今月の読本「信州の縄文時代が実はすごかったという本」(藤森英二 信濃毎日新聞社)信州の縄文研究系譜を継ぐ研究者が挑んだ、美しく丁寧に描かれた机上の八ヶ岳縄文ミュージアム

今月の読本「信州の縄文時代が実はすごかったという本」(藤森英二 信濃毎日新聞社)信州の縄文研究系譜を継ぐ研究者が挑んだ、美しく丁寧に描かれた机上の八ヶ岳縄文ミュージアム

版元さんからの刊行案内が出て以来、心待ちにしていた一冊。

金曜の晩に漸く地元書店さんの店先(何時の間にか郷土本コーナーが店舗の奥の方に移っていて、危うく見つけそこなうところでした)で見つけて読み始めましたが、予想を超える素晴らしい仕上がりに、一気に読み進めてしまいました。

地方出版社の衰亡が続く中、まだまだやれる事はあると、意欲的な企画と、地方だから、少部数だからとの妥協を許さない丁寧な制作、編集。大手出版社さんにも全く引けを取らない美しい装丁を施した本を次々を送り出していく信濃毎日新聞社さんが、これまでのコンセプトを更に推し進める形で新たに送り出した一冊。狙ったようなインパクト重視でキャッチーな表題の裏側に描かれる、本当に版元さんの良心に溢れる一冊のご紹介です。

信州の縄文時代が実はすごかったとう本今月の読本「信州の縄文時代が実はすごかったという本」(藤森英二 信濃毎日新聞社)のご紹介です。

本書の著者、藤森英二さんは、八ヶ岳の東麓、北相木村の考古博物館で学芸員を務めながら、主に長野県下の縄文遺跡に関する研究に従事する研究者。このお名前をご覧になって、本書にご興味を持たれた方はピンとくるのではないでしょうか。縄文研究に大きな足跡を残し、今に至るまで学界において議論を呼び続ける、ある意味において、日本の古代史の視点が世界的な考古学の流れと決定的な違いを見せる結果となった論考を残した人物。在野の考古学研究家と呼ばれた、縄文農耕論を著した藤森栄一氏に繋がる方です。

こう書いてしまうと、まるで縄文農耕論の継承者が描く、本格的な縄文文化論が展開される本のように見受けられてしまいますが、さにあらず。更に言えば、このような紹介自体、あくまでも本書を売り込むためのセールストークのようなものであり、著者の意図する所とは異なっている事を予め述べておかなければなりません。

本書が本当に素晴らしい点、それは八ヶ岳西麓に広がる縄文遺跡をテーマに、学芸員とモデラー(掲載されている写真のフィギュアは全て著者の自作です)という、二つのキャリアを存分に注ぎ込んだ、美しくも丁寧に纏められた、ページの上に描かれる縄文ミュージアムを見事に作り上げた事です(注記:信州と表題されていますが、前述のように八ヶ岳西麓がメインテーマです)。

信州の縄文時代が実はすごかったという本巻末に掲載された多くの協力者の皆様の手助けを受けながら、信州の息の長い学研的な伝統が培ってきた研究者の系譜に連なる著者(出身の明治大学において、戸沢充則氏の薫陶を受けています)が、その中心地からほんの少し離れながらも息吹を肌身に感じるであろう八ヶ岳東麓から俯瞰する、数千年に渡ると云われる八ヶ岳高原で大繁栄した縄文時代の主要な研究テーマを丁寧に解説していきます。

執筆協力の皆様によって集められた美しい画像や、良く錬り込まれた豊富な図案。著者自身の制作によるフィギュアによる美しくも可愛らしいフルカラーのページたち。ページに添えられたキャッチーなフレーズを眺めていると、一見して小中学生向けの所謂副教材ではないかと思えてしまいますが、それは大きな誤りのようです。低年齢向けの語法はあえて避けて、一般の読者を想定した文意と、博物館等の刊行物では当然の配慮である、時代感の指摘やキャプション、補記への配慮は、正に本書が学童向けの入門書に留まることなく、より広範な読者、好事者、歴史ファンの皆様に向けて書かれている事の証。多くの皆様が感じているかもしれません、大好きな博物館、美術館を訪れた後、この感動をそのままに収めた一冊の本が欲しいと思う感触そのままに、本書は仕上げられているかのようです。

信州の縄文時代が実はすごかったという本そのテーマ故に入門書としての体裁で纏められていますが、要所に書かれた内容は最新の学術成果も盛り込まれています。本書を読まれる方であれば、一番気になる点についても、最先端の圧痕法(レプリカ法)による知見が盛り込まれており、この一冊で最新の縄文研究の一端に触れる事が出来るように配慮されている点は、更に嬉しいところです。著者はあくまでもこれらの議論に対して、距離を置いた発言をされていますが、その検証手法の発展と新たな知見が現れる事を密かに期待されているようです。

