妹尾武さん久しぶりのサントラはちょっと懐かしい日本映画テイスト入りで(いなり、こんこん、恋いろは。オリジナルサウンドトラック)

ピアニストの妹尾武さんは、作曲家としても数々のアーティストに楽曲を提供していますが、もう一つ、映画やドラマ、アニメーションのサウンドトラックも手掛けていらっしゃいます。

作品数は少ないのですが、落ち着きのある、ちょっとほっとさせられれるサウンドトラックは、提供したアニメーションに限らず、多くのテレビ番組(特に旅行関係が多いのでしょうか)のバックに用いられていますので、ノンクレジットとはいえ、皆さんも一度はお聞きになったことがあるかもしれません。

そんな妹尾武さんが、5年ぶりに手掛けられたサウンドトラックが、今回ご紹介する一枚です。

いなり、こんこん、恋いろは。オリジナルサウンドトラック1今年の1~3月シーズンに放映されていたアニメーション作品「いなり、こんこん、恋いろは」のサウンドトラックです。

アニメに登場するキャラクターを差し置いて、CDのジャケットでピアノを弾いている妹尾さんを前面に出している、この手のアルバムとしては極めて珍しい構成のジャケットですね。

そして、帯も作品のタイトルは小さめに、妹尾さんのお名前が目立つように書かれています。

それもこれも、このサウンドトラックが実に力を入れて作られた証拠。

ライナーノーツを見れば一目瞭然。通常であればこのようなアニメーション作品(いわゆる深夜アニメの類)のサウンドトラックは、予算や製作期間の制約から打ち込み主体で、参加するアーティストも極めて限られるのが普通ですが、今回のアルバムはなんと、全曲スタジオ録音。しかも一部の曲はオーケストラスタッフまで参加する豪華な製作体制が敷かれています。

アニメーション作品のサウンドトラックを手掛ける会社のうち、本作も手掛けるフライングドッグ(旧ビクター音楽産業)は特にサウンドに拘りを持って制作されていますが、それでもこのような製作体制が敷けたのも、前作(ARIAシリーズ、Choro club feat.Senoo名義)が異例なほどの人気を博したことがあっての事。今回のサウンドプロデュースを手掛けるのもARIAシリーズと同じプロデューサーさんです。

いなり、こんこん、恋いろは。オリジナルサウンドトラック2かわいいライナーノーツとCDのレーベルを。題名通り、キツネのイラストがあしらわれています。

そんな豪華なサウンドが楽しめる本作ですが、テイストは前作のARIAとはちょっと異なります。

メインテーマ(No.03 いつも、こころに、青い空。)の最初のフレーズを聞いて、はっ、とされた方はご明察。ああ、そのまま続くと、某名作中の名作の日本映画(xさん…笑)が始まってしまいそうな、ちょっと懐かしさを感じさせる楽曲が多くみられます(ライナーノーツに服部良一、吉田正、山本直純各氏へのオマージュであることを述べていらっしゃいます)。

前半の多くはそんな懐かしさの漂う楽曲や、コケティッシュな楽曲続きますが(No.05 いなり、はんなり、京ぶらり、No.06 フシミナデシコ七変化)、中には緊張感を漂わせる美しい旋律の曲(No.09 Adagio for Strings,Op.1 -御魂-)があったり、和風音楽とオーケストラサウンドをミックスしてデジタルサウンド風に作りこまれた曲(No.10,11 KYOTO no.43)があったりと、サントラらしく、本来の目的であるアニメーション作品に寄り添うために作られた楽曲も豊富に取り入れられています。

そして、後半に向かうとARIAシリーズのサウンドトラックにも通じる、緩やかで、流れるようなメロディの曲が出てきます(No.16 君想う、星屑の空。、No.19 春色のワルツ、そしてNo.18 あの日の君を忘れないはご本人のピアノ独演で)。夕暮れ時や夜をイメージさせるこれらの楽曲を聞いていると、ちょっとほっとした気分にさせられます。

そして、17曲目の桑島法子さんがボーカルを務める「誰よりも大切な人へ」は妹尾さんが作編曲をすべて一人で手掛けられています。桑島さんのきりっとしたボーカルに妹尾さん演奏するメローなピアノとストリングスが響きあう、美しい一曲に仕上がっています(歌詞カードの下にも注目で)。

ボーカル曲の後はメローな楽曲が続きますが、どれも少し和風なテイストを醸し出しているところが心地よいですね。

最後(No.24 あの日の君を忘れない)は劇場映画のエンディングかと見まごうほどのスケール感のある、包み込むようなラストにふさわしい一曲。

美しい京都の風景(伏見稲荷をイメージして製作されています)に重なるように奏でられるこのサントラは、前作ARIAシリーズ同様に映像と音楽の素晴らしいコラボレーションを見せてくれています。そんな素敵な作品は何時でも楽しみたい、でもアニメーションの方はモニターの前でなければ楽しめませんが、音楽はいつでも楽しめるもの。

ちょっと心を休めたいとき、田舎道を車でのんびり走っているときに何時までも聞いていたい、そんな作品です。

ちなみに最もお気に入りの一曲は、虫の鳴き声の余韻が美しいNo.21 夏祭り、夢花火でしょうか。

ARIAのサウンドトラックたち前作ARIAシリーズのサウンドトラック達。

なんだかんだで、ピアノコレクション(2枚)を含めて、ほぼすべて買い揃えてしまいました(苦笑)。

今でも車で長距離を移動するときのBGMとして欠かせない、愛すべき作品です。

 

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