今月の読本「西郷隆盛と明治維新」(坂野潤治 講談社現代新書)著者の杞憂と維新史への視点

今月の読本「西郷隆盛と明治維新」(坂野潤治 講談社現代新書)著者の杞憂と維新史への視点

このところ中世日本史の本ばかり読んでいたので、少し気分転換のつもりで維新の巨頭、西郷隆盛を取り扱った一冊を。

講談社現代新書の最新刊より「西郷隆盛と明治維新」(坂野潤治・著)です。

西郷隆盛と明治維新

近代政治史が専門分野となる著者にとって西郷隆盛は避けて通れないテーマであろうことは容易に想像がつくのですが、本文中でも繰り返し述べられているように「西郷びいき」による西郷隆盛伝、特に戊辰戦争までの記述に重点を置いた一冊です。

ところで、このページをご覧になっている方にとって、著者が「はじめに」で述べている「西郷隆盛と征韓論」であったたり、「右傾、左傾にとっての西郷隆盛」というイメージってお持ちになっているでしょうか。

著者の年代から団塊の世代の皆さんまでであれば、それこそ聴き慣れたフレーズなのでしょうし、昨今の風潮として色々言われることもある分野のお話かとは思いますが、我々の年代ですと、はっきりいってこれらの主張や議論と西郷隆盛を結びつける発想は既に残滓とも取れないほど希薄になっているのではないでしょうか。

そもそも中学、高校の歴史授業で幕末から近代史がおざなりになって久しい訳ですが(高校の歴史授業において今のカリキュラムのペースで征韓論まで辿りつけているのでしょうか)、一方で英雄談的に語られることが多いのもこの時代の歴史著述の特徴だと思います。

通史として捉えることが難しい半面、各種小説やドラマ等で取り上げられる「維新の英傑」と呼ばれる人物たちの活躍だけが目立って取り扱われており、通底する思想や時代背景との乖離が著しく、その後の歴史過程との連続性が非常に見にくくなっている事は否めないかと思います。

著者の懸念はどちらかというと近代史の中における西郷隆盛の位置付け、特に一部の方々が外征論者の首魁として捉えられていることに対してなのですが、一方でこのように捉えられている(と考えている)大きな理由として、前述のように維新前後で通史の叙述が断絶している事から来る問題であると言えるのかと思います。

本書では、この断絶された歴史叙述を西郷隆盛という最も扱いにくい人物伝を通じて繋ぎ込もうとしたとも思える一冊です。従って、明治維新前の西郷隆盛の伝記や薩摩藩を基軸とした視点による倒幕に至る歴史背景をご存知の方にはあまり目新しい叙述は無いかと思います。

一方で、著者の懸念通りのお考えをお持ちの方々にとっては維新前夜の段階における西郷の位置づけとして以下の点は意外と新鮮に受け止められるのではないでしょうか。

・西郷隆盛は尊王攘夷派でも開国派でもなかったし、ましてや公武合体派にも与する者ではなかった。目指していたのは挙国一致の所謂合従連衡派とでもいうべき雄藩連合だった

・西郷隆盛は非常に早い段階で雄藩連合の形態として衆議派(議会制)を目指していた

・西郷隆盛と大久保利通では西郷の方がより進歩的かつ、広範な人脈を有していた(これは江戸詰の際に島津斉彬に抜擢された影響が極めて大きく、勝海舟と同水準で談判できたのも早い時点から雄藩の家老、藩主クラスと交流を持つだけの経験を有していたため)

そして、維新前夜における武力倒幕において、著者が強調している点は「所謂官軍などはなかった」という点です。

官軍と呼ばれれていたのは薩長土の「藩兵」たちであり、出兵費は各藩が負担していたと考えられるし、総参謀として西郷が立っていたが、あくまでも最大兵力を供出していたのが薩摩だったので指揮権上当たり前のようにその地位に就いていた事になります(それでも、江戸城無血開城の談判において一人己の判断で決断した西郷の胆力には驚嘆すべきところがあります)。

