春色を迎えた八ヶ岳西麓(信濃境、田端の枝垂桜と西麓の桜達)2017.4.23

4月も後半となって、いよいよ本格的な春が山里にもやって来ました。

少しずつ春の装いを見せる八ヶ岳西麓の彩を追って。

少し冷え込んだ朝、甲斐駒を望む田端の枝垂桜も花を開かせ始めました。

三色に染まると称されるこの桜、実は複数の木が見事に開く一本の木に見える事からそのように呼ばれるのですが、それぞれの木が花を開くタイミングが少しずつ異なり、一斉に花開くのは稀。

今年は、最初に咲き始めるコブシの白い花が残ったまま、最後に花開く枝垂桜も花を開いてくれました。私にとって初めてのシーンに、少し喜んでいます。

最後に花開く枝垂桜。色の濃い紅色を見せてくれるのは、咲き始めの数日だけです(4/20)。

キンと冷え込んで、氷点下まで下がった日曜日の朝。

春の山里には、遅い霜が降りました。

空はこの時だけの、初冬を思わせる濃い色合いを取り戻しています。

すっかり花を開かせた田端の枝垂桜。

既に右側に添うコブシの花は散ってしまいました。

田端の枝垂桜と寄り添う桜、そしてコブシの色合いの変化が判るでしょうか。

枝垂桜の向こうに望む甲斐駒。この場所だけのお楽しみ。

一段、標高を上げた場所に佇む、葛窪の枝垂桜も開花を迎えました。

今年から植生保護のため、木の根元にはロープが張られ、立ち入る事が出来なくなっています。

葛窪の枝垂桜より更に標高の高い場所に咲く、葛窪地籍の枝垂桜。

元々雪の少ない八ヶ岳西麓、雪渓もすっかり少なくなりました。

日が西に傾いてきた頃、池生神社の桜もすっかり見ごろを迎えています。

午後の陽射しをいっぱいに浴びる、田端の枝垂桜。

三色桜の種明かしです。お判りになるでしょうか。

ツバメ舞う午後の山里。

甲斐駒の雪渓をバックに。

界隈では最も標高の高い、標高1000mを越える原村、深叢寺の桜も花を開かせ始めています。

ぼんぼりも用意され、そろそろ夜桜見物が楽しめそうです。日が落ちると気温は1桁となる山里、どうか暖かい服装でお越しください。

夕暮れ、標高の高い圃場にも、トラクターが入り始めています。桜が散る頃には農作業が本格的に始まります。

一日良いお天気に恵まれた日曜日、日暮れになって鳳凰三山が薄紫色に色付きます。

雪渓が徐々に減って山肌が見え始めた夕暮れの甲斐駒。

悲しい事故が再び起きてしまった事を知ったのは、この撮影の直後でした。

 

山里の春はゆっくりと八ヶ岳の山裾を駆け上がる(2017.4.10~19)

遅い遅いと云われながら、春爛漫を過ぎて夏日を迎えた地上に対して、ここ八ヶ岳南麓は、漸く春の心地に。少し振り返りながら、春を迎えた山里の日々をお伝えします。

花びらを開き始めた、甲斐駒を望む高台に位置する枝垂桜。

咲き始めの枝垂桜は実に色濃い紅色に染まります(4/10)。

再び雪の舞った後の夕暮れ、八ヶ岳をバックにする神田の大糸桜もちょっと寒そうです。

真っ白な甲斐駒をバックに、一度咲き出した枝垂桜は雪が降ろうと後戻りせず、次々と花を開かせていきます。そう、時が決して後戻りを許さないように。

すっかり日没が遅くなった夕暮れ。春の空は咲き始めた花々に合わせるかのように、様々な彩を見せはじめます(4/12)。

すっきりと晴れた朝、甲斐駒を望む田端の枝垂桜は静かに開花の時を待ちます。三色と称される木々のうち、コブシの白い花が何時もトップバッターで咲き始めます。

時折、雪が降る事があっても既に地温は春模様。八ヶ岳に刻まれた雪渓も日々細く痩せていきます。

夕暮れの南アルプス。日没前に肩の荷が下りてほっとする瞬間です(4/13)。

快晴の朝には、雪を湛えた甲斐駒と青空の組み合わせがやはり気持ち良い。これから梅雨時まで、もう少しのあいだ、楽しめる景色です。

朝日を受けた枝垂桜の紅色が青空の下に映えます(4/14)。

春の天気は移り気。南アルプスから雨雲が低く垂れこめてきた午後。

小雨が降る中、可愛らしい花を開かせ始めた、山梨県指定天然記念物、関の桜。

齢、数百年とは思えない豪快な枝ぶりを今も訪れる人々に魅せつける、山里の巨人。神代桜のように著名な桜ではありませんが、それでも地元の方々に大切にされている桜です。

峡北の山里を少し降りると、そこはもう春爛漫。透き通るような白い花をいっぱいに咲かせる鄙びた集落に佇む枝垂桜(長坂、連成寺4/15)。

そして、春霞のツバメ飛ぶ空の下、山里の春を本格的に告げる、北杜市小淵沢町、山梨県指定天然記念物でもある神田の大糸桜が色付き始めます。

色濃く染まり枝垂れる、この桜の咲き始めだけに見られる色合い。推定樹齢400年を数え、枝を切られ、支え木にもたれ掛りつつ、漸く地に立つその姿は、見るからに痛々しい姿ですが、それでも精一杯に春の訪れをその身を以て知らしめてくれています。

