キーボードギミックと言えば(往年の迷機、バタフライPCことThinkPad701c)

タブレットの流行ですっかり脇役に追いやられた感の強いキーボード。

でも、文字入力やゲーム用としてキータッチに拘った高級外付けキーボードが良く売れたり、Bluetoothの定着によってタブレットとキーボードの連携運用も当たり前になってきました。

そんな中で、昨年末に登場が予告されたキングジムのPortabook XMC10。

 

 

価格帯も用途も全く違いますが、コンセプト的には、あれのテイクオーバーだねとすぐ判ってしまうのがキャリアの長さゆえの悲しさ。そんな訳で、年末に自宅の倉庫を漁って出て来た一台をご紹介。

tp701c-1電源は入るのですが、残念ながらシステムエラーで立ち上げる事はもう叶わなくなってしまった、往年のThinkPadの中でも異端な一台、ThinkPad701cです。お分かりのように、キーボードが大胆にも本体から大きくはみ出しています。

当時のThinkPad、ライオスのThinkPad220があったり、大和開発モデルの530やChipCardやウルトラマンPCと呼ばれたPC110があったりと、バリエーションの大発散状態(または進化の大発展期)だった訳ですが、こちらは米国本社企画製品群のトップレンジに付される、7xx系列のプレミアムモデル。

発売当時は75万円という信じられないような価格(当時、ThinkPad7シリーズでカラーLCDモデルの中には100万円超えるモデルもありましたし、Macも似たようなものでしたから…はぁ)、しかしながら後述の理由で、T-Zone名物の投げ売りモデルに成り下がった購入時は20万円弱で買ったような記憶があります。年始の売り出しで購入して、大急ぎでWordPerfectとLotus1-2-3だけをインストールして、ひたすら学位論文を書くためだけに「使い捨てた」一台でした(あのときのWindows版のWordPerfectはバグだらけだった)。

tp701c-3蓋を閉めた状態。

サイズはちょうどB5サイズ位になりますが、厚さはけっこうあります。

当時はThinkPad購入者にオリジナルのネームプレート(個人名を入れてくれます)をプレゼントするサービスがあり、こちらも手前に液晶の縁に取り付けてありますが、そんなプレートが付けられるくらい、液晶側の蓋の厚さがありますね。今のモデルと見比べるとかなり分厚く思われますが、それにも訳があります。

スペックは80486DX75MHzという、今となっては気の遠くなるような貧弱なスペック。液晶はTFT-VGA(640×480)でしたが、カラー液晶自体がまだ貴重だった当時としてはかなりの豪華スペックです。ちなみにシールが貼られているように、末期にはこの個体にOS/2とブートマネージャーを突っ込んでOS/2 (include Windows3.1) ,Windows95のデュアルブートにして使っていました。

tp701c-4キーボードのアップ。

本体の側面からキーボードが飛び出しているのが判るでしょうか(黄色い補助線の外側)。

それ以外は、当時のミドルモデル、一回り大きなセミA4サイズのThinkPad600とほぼ同じキーボードレイアウト(7xxシリーズはA4ファイルサイズと呼ばれるサイズ感です)と、キーの打感を持っています。

ほぼA4サイズの名機ThinkPad600のキーボードサイズと機能を、一回り小さいThinkPad530(時代は逆ですが)とおなじフットプリントで実現する…これがThinkPad701cのコンセプトであり、ある種の限界の原因でもあります。

tp701c-2この本体からはみ出したキーボードを収容するギミックがThinkPad701cの真骨頂。

バタフライPCと呼ばれた、蝶の羽をイメージした特異な機構を本体に仕込んであります。機構を動かすための軸となるのがこちらの太い液晶ヒンジに彫り込まれたスプリット。メカにご興味のある方なら、あぁ、と頷かれるかもしれませんね。螺旋スリットに合わせて直動軸を動かすギミックを作り出すキーとなる部分です。

