今月の読本「バケツで実践 超豪快イネつくり」(薄井勝利監修 農山漁村文化協会)プロの農家と農業書出版社が手掛ける本気の食育・育農本

まずはこの本の表題に、簡単に惑わされた事を恥じなければなりません。

表題のノリの軽さに、ついついお遊び企画なのかと想い込んでしまったのですが、数ページめくっただけで、自分の判断力の甘さを痛感させられたのでした。この本は、本気だと。

超豪快イネつくり2よくある、一粒の米のモミ。モミ自体も見ることが少なくなっているかもしれませんが、ご飯一粒分に過ぎません。もしコンビニのおにぎりで、ご飯粒が数個フィルムに挟まれて裏側に廻っていても、わざわざフィルムをばらして取り出すなんてことはせずに、そのままゴミ箱へ直行してしまう事が多いのではないのでしょうか。

超豪快イネつくり3でも、そのゴミ箱に葬り去ってしまった、たった一粒のご飯が、これだけのお米に化けると思うとどうでしょうか。そして、このたわわに実った稲穂を見ることが、たった一つのポリバケツで皆さんのお庭でも体験できるとしたら、お米で育ち、支えられる日本人にとってどれだけの感動と貴重な経験を味わう事になるでしょうか。

そんな、日本の食事の根底を支えるお米を作るという、大切なお話を、お話だけではなく、実際に皆さんで体験して、感動してもらいたい。そんな想いが詰まった一冊が、今回ご紹介する本です。

超豪快イネつくり1農業関係の書籍では随一の経験と実績を有する農文協(一般社団法人 農山漁村文化協会)が福島県須賀川市で農業を営むプロの農家で、ポリバケツによるイネの育成研究を30年にも渡って続ける薄井勝利氏と組んで編纂した「バケツで実践 超豪快イネつくり」です。

本書は、あくまでも児童及びその保護者に向けた、ポリバケツを利用したイネづくりのガイドブックという体裁を取っていますので、内容は極めて平易、記述も小学校高学年向け程度の理解力で読むことが出来るように配慮されています。

とろろが、内容を読み進めていくと、そんな読者層はおろか、一般の社会人でも全然知らないような内容がポンポンと飛び出してきます。苗の育て方から始まり、苗床の栄養、苗の葉の別れ方と葉齢なんて聞いても、多分ちんぷんかんぷんでしょう。

超豪快イネつくり9でも、名人である薄井勝利さんが育てた苗の写真を見れば、ああ、綺麗な苗だなあと納得してしまえる、学術書にも勝る丁寧に撮影された育成段階の写真と、実例が綴られていきます。その中で編者達は、きっちりと「機械化、大量生産化」された現在の稲作による育成方法と、イネ本来が持っている植物としての本当の実力の違いを明確にしていきます。

本書では、あくまでも楽しみながらイネの栽培に挑戦してみようというコンセプトで綴られていますが、バケツイネが植物本来のパフォーマンスを最大限に引き出すために編み出された、篤農家の実証的研究手法である事をさりげなく表していきます。

超豪快イネつくり4そのことが、もっともよく判るのが土づくりと、施肥に関するページです。

本書では、冒頭で丁寧に土づくりと最初に備えておきたい土の特性について触れた後、それこそ繰り返し施肥に関する記述のページが現れてきます。施肥のタイミング、肥料の種類と効能、何故、このタイミングでこの肥料を使わなければならないのか…。

一般の植物と農作物の大きく違うこと、それは種自体が殆ど人工的な交配によって作り出された「作物」であって、農家の方、つまり人間が世話をすることによって初めて育成できる植物である事です。

本書が繰り返し施肥について言及する、即ち、懇切丁寧に人手によって世話をしてあげることで初めて植物としてのイネは育つという事を、本書は実体験を通じて理解していくことになります。そこには、バケツイネという、ある種の閉空間であれば、土の特性も、過剰な施肥も、過小な施肥も自由に制御できる。その結果どのようにイネが育っていくのかを見極める。監修に当った薄井利勝さん本来の狙いが見えてきます。

超豪快イネつくり5そして、美しいイネの開花シーン。大人の読者でも意識せざるを得ない、植物が持つ神秘さ、不思議さは、作物としてのイネであっても不変であることを教えてくれます。

超豪快イネつくり8秋を迎えて採り入れのシーズンとなったバケツイネ。

バケツ一つに対して土づくり、施肥、日射条件を丁寧に施して育成したイネと、隣のお父さんが持っている、水田の中で大量生産をするために育成されたイネ。同じ品種の同じモミ一つから生まれたものが、これだけの違いを見せることに驚きを隠せません。

イネという「植物」が持っている本当の実力は、我々が普段食べているお米とは別次元である事をまざまざと見せつけるシーンです。まだまだイネには大きな可能性が秘められている。

実際に育ててみなければ判らない。普段から水田に囲まれて生活していても、青々とした田圃や、たわわに実る稲穂にカメラを向けていても、そこで育つイネの力、育てる農家の想いは判らない。そんな事を考えながら読んだ一冊でした。

超豪快イネつくり7最後に、本当にバケツイネを育てて見たくなった方の為に、モミや肥料の入手方法、育成結果を記録するシートが付録としてつけられています。

ご興味がある方は、本書をお読み頂くのが一番なのですが、こちらのページ(JAのみんなの良い食プロジェクト)も参考にされると良いかと思います。

稲穂の群れと快晴の甲斐駒1

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今月の読本「バケツで実践 超豪快イネつくり」(薄井勝利監修 農山漁村文化協会)プロの農家と農業書出版社が手掛ける本気の食育・育農本」への1件のフィードバック

  1. ピンバック: 今月の読本「図鑑大好き!」(千葉県立中央博物館監修 彩流社) | 八ヶ岳の南麓を彷徨って

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