風除けの防護ネットが外されるのは、この時期だけ。唯、その姿をお越しになった皆様に見届けてい頂く事を願って、この地に佇み続けます(4/17)。

強い風と雨が通り過ぎて行った朝。雨上がりの桜並木に虹が掛かっていきます。

春のお天気は気まぐれ。時にこんなプレゼントを届けてくれます。さあ、外へ出ておいでよと、誘うように。

虹を追って外に出ると、雨上がりの靄の向こうに田端の枝垂桜が浮かび上がっていました。コブシの白、小さな枝垂桜の薄紅色の向こうに、最後に花を咲かせる濃い、紅色の枝垂桜がいよいよ花を開かせ始めるようです。標高900mの高原にも春の訪れです。

そして、お天気雨の中で満開の花を風に揺らす、神田の大糸桜。八ヶ岳南麓も春本番を迎えました。

大糸桜の足元に広がる水田には漸く水が張られ、冬の間に乾ききった田圃を少しずつ温め始めています。山里に春の訪れを伝えてくれる大切な桜です。

八ヶ岳南麓の桜のシーズンもそろそろ終盤。

桜前線はいよいよ標高1000mを目指して八ヶ岳西麓へと向けて足早に駆け登っていきます。

今週末から来週にかけて、高原に佇む桜達と一年振りに再会できる日を楽しみにしながら(カメラ、凄く調子悪いのでちょっと辛いのですが)。

 

2017年シーズンの小淵沢駅発小海線臨時列車時刻表

2017年シーズンの小淵沢駅発小海線臨時列車時刻表

小淵沢駅に発着する詳しいバスの時刻表はこちらでご紹介しています(随時更新中)。

New!(2017.4.20):例年ですと夏休みと秋の観光シーズンのみの運行となっています鉢巻周遊リゾートバスが、本年は5/3~5/7までの期間も運行される事になりました!詳しくは富士見町の観光情報ホームページへ

中央本線開通以来と云われる小淵沢駅の駅舎ですが、現在あらたな駅舎の建築が進んでいます。完成は7月ごろの予定。2階に設置される改札口からは甲斐駒と八ヶ岳の大パノラマが望めるはずです。春シーズンの全席指定の快速「リゾートビュー八ヶ岳」運行日は5/20,21、6/17,18の4日間です。詳しい運行スケジュールはJR東日本長野支社のプレスリリースをご確認ください(PDFが開きます)。7月以降は、新たなリゾート列車「HIGH RAIL 1375」が投入される予定です。運行内容が決定次第、こちらのページでご紹介させて頂きます。 

 

[新宿方面からの特急のお乗換え案内]

IMG20160729102051yatsugatake_highland_bus_timetable2

<新宿7:00発-小淵沢8:54着スーパーあずさ1号からお乗換え>

 ・1号 9:17発(野辺山行き)

 ●9:24小淵沢駅前発車の北杜市営バス北部循環線(長坂駅-清春芸術村-<七里岩ライン経由>-小淵沢駅-スパティオ小淵沢-篠原東-大泉総合支所-きららシティ-甲陽病院-長坂駅)小淵沢駅→長坂駅方向左回りルート便[4便]が利用可能です

 

<新宿7:18発-小淵沢9:30着あずさ51号からお乗換え(臨時列車)>

<新宿7:30発-小淵沢9:36着あずさ3号からお乗換え>

<新宿8:00発-小淵沢9:53着スーパーあずさ5号からお乗換え>

 ・普通 9:57発(小諸行き)

 ☆10:10小淵沢駅前発車の鉢巻周遊リゾートバス(小淵沢-富士見高原-原村・やつがたけ自由農園行き)も接続します

 

<横浜7:51発-小淵沢10:30着はまかいじ号からお乗換え(臨時列車)>

<新宿8:30発-小淵沢10:44着あずさ7号からお乗換え>

 ・3号 10:58発(野辺山行き)

 ★10:50小淵沢駅前発車の八ヶ岳高原リゾートバス(小淵沢-甲斐小泉方面循環)も接続します

 

<新宿9:00発-小淵沢11:08着あずさ9号からお乗換え>

 ・普通 11:21発(小諸行き)

 ●11:52小淵沢駅前発車の北杜市営バス北部循環線(長坂駅-清春芸術村-<七里岩ライン経由>-小淵沢駅-スパティオ小淵沢-篠原東-大泉総合支所-きららシティ-甲陽病院-長坂駅)小淵沢駅→大泉総合支所方向右回りルート便[5便]が利用可能です

 