それ故に戊辰戦争終結後、各藩の兵力が撤収すると同時に「用心棒」の居ない新政府は迷走を続け、結局、各藩から兵力を再徴集した「御親兵」とその首魁である西郷の中央政府復帰による軍事的圧力によって廃藩置県が断行されたことを看破しています。

この事は、「御親兵」の扱いを誤れば新政府もろとも吹き飛んでしまう脆さ(筆者はこれを「革命軍」と呼んでいますが)を内包しており、その矛盾解消の一端が所謂「征韓論」の出発点(筆者は台湾出兵と比較で論じていますが)であり、これは秀吉の朝鮮出兵と全く同じロジックである事が理解できると思います。

歴史の結末として秀吉は朝鮮に出兵し敗退、西郷は自らの下野によって矛盾を内に仕舞い込むことで鎮静化を図るつもりだったのかと思われますが、最終的には自らも滅び去るという結末を選ぶことになったわけです。

しかも西郷が自らの滅亡を以て封じたはずの「革命軍」の矛盾はその後「帝国主義の膨張」というシナリオに書き換えられた末に破綻の道を突き進む結果となったわけです。

この最終末における変遷ぶりが西郷隆盛の評価を難しくしているのでしょうか、残念ながら「西郷びいき」を自称する筆者もこの点については筆を濁しています(大久保利通と勝海舟をストレートな程、批判的に取り扱う割には)。

やはり西郷隆盛という人物を取り扱うのは難しいものなのかもしれません。

季節外れの春雪の八ヶ岳

こんなに遅い時期に雪が降るのも珍しければ、ましてや積もるなんて…

雪を纏った桜の花なんかを撮るには最高だったのかもしれませんが、生憎車のタイヤは既にノーマルなため、おとなしく家に引っこんでいた週末。

そうはいっても、午後には晴れ間も見えて来たのでちょっとお散歩を。

風がかなり強く、今にも雪が舞いそうな寒さの中、再び信濃境に車を走らせる。

雪を戴く春の八ヶ岳

高原に登る道沿いから雪を戴く八ヶ岳を。この時期に東麓側が雪を被る事は珍しいです。

これ以上のぼると道路に雪が残っていそうなのでUターン。

葛窪の枝垂桜4

先週、開花したばかりだった葛窪の枝垂桜もようやく満開に近づきました。

向かいに横たわる南アルプスの峰々は雪雲に隠れている(かなり画像補正かけています)。

高森観音堂の枝垂桜

ちょっと寄り道した高森観音堂の枝垂桜も満開。生憎の空模様、そしてこの寒さで観光客の方々もまばら(ここだけBlackberry9790で撮影)

春雪の八ヶ岳

八ヶ岳山麓の道路を西へ進む。

普段より少し低い所を走っていたら、周りの森まで雪を被っている事に気が付く。

夕方になってようやく雪雲が晴れかかっている八ヶ岳を望みながら。今日はこれ以上は上には行かず。おとなしく家に帰った次第【クリックでフルサイズ】。

明朝は何と氷点下の予想が出ている。もう4月も終わりなのに…

今月の読本「マルハニチロおかさなポスター縮刷版」おいしく食べてよ、人間君。

今月の読本「マルハニチロおかさなポスター縮刷版」おいしく食べてよ、人間君。

最初に見た時から、何時か本にしてほしいと思っていた「マルハニチロおさかなポスター」。

イラストレーターの鈴木勝久氏によるテーマ毎に纏められた精緻な魚のイラストと詳細な解説がB1版というビックサイズのポスターの中にぎっしりと描かれているのを見た瞬間、これだ!と思ったものです。

残念ながらその巨大なサイズ故に自宅にコレクションするにものんびり鑑賞するにもちょっともてあましてしまうため、是非書籍化して欲しくてアンケートまで書いたものです(厚かましくてスミマセン)。

そんな我儘な魚食民を憐れんでか、昨年からはクリアファイルに手提げ紙袋、年末にはポストカードカレンダーとあと一歩で書籍かな…と期待を持っていましたら、遂に待望の書籍化なのです!