このごついスプリットの中に液晶へ向かう配線がきっちりと収められている事もあって、後のThinkPad570が苦しんだ、液晶配線切れが多発するようなトラブルは皆無だったようです(ThinkPadの液晶ヒンジがアルミ製になったのはThinkPadが2桁Noモデルになった後)。

tp701c-6ちょっと汚くて申し訳ございませんが、このように液晶の蓋を閉めていくと、キーボードが斜めに分割して、右側のキーボードが上にスライドしながら、左側に寄っていきます。左側のキーボードは本体の前縁をそのまま右にスライドしていきます。

tp701c-5キーボード部をアップで。

スライドしたキーボードの右側はそのまま本体の奥側にスライドした状態で格納されます。液晶側が平面で、キーボード自体が最初から沈ませて配置されている今時のノートPCと異なり、液晶蓋側の側面がカバーとなって、キーボードを保護する形になっています。

キーボードのストロークを減らすとことなく、キーピッチを詰めることなくフルサイズのキーボードを搭載することに成功したThinkPad701cですが、一方で、キーボードを本体内に格納する必要があった事もあり、本体の厚みが増してしまうという弱点も抱え込むことになります。

そして、もう一つの弱点、ノートPCを使っている方なら誰しも悩むパームレストの存在。単に手の甲を置くという機能性の欠片のない部分にも拘わらず、歴代のThinkPadでは機能性の観点や熱の問題、更には塗装剥げ(ないしはコーティング剥がれ)で常に話題となる重要な単なる手置き台。このモデルでは、その特異な機構ゆえにパームレストが全くないという大きな問題が生じてしまいます。

キーボードを本体の下に収納する必要があるが、手前側にボディを伸ばす訳にはいかず、結局キーボードを収納するスペースを本体奥側に確保したわけですが、そのために本体手前側スペースが窮屈になってしまい、ボディの厚さも加えて、常に手首を浮かせたままでキーを叩くという、ユーザーにとって苦痛を強いる構造となったのでした(私はOS/2のノベルティ品のパームレストを愛用してました)。

革命的な機構によって実現したフルサイズキーボードの搭載とサイズの縮小化。一方で、優秀なキーボードを搭載する為に犠牲となった本体の厚さとパームレストの存在。その二つが同時に欠ける事はキーボード入力を常に重視してきた欧米のビジネスマンにとって耐えられないトレードオフであったようで、法人を主力とした本来の販路での販売は低迷。サイズの小ささに重きを置かない顧客層がターゲットだった欧米では早々と消え去り、ギミックとサイズの小ささを重視する特異な市場である日本で販売が継続されていましたが、最後は大量な法人向け在庫を処分する為に、前述のように特定販売店でコンシューマー向けに投げ売り状態となってしまったようです。

トップレンジでも、701という異端モデルを表す01のナンバリングの呪縛から逃れられなかったこのモデル。キーボードを本体からはみ出させるギミックは、その後もThinkPad S30でトライされることになりますが、最後まで地位を得ることができませんでした。今とは違って、各社設計もまちまちでさまざまな展開を見せていた当時のノートPCたち。中でも、当時のThinkPadたちの小型化コンセプトより、技術的には同水準でも、その後に出て来た、国際的にも人気のあったDECのDigital HiNote ultraのコンセプト(薄い本体、表示エリアを確保する為のやや大きめの本体サイズ、パームレスト装備の広いキーボード、センターに於かれたトラックボール)が、紆余曲折を経ながら辿り着いた現在のノートPCの基本コンセプトを完全に 整合している点と比較すると(トラックボールはパッドへ)、ギミックに訴えたそのアプローチの違いは際立ちます。

今回登場したPortabook。小さなボディサイズのトレードオフとしての小さな液晶サイズ、解像度と、分厚い本体と浮き上がったキーボード。パームレストのエリアを少しでも確保するための光学式ポインター。これらのコンセプトは全く以てThinkPad701cと同じもの。そのコンセプトからは明らかにThnkPad701や往年のThinkPadたちが放った、拘りのガジェットといったオーラと同じものを感じさせますが、一方でThinkPadが持ち合わせていた、道具としての所有欲が湧くような品質感を全く感じない点(これをキングジムに求めるのは酷かもしれません)は如何にも残念でもあります。

ギミック的にはPortabookは凄く好きなのですが、商品としての完成度と使用感といった意味ではこちらのSurface bookが2016年的には本流なのかもしれません。

とりあえず、実機が触れるようになったら、触ってみて試してみたいと思います。

 

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