信州の縄文時代が実はすごかったという本そして、八ヶ岳の裾野に広がった縄文時代の遺跡で繰り広げられた物語について、考古学的成果から俯瞰していきます。特異な文様を持った縄文土器の分布と伝播、八ヶ岳の縄文文化を象徴する二つの国宝土偶の物語(二つの間の時間軸的な断絶についても)。そして、発展を支えたであろう豊かな生産性と、交易物としての黒曜石からみる、海をも超えて東日本を広く包み込む、広範な縄文人たちの移動する姿。これらの内容は博物館でじっくり見たつもりでも、改めて本という形で眺め直すと、別の見方が生まれて来るようです。そして、現代に生きる私たちもその大きな流れの中で生きている事を実感させられる、縄文海進とあれほど繁栄した八ヶ岳西麓に生きた人々が残した痕跡の消滅。

ここから先は、是非現在の八ヶ岳山麓に訪れて、その息吹を感じて欲しいとの想いから、多くの類書では決定的に欠けている、各所に点在する博物館の展示紹介や訪問ガイドにページを割いている点は、本書が博物館関係者が著述されている点以上に、地元に在住する人間として、更には本書を通じてその地を訪れたいと思う多くの歴史ファンにとって、極めて嬉しい配慮である事を重ねて述べておきたいと思います(双方に於いて絶対的に断絶して扱われる事が多い、隣県の博物館に関しても、特段の配慮を以て記載をして頂いている点については、深い敬意の念を述べさせていただきます。八ヶ岳山麓は東西南北みんな一緒)。

SNSや著者のブログに残された刊行前のコメントを拝見すると、研究者のキャリアとして本を出すのが早すぎたのではないか、刊行自体に無理があったのではないかと悩まれている様子が伺えますが、そんな想いは多分杞憂だったと思いますよと、お伝えしたいです。

これまでになかった、八ヶ岳山麓の縄文時代を美しくも丁寧に綴られた読むミュージアムとして、多くの歴史が好きな方の机上に届けられることを願って。そして、今度のお休みには、その足跡を訪ねて美しく整備された博物館たち、史跡へ訪れてみませんか。

八ヶ岳ブルーの下で4

信州の縄文時代が実はすごかったという本

P1060493<おまけ>

本書に関連する内容を扱ったページをご紹介します。

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厳冬の頃に(2017.2.6~12)

例年に増して降雪回数が多い、八ヶ岳南麓。

今週も繰り返し降雪となる一週間になりました。

p1090495日曜日に降った雪で白くなった圃場。

正面の南アルプスから夜半にかけて降り続けた雪をもたらした雲が、勢い良く舞い上がっていきます(2/6)。

p1090506しっかりと冷え込んだ朝。氷点下10度を下回ると、あらゆるものが凍りついてしまいます。

寒空に威容を示す、朝の甲斐駒(2/8)。寒さは続かず、翌日には再び雪模様に。

p1090512

一面銀世界になった田圃の先に望む八ヶ岳。前日に降った雪は一度は止んですぐに溶け始めましたが、夜半になって入り込んできた寒気の影響で、朝にはこのシーズンらしい、サラサラのパウダースノーに再び覆われました。

p1090519

木々の間にダイヤモンドダストが舞う朝。パウダースノーが降った後に晴れ渡った時だけ楽しめる景色です(2/10)。

p1090533昼過ぎに再び雪模様となった後、日没を迎えて晴れ渡った夜半の圃場。星空の下に再び浮かび上がった甲斐駒を満月の月明かりで臨む寒い夜(2/11)。

p1090537レインボーラインの大泉から望む、少し雲が残る中、前日に降った雪で施された白い衣装を纏った八ヶ岳。

山麓近くまで白く装うのは、降雪後の僅かな時間だけです。

p1090538振り返ると、青々とした甲斐駒と南アルプスの峰々が望めます。

レインボーライン沿いから望む眼下には、雪化粧をした圃場と街並みが広がります。

p1090550標高を一機に上げて1400m、鉢巻道路沿いの清里、まきば牧場へ。高い空の下、一面の雪景色の向こうに雪化粧をした秩父山塊を望みます。

p1090560同じく清里の名所、東沢大橋(通称、赤い橋)の展望台から望む、八ヶ岳の峰々。

まきば公園と違い、除雪がされていない駐車場に入る車もなく、展望台からの絶景は貸切状態で堪能できました。

p1090544少し背伸びをして(望遠で)牧場公園から八ヶ岳側を眺めると、主峰、赤岳の威容が迫ってきます。天候の移り変わりが多い今シーズン、本当に真っ白に雪化粧した赤岳の姿が楽しめるのは、僅かな期間かもしれません。