マルハニチロおさかなワールド1

表紙はこんな変哲もない、どこかの企業案内みたいに見えますし、価格は非情にも1000円(送料別)もするのです。でも、そんな非情さもページをめくれば吹っ飛んでしまいます。

マルハニチロおさかなワールド3

じっくり眺めたかった「おさかなポスター」そのもの、美しいイラストの縮刷版が左ページに、そして右ページには各ポスターに関するライナーノーツと掲載魚種の分類表記が。

ポスター中の解説文も活字化して欲しかったのですが、残念ながら目を凝らして縮刷から読み取るしかありません。せっかく魚種の簡単な解説や調理法、旬などが書かれているのですが、縮刷のため極めて読みにくいのが残念。

掲載されているポスターは全部で18種類です。

魚種シリーズ

鰹・鮪 / 鯛 / 鮭・鱒 / 海老 / 蟹 / 鱈 / 烏賊 / 平目・鰈 / 貝

マルハニチロおさかなワールド2

マルハニチロと言えば「あけぼの鮭缶」ですよね。鮭鱒類への愛着がコメントにも溢れています。

マルハニチロおさかなワールド4

マルハニチロのもう一つの名アイテムと言えば「魚肉ソーセージ」そして、練り物と言えば鱈ですよね。北方に縁深い企業ゆえに、解説も豊富です。

市場扱い種類シリーズ

青物 / 赤物

マルハニチロおさかなワールド3

市場で扱われる名称ごとに纏められたシリーズ。やっぱり魚と言ったら庶民派の「青物」が一番ポピュラーですよね。縞鯵をトップにして片口鰯まで盛りだくさんです。基本的にすべての魚に対して漢字が当てられているのもいいですよね。

生息域シリーズ

北方物 / 南方物 / 以西物 / 淡水魚 / 黒潮 / 江戸前/ 養殖物

こちらは、生息域別に纏められていますが、前述と少々ダブっていたり、魚種ではない(昆布や海苔)ものの掲載されていますが、これはこれで良いかと思います。

また輸入魚類に対しても等しく取り扱っているのは流石です。世界中にバイヤーを展開させ、新たな食用魚種を開拓し続けている国際的な水産物商社としての一面を見せてくれています。

ちょっと悲しかったのは、判ってはいるのですが「江戸前」のポスターに「青鱚」が掲載されている点でしょうか。もちろん過去の話であることは解説に載せられているのですが…。

そんな教育的な面も有するおさかなポスター縮刷版、最後のページの折込にはお約束、水産会社ですから漁法紹介のページがちゃんとついています。

マルハニチロおさかなワールド5

マグロはえ縄漁船のファンネルマークを見ると、ちゃーんとマルハのマークが入っていますし、サケ・マス流し網の母船のシップカラーはもちろんニチロをイメージしているようですね。

こうして大量に水揚げされる魚達も、すべてが人間の胃袋に入るわけでも、飼料として用いられる訳でもなく、混獲や鮮度落ちのため捨てられてしまう魚達もたくさんいるのです。

そんな中でも魚を獲り続け、消費者に届けることを生業とする水産会社から消費者へのほんのささやかなメッセージが表紙に書かれている「おいしく食べてよ、人間くん」なのでしょうか。

美しいイラストを眺めながら、今度魚を食べるときにはもう少し色々とイメージを沸かせながら食べようかな…と新たな想い、知的好奇心を沸かせてくれる一冊です。

おさかなファンであれば必携、博物学的資料としても良し、食材等として興味がある方にもお勧めの一冊です(お高いですが)。

購入方法は、こちらのマルハニチロのネット通販「マルハニチロの海のあじわい便」よりどうぞ。

<おまけ>

おさかな好きの方にお勧めの本を少々。

  • おさかな料理の方面にご興味があるなら、こちらの本はご存じですよね。「ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑」を主宰されている藤原昌高氏の代表作のひとつ「からだにおいしい魚の便利帳」です。こちらは説明不要でしょうか。ぼうずこんにゃくのホームページをご覧になった後で、このホームページの書籍版が欲しいな、と思ったら購入されて正解です
  • 釣り方面で魚が好きな方には、週刊釣りサンデー元代表で魚類研究家でもある小西英人氏が釣魚を主体に魚たちと人間の物語を描く「遊遊さかな辞典」がお勧めです。こちらはライトな筆致とは裏腹に重たい内容で埋め尽くされている一冊。釣り人のつぶやきから研究者とのコラボレーションが生み出した意外な結論まで、釣りに関わる方なら誰しも一度は疑問に持ったり、考えたりする「想い」がずっしりと溢れています

