には全く疎いのですが)
  • 本文の短さに対してちょっと長めかな?と思わせる解説ですが、作者が過去を振り返って「読みかけの本の続きを読むために生きていた」という一文に思わずページをめくる手が止まりました。そこには過去ではなく、たった今も自分の心の底で燻っている「想い」が綴られていたからです
  • 本作を知ったのはあるアニメーション作品制作者の方々がtwitterで会話をされていたのを見かけた時に、作者の方が設定に関わっていたことを知ったことがきっかけです。今回、初めて読ませて頂いたのですが、なるほど仰っていたことが何となくですが判るような気がしています(うわべだけだと思いますが)
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今月の読本「コンビニたそがれ堂」(村山早紀 ポプラ社)」への4件のフィードバック

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