今月の読本「ヴァティカンの正体」(岩淵潤子 ちくま新書)バチカンを題材に採った「情報スクラップブック」

何故だか、バチカン関係の刊行物が続くような気がする昨今。

昨年の教皇交代は確かに印象的であったし、その後も色々と話題を提供し続けているバチカンとローマ教皇の周辺ですが、その影響が遥か極東のキリスト教にとっては未だ未開の地であり続ける、この日本の出版業界にも到達したのでしょうか。

そんなバチカン絡みの最新の出版物を、ちくま新書の今月の新刊からご紹介。「ヴァティカンの正体」(岩淵潤子著)です。

ブァティカンの正体まず、「正体」という引っかかり感が気になる題名ですが、内容の方も、ライトな内容に変化しつつある、ちくま新書の中でも、ちょっと弾けたラディカルな内容。

もし、帯にあるようなバチカンの情報戦略や、所謂謀略なんていう、ドラマ仕立てのストーリーにご興味がある方は、小説や別の書籍を当たられた方が良いかと思います。

また、文末に掲載します、他の新書シリーズで扱われているようなバチカンの歴史や、文化、教会組織や教化に関するお話、外交や歴代教皇の事績については、部分的には語られますが文中にモザイクのようにちりばめられていますので、それらをテーマに通読するにはちょっと困難です。

本書は表題こそ「バチカン(著者の記述に従えばヴァティカン)」を取り上げていますが、実際にはバチカンというお題目を用いて、著者が得意とている情報やコンテンツビジネスにおけるそれぞれのシーンで、彼らの考え方がどのように当て嵌められるのかを考察した散文を纏めた、スクラップブックのような内容です。もしくは「コンテンツ」と「バチカン」をテーマにしたマガジン形態の読み物と言っていいでしょうか。

一応、3章の前半くらいまではバチカンの話題が中心として取り上げられますので、1章のバチカンの図書館やIOR等、現代のバチカンの話題に触れる点は多々あります。しかしながら、2章の聖書と教会に関する話題から徐々にコンテンツ的な話題に脱線が始まりますが(ミッションスクールとヨハネとBLというぶっ飛んだお話も)、3章の歴代教皇の芸術に対する投資と、資金源としての贖宥状、宗教改革の部分を過ぎると、それ以降、バチカンは話題をエントリーさせるための介添え役として取り扱われるだけ。著者が得意としているであろう、コンテンツ分野における話題が中心となります。

逆に、本書をコンテンツビジネスや情報サービスの分析における、キリスト教価値観を持った著者による「バチカン」を切り口とした見方をちりばめた本であると理解すれば、すんなり読めるかもしれません。

そのような意味合いで、ちょっとバチカンを忘れて読み始めれば、4章はカウンターカルチャー論として楽しい読み物ですし、最後のクールジャパンに対しての言及もよく判りますが、ここまで来ると、終章で落としどころを探っているにも拘らず、「バチカンの話は何処に行ったの」といった感が出てきてしまいます。

なにせ、冒頭と文末がステーィーブ・ジョブズへのオマージュで彩られる本書ですから、ある種のカリスマ性を象徴するアイコンとして、バチカンを捉えているのかもしれません。

バチカン関連新書4冊プラスバチカンを扱った新書の近刊より。おまけで、本書で繰り返し言及される、カウンターとしてのマルティン・ルターも。

<おまけ>

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