からだにおいしい魚の便利帳と遊遊さかな辞典

信濃境の桜達(静かな県境に凛と佇む)長野県諏訪郡富士見町

New!(2016.4.13):例年恒例の信濃境、高森観音堂で開催される「高森観音堂de桜まつり」。今年は、4/23(土)、4/24(日)の二日間に開催される予定です(御柱の年ですので、準備も大変だそうです)。高森観音堂の桜は既に咲き始めていますので、満開を過ぎた辺りになりそうですね。当日は観音堂内部の公開もある筈です。開催内容の詳細は、直近になった時点で富士見町公式ホームページに掲載されると思います。

New!(2015.4.15):例年恒例の信濃境、高森観音堂で開催される「高森観音堂de桜まつり」。今年は、4/18(土)、4/19(日)の二日間に開催されることが決定しました!振る舞いや、出店、信濃境駅発着で町が主宰するウォーキングツアーも実施されます(今年もこっそり、夜桜ライトアップがあるかも…)。詳しくは富士見町公式ホームページへ。

2014年の開花の模様はこちらのリンクから順次ご紹介する予定です。

・2014年4月8日、11日の様子はこちら

2014年4月12日の南麓、山梨県側の桜の様子、その1(小淵沢・城山公園)その2(峡北ふらふらと)その3(高根・熱那神社)

・2014年4月13日の諏訪郡富士見町、信濃境の様子はこちら

・2014年4月18日の信濃境、葛窪の桜開花の様子はこちら

・2014年4月19日の信濃境、田端の枝垂れ桜と高森観音堂の夜桜の様子はこちら

・2014年4月20日の信濃境、葛窪の枝垂れ桜と高森観音堂の桜まつりの様子はこちら

・2014年4月23日の見頃を迎えた、信濃境、田端の枝垂れ桜の様子はこちら

・2014年4月24日の見頃を迎えた、信濃境、葛窪の枝垂れ桜の様子はこちら

再び冬が戻ってしまったかと思わせるほどの氷点下まで冷え込んだ週末の朝。

このような日は決まって美しい青空に恵まれる。

そんな冬と春がちょっとまぜこぜになった日。普段、車ですと一瞬で通りすぎてしまう県境の静かな小邑、信濃境の桜を追ってカメラ片手に散歩してみました。

桜と甲斐駒

No.1より、満開まであともう一歩となった桜に囲まれた甲斐駒を。穏やかな春の日差しの下、残雪が輝く【クリックでフルサイズ】。

田端の枝垂桜

No.2より、先日も訪ねた田端の枝垂桜はいよいよ見頃に。今年も美しく咲き誇る古木は風格を漂わせる。奥には八ヶ岳【クリックでフルサイズ】。

田端の枝垂桜越しに南アルプス

田端の枝垂桜越しに南アルプスを。この時期にしか撮影できない取り合わせ【クリックでフルサイズ】。

桜の花

No.3より、田端の集落で見つけた満開となった小さな桜の花をアップで。春の日差しを浴びて美しく白く輝く【クリックでフルサイズ】。

田端の天満宮

No.4より、古い土地なので集落ごとにお社が鎮座している。こちらは田端の天神社。諏訪の神社の習いとして必ず御柱が。

まだ早い新緑

中央本線の葛窪トンネル沿いを歩く。ひんやりと心地よい風を受けながらようやく芽吹き始めた緑を。もう少しするとこの場所は落葉松の新緑で眩しいほどの緑に囲まれるのですが、今はまだまだ静かな冬の装い【クリックでフルサイズ】。