p1090587もう少し、雪景色を楽しむために、更に歩みを進めて野辺山へ。

牧場地帯を貫通する道路のどん詰まり。ここより先には車で進む事は出来ません。

足跡一つない雪原が広がる先に、厳冬の八ヶ岳の威容が広がります。

昼下がりの八ヶ岳ブルー、これが真骨頂です。

p1090575昨日の雪の影響がまだ残る、少し雲が多めながら、真っ青な空の下に美しい雪渓が映える、主峰、赤岳と硫黄岳を正面に望んで。

p1090576たまには、こんな一枚も如何でしょうか。赤岳を換算200mのフルアップで。

p1090593

振り返って秩父方面を眺めると、尖った象徴的な山容を見せる男山を正面に望む事が出来ます。

雪の少ない秩父側ですが、このところの連続した降雪で山肌が真っ白に色付いています。

 

p1090612

撮影していると、雪雲がどんどんと迫ってきたので、ぐるりと廻り込んで、八ヶ岳の西側へ。

頭上には重たい雪雲が迫ってきていますが、八ヶ岳の上空は徐々に晴れ間が見え始めています。

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雪雲を撥ね退ける、真っ白に雪化粧をした蓼科山と横岳。

p1090636そうこうしているうちに、日没を迎えてきました。鮮やかに西日に彩られる北八ヶ岳の山々。

p1090637日没間際になって、重たい雪雲を追いやって、遂に正面に望む南八ヶ岳の主峰たちが姿を見せてくれました。

すっかり日没が遅くなった2月の中旬。厳冬の頃もあともう少しの辛抱です。

 

立春を迎えた八ヶ岳南麓の一コマ(2017.1.22~2.4)

1月も後半に入ると寒さも本番。

身に染みる寒さと、単調な色合いとなる山々に囲まれていると、外を歩き回る事からちょっと遠のいてしまいます。

これではあかんと、叱咤しながら、てくてくと歩きながらのカットを。

p1090374車を揺さぶられるほどの強い風が吹き付ける午後、真っ白な雪雲に覆われた南アルプスの山並みから湧き上がる雲に、太陽が覆われていきます。

p1090391あっという間に雪雲に覆われる山並み。

日差しが完全に雪雲に覆われて再び現れた落葉松に覆われた山肌は、まるで筆で描いたかのような稜線が浮かび上がっていました(1/22)。

p1090393氷点下10℃を下回る、今シーズン最も冷え込んだ朝。南麓に移住した頃にはこんな冷え込んだ日が2週間ほど続いたのですが、最近ではあまり長続きしなくなりました。

真っ青な空の下、雪渓の甲斐駒が美しく映える朝です(1/26)。

p1090403眩しい日差しを受ける、昼下がりの南アルプス。

圃場に雪が無い事に驚かれるかもしれませんが、冷え込みが厳しくとも里に積雪が無いのが八ヶ岳南麓の普通の姿。今年はここ数年では最も積雪が少ない、冷え込みがある程度続く、冬らしい天候となっています(2/2)。

立春を迎えた週末。驚くほど暖かくなった昼下がりに、冬籠りで出不精になってしまった自分に喝を入れるために、敢えて購入したお散歩用望遠レンズ持って、試写をしながら歩き回ります。

ぽかぽかの陽だまりの中、観る角度によって様々な姿を見せる、甲斐駒のトップコレクションを撮って歩きながら。左上から時計回りに、小淵沢町下笹尾(城山公園近く)、白州町横手(フレンドパークむかわ近くの広域農道沿い)、白州町白洲(尾白の森名水公園べるが近くの広域農道沿い、長坂町中丸(清春美術館)。

p1090424

普段とはちょっと違う角度の、横手から望遠で望む雪の少ない八ヶ岳。

手振れ補正があるとはいっても、馴れていないせいか、やはり緩々の絵になってしまいますね。

p1090445一気に標高を上げて、野辺山へ。

こちらも雪が少なく、枯草に覆われる牧草地には、点々と雪が残るばかりです。

p1090441冬の空の下に聳える、八ヶ岳の要を執り成す主峰、赤岳。赤岳山荘もくっきり見えています。

p1090443主峰赤岳からカメラを右に降って、硫黄岳、横岳へと向かう稜線。

麓は雪が少ないとはいっても、峰々や谷筋にはタップリと雪が積もっているようです。

p1090462夕暮れ、12月には遥か南に寄った太陽は、立春を迎えて、徐々に八ヶ岳の裾野に戻ってきました。豊かな裾野を曳く、平沢峠から望む八ヶ岳の美しいシルエット。

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夕日を受けて、ほんのりと桃色に染まる峰々の稜線。

p1090465赤岳をバックに、八ヶ岳の懐に抱かれるスキー場。

日暮れを迎えて、夜間照明が灯りはじめています。

p1090483どっぷりと日の沈んだ夕暮れ。

僅かに空に色が残る中、浮かび上がるスキー場の夜間照明。

まるで春を思わせる暖かな立春。でもこれを書いている窓の外は真っ白な雪景色と、まだまだ春は遥かに遠い、八ヶ岳山麓です。

雪景色の諏訪大社上社本宮

降りしきる雪の諏訪大社、上社本宮前にて(2/5)。