<新宿9:02発-小淵沢11:59着ホリデー快速ビューやまなし号からお乗換え(臨時列車)>

<新宿10:09発-小淵沢12:14着あずさ55号からお乗換え(臨時列車)>

 ・5号 12:28発(野辺山行き)

 ★12:20小淵沢駅前発車の八ヶ岳高原リゾートバス(小淵沢-甲斐小泉方面循環)も接続します

 ☆12:25小淵沢駅前発車の鉢巻周遊リゾートバス(小淵沢-富士見高原-原村・やつがたけ自由農園行き)も接続します

 

<新宿11:00発-小淵沢12:59着あずさ13号からお乗換え>

 ・ハイブリット列車「こうみ」 13:13発(小諸行き)小淵沢発の「こうみ」は一日1本だけです

 ●13:49小淵沢駅前発車の北杜市営バス北部循環線(長坂駅-清春芸術村-<七里岩ライン経由>-小淵沢駅-スパティオ小淵沢-篠原東-大泉総合支所-きららシティ-甲陽病院-長坂駅)小淵沢駅→長坂駅方向左回りルート便[6便]が利用可能です

 

<新宿12:00発-小淵沢13:53着スーパーあずさ15号からお乗換え>

 ・7号 14:03発(野辺山行き)

 ★14:30小淵沢駅前発車の八ヶ岳高原リゾートバス(小淵沢-甲斐小泉方面循環)も接続します

 

<新宿13:00発-小淵沢15:01着あずさ17号からお乗換え>

 ・普通 15:06発(小諸行き)

 ☆15:25小淵沢駅前発車の鉢巻周遊リゾートバス(小淵沢-富士見高原-原村・やつがたけ自由農園行き)も接続します

 16:05小淵沢駅前発車の八ヶ岳高原リゾートバス(小淵沢-甲斐小泉方面循環)も接続します

 ●16:12小淵沢駅前発車の北杜市営バス北部循環線(長坂駅-清春芸術村-<七里岩ライン経由>-小淵沢駅-スパティオ小淵沢-篠原東-大泉総合支所-きららシティ-甲陽病院-長坂駅)小淵沢駅→大泉総合支所方向右回りルート便[7便]が利用可能です

 

<新宿15:00発-小淵沢17:02着あずさ21号からお乗換え>

 ・臨時 17:11発(小海行き。小海駅始発の小諸行に3分で接続します)

 ●17:51小淵沢駅前発車の北杜市営バス北部循環線(長坂駅-清春芸術村-<七里岩ライン経由>-小淵沢駅-スパティオ小淵沢-篠原東-大泉総合支所-きららシティ-甲陽病院-長坂駅)小淵沢駅→長坂駅方向左回りルート便[8便]が利用可能です

詳しくはJRのホームページ及び小淵沢駅の駅員さんにお聞き下さい。

 

補足:ハイブリット列車「こうみ」運行スケジュールの照会でこちらのページにお越しになる方が多いようですが、現在公式サイトには時刻表のリンクが掲示されていません。

通常運転されているスケジュールは以下の通りです(特殊な車両のため、点検等で急に運休になる場合があります。あくまでも参考情報です)。

125D : 中込6:55 – 小諸7:26

124D : 小諸7:50- 中込:8:18

131D : 中込8:51 – 小諸9:17

228D : 小諸10:13 – 小淵沢12:26

229D : 小淵沢13:14 – 小諸15:27

134D : 小諸15:42 – 小海16:49

141D : 小海16:59 – 小諸17:58

138D : 小諸18:30 – 中込19:01

ハイブリット列車「こうみ」

小諸から小淵沢まで登って来るのは一日一回とお考えください。

今月の読本「列島を翔ける平安武士」(野口実 吉川弘文館)遥か九州から武士の勃興を眺める時、その世界は京・東国を飛び出し列島を駆ける

今月の読本「列島を翔ける平安武士」(野口実 吉川弘文館)遥か九州から武士の勃興を眺める時、その世界は京・東国を飛び出し列島を駆ける

何時も新刊を楽しみにしている吉川弘文館さんの「歴史文化ライブラリー」3月の新刊は、これまで多数の中世武士、特に東国の武士たちを扱った一連の研究と著作で知られる野口実先生の最新作からご紹介します。

今月の読本「列島を翔ける平安武士」(野口実 吉川弘文館)です。

まず、あとがきに目を通すと、著者の中における本書の微妙な立ち位置が言及されています。一度は完成した原稿が暫く日の目を見なかった事、最終的に著者の奉職先であった京都女子大学を退任された後の上梓となった事、更にはその記述には著者の研究者、教員としての生活に於ける様々な想いが込められている事。

既に著者の作品を読まれた事がある方であれば、その感触は判ると思います。千葉に生まれ、房総平氏の研究でも知られる著者のスタンスが、同時期の研究者の著作と比べると極めてニュートラルな立場を採っていた点に気が付かれるはずです。既に過去のものになりつつありますが、草深い東国の開拓農民から勃興してきた野