池生神社

No.5より、信濃境の駅裏にある池生神社。この辺りでは遅く咲く桜達も漸く花開き始めています【クリックでフルサイズ】。

池生神社の桜

別の角度から池生神社の境内を。手前の畑は初秋になると一面の真っ白な蕎麦の花でいっぱいになります【クリックでフルサイズ】。

蕎麦畑と池生神社

初秋の池生神社の周りはこんな感じです。

富士見町立境小学校校庭

No.6より、途中通過した境小学校の校庭。池生神社より100m弱標高が高いので、桜はほころび始め。桜も咲く前に校庭には早くもこいのぼりが…(ここだけBlackberry9790の画像です)

五島光学と八ヶ岳

No.7より、一気に標高を稼いで八ヶ岳側に移動。昨年、超新星を発見された五藤光学が所有する八ヶ岳観測所と八ヶ岳の遠景を。45cmカセグレイン望遠鏡を収容する天体望遠鏡用ドームが光り輝く。

葛窪より八ヶ岳遠景

No.8より、葛窪集落の一番標高の高い場所から残雪残る八ヶ岳を。七里岩の断崖沿いにある池生神社からは200mほど標高を上げている。最近電線柵とかが増えてしまった八ヶ岳周辺で裾野まで綺麗にパノラマを楽しめる貴重な場所です【クリックでフルサイズ】。

八ヶ岳と蕎麦畑

こちらも秋になると一面、蕎麦の花に囲まれます。

葛窪の神明社

No.9より、再び標高を下げて葛窪の集落の中へ。神明社にはもちろん御柱が。諏訪大社の上社本宮と同じ理由なのでしょうか、鳥居の向きとお社の向きが直角を向いているのがちょっと不思議(田端の天神社も同じなのですが、こちらは中央本線が開通した時に本来の社殿の位置から移設しているので判明しません)。

路傍の祠

No.10より、路傍の小さな祠。背中に梅の木を背負っているのがちょっと可愛らしい。諏訪の周りにはこのような小さな祠がそこかしこに残っていて、今でも大切にされているようです(少し大きめの神社に合祀されている例もたくさんあります)。ご興味がある方は以前NHKで放映されていた新日本風土記「諏訪」をご覧ください【クリックでフルサイズ】。

葛窪地先の枝垂桜1

No.11より、甲斐駒を後ろに夕日を浴びて薄紅色を魅せる、葛窪地先の枝垂桜【クリックでフルサイズ】。

葛窪地先の枝垂桜2

反対側より。まだ満開とはいきませんが、枝垂桜らしい雰囲気は充分に楽しめます【クリックでフルサイズ】。

葛窪の枝垂桜1

No.12より、独り凛として佇む葛窪の枝垂桜。もう日が西に傾きかけているので花の鮮やかさを出すことが出来ていませんが、風雪に耐えて、台地の突端に独り立つその風格は、美しさを語るのではなく畏敬を念を以て接したくなる一本です【クリックでフルサイズ】。

葛窪の枝垂桜2

何とか色を出そうと試行錯誤の一枚。写真ではどうしても伝えきれない事がたくさんあるこの桜の木です。今年はまだピークに達していませんので、是非実際に見て頂きたいと思う所です【クリックでフルサイズ】。

葛窪の枝垂桜3

一瞬、晴れ間が覗いたタイミングで撮影した本日(4/21)、ほぼ満開になった状態を【クリックでフルサイズ】

先達城跡の桜

No.13より、そろそろこの小邑を巡る散歩も終わりの時刻です。夕刻の日差しを浴びる先達城跡に咲く桜の木々を。来週になると幔幕が張られ、夜桜を楽しむ地元の方々が集まられる場所です【クリックでフルサイズ】。

先達の枝垂桜

No.14より、ラストに八ヶ岳をバックにもう間もなく花が揃い始める先達の枝垂桜を【クリックでフルサイズ】。

さして見どころがあるわけでもない県境の静かな小さな集落故に、これほどの桜達が残っているともいえますが、実際には現在残っている桜達は大規模な圃場整理をかいくぐって奇跡的に生き残っているだけに過ぎません。

これからも幾久しく、春を告げる花を咲かせ続けてくれることを祈って止みません。

shinanosakai_map

今回のお散歩Mapです。

詳しくは富士見町の観光ガイド「富士見町を歩く」を参照願います。

大切なお願い : 撮影場所付近は一部には駐車場がありますが、殆どの場所が公道沿いとなります。地元の皆様が日常生活で使われる、大切な生活道路です。お車でお越しの際には、通行の迷惑にならないよう、駐車場所には十分に配慮して頂けますよう、お願い致します。

私のショボイ写真ではどうにも良さが判らない!という至極まっとうなご批判に対して、釈明ではありませんが、地元在住のプロの風景写真家・玉置弘文さんの写真をこちらからどうぞ

続編です : 7月の井戸尻遺跡と大賀ハスはこちらにて

続編その2 :高森のひまわり畑はこちらにて

今月の読本「信州観光パノラマ絵図」(今だから見たい観光に賭けた先達の想い)

今月の読本「信州観光パノラマ絵図」(今だから見たい観光に賭けた先達の想い)

他の読みかけをすっ飛ばして、一気に読んでしまいました。

鉄道ファンの皆様ならすでにご承知かと思いますが、ここ数年鉄道ファンの分野に「絵地図」が登場。密かなブームになっていますね(鉄道ピクトリアルが発信源でしょうか)。

そのブームの仕掛け人でもある今尾恵介さんが監修を務め、ローカルながらそのテーマ選定と全ページカラーという豪華な体裁で驚かされた「長野県鉄道全駅」を手掛けた信濃毎日新聞の内山郁夫さんが執筆を手掛ける今回の一冊「信州観光パノラマ絵図」(信濃毎日新聞社出版部・編、今尾恵介・監修、信濃毎日新聞社)です。

信州観光パノラマ絵図

古くから教育立県と謳われる長野県ですが、その底辺には地方出版社による地道な出版活動による読書人口の継続的な維持があると考えられます(隣の山梨と比べると圧倒的に本屋さんが多いのですよ、長野は)。

昨今の不景気で数多あった県下の出版社も徐々に減っているようですが(昨年も一社、刊行を止められましたね)、その中でも高いクオリティで一人気を吐いているのが信濃毎日新聞社の出版部です。

大型写真集の大著となった「絶景の山シリーズ」は全国書店の登山コーナーを飾っていますし、「地域を照らす伝統作物」のような地域に密着した取材に基づいた書籍、東海大の駅伝監督にも就任した両角速さんの「「人間力」で闘う」などの、スポーツ関係の書籍…と、非常にバリエーション豊富なラインナップを繰り出しています。

そんな中でも、信濃毎日新聞が力を入れているのは「信州の観光」に関する分野ではないでしょうか。豊富な信州の観光資源を地元ならではの丁寧な取材と美しい写真、新聞社らしく短くも的確な文面で広く読者に伝えたいという想いは本書にも随所に見受けられるところです。

そんな「観光」という分野が鉄道網の普及により、日本国内でようやく途に就いた大正から昭和初期に大流行したのが今回のテーマとなる「パノラマ絵図」です。

元を辿れば浮世絵に辿り着くのかもしれませんが、西洋画法によってもたらされた遠近法を日本の古典的な画法にミックス、日本人が得意とするデフォルメを加えることで、世にも不思議な「魅せたい所だけを強調して、周囲の風景を織り交ぜる」地図として成立したのがパノラマ絵図かと思います。

そんなある意味ユーモアのある、ある意味ファンタジーな世界観を魅せるパノラマ絵図ですが、如何せん当時最先端の「広告媒体」だった訳で、その中身をじっくり見るとそこには悪意あるデフォルメと強調のオンパレードだったりする訳です(どのくらい酷いかは本書を手に取って観て頂ければ)。

悪意ある編纂が施される一方で、著者が指摘しているように当時の産業、社会構造をパノラマ絵図から導き出すことも可能であり、製作者たちが発注者と幾度となく議論を繰り返しながら完成させたであろうことを著者は丁寧に指摘していきます。

また、既に失われてしまった当時の風景が織り込まれている事も特徴の一つで、最後の章に割り振られているダム建設が始まる前の天竜峡のパノラマ図を見ると「こんな壮大な峡谷が日本にもあったんだ」と驚かされると共に、今の佐久間ダム湖畔に通じるか細い道路脇から眺める湖面を思い浮かべて、近代化によって大きな利便性を得た半面、何かとても大きなものを失ってしまったんだな、という観光とは異質の想いを抱かせてくれる本でもあります。

そんな、硬軟まぜこぜな(パノラマ絵図自体がごちゃまぜなのですが)内容を含む本書ですが、何よりも重要なのはこれらのパノラマ絵図を発注した人物たちが「我こそは信州の観光を発展させる」との想いから道路を開き、鉄路を引き、施設を整え、このような観光案内をあまねく全国に配布したことではないでしょうか。

先駆者の地道な努力によって一大観光地となった信州ですが、残念な事に本書に掲載されているパノラマ絵図の観光名所の多くは観光資源としての輝きを失いつつあり、その輸送手段であった鉄道網も年々縮小を続けています。一方で同じパノラマ絵図で天上の楽園のごとく描かれる上高地は年々人気が上昇していますし、草原が広がっているだけであった軽井沢の南側は高速道路開通もあり、今や一大レジャー地区に様変わりしています。

本書を手にとって、先達の苦労をしのび、昔を懐かしみ、パノラマ絵図中の面白い記述を楽しんだ後は、ちょっと今の状態を思い出して、この後どうなっていくんだろうなどと、未来に思いを馳せて頂くのもまた良い機会ではないでしょうか。

<おまけ>

  • 他の信濃毎日新聞出版物同様、本書の秀逸なところは全ページカラーにも拘らずこの価格(1700円)に抑えて発刊されている点です。しかもパノラマ絵図はページが複数に分割されてはいるものの、絵図中の文字がかろうじて読み取り可能な範囲までの縮小に留めており、資料的価値も充分に考慮されている点がとても嬉しい配慮です
  • 更にこだわりのポイントは「紙質」です。本来なら現代の一般書籍では使わないであろう、やや凹凸のある黄色味がかった用紙は、ずばり「パノラマ絵図」に使用されていたであろう紙質の質感を出来るだけ再現しようという試みにちがいありません。そのような心憎い配慮と資料性(長野県立歴史館が協力)を重視した編集内容は単なる読み物、鉄道ファン向けのコアな出版物という範疇を越えた「資料」としての体裁を有する一冊です。
  • 信濃毎日新聞社が刊行するシリーズで鉄道ファン、旅行ファンの方々にも興味を示されるであろう書籍を何冊か紹介させて頂きます
    • まずは冒頭でも紹介した「長野県鉄道全駅」でしょうか。オールカラーで長野県にあるJR、第三セクター、私鉄の全駅が紹介されています。昨年春に廃線となった長野電鉄屋代線の各駅写真は今後も貴重な資料となるはずです。
    • 「長野県鉄道全駅」が百科事典だとすると、セットとなる旅行ガイドが「信州 四季の駅旅」です。駅をテーマにした小旅行の写真集となっていますので、本書を片手に列車に乗ってまだ見ぬ風景を探してみるのもいかがでしょうか。
    • 次に「信濃の橋百選」です。こちらもカラーで長野県に現有する歴史的価値の高い橋を紹介しています。鉄道ファンというより地理ファン、建築物ファンの方に向けた一冊ともいえます
    • 信州を旅するシリーズで私のお気に入りは冒頭の写真にも載せています「峠で訪ねる信州」と「酒蔵で訪ねる信州」の2冊です。どちらも同じ著者(川崎史郎氏)と写真(小林敬一氏)による、ちょっと控えめな筆致で描かれる探訪記だったりしますが、「峠」の方は美しい峠の写真と共にアプローチ方法、mapが付いており、そのまま峠ファン向けの探訪ガイドに使えるほどの情報量を有する一冊です。「酒蔵」の方も同じ編集方針で信州の酒蔵巡りにはピッタリな一冊ですが、掲載されている写真がいずれも郷愁を誘う素晴らしいカットで溢れており、日本酒ファンなら眺めているだけでも至福の時を過ごせる事間違いなしの一冊です(呑みながらなら尚の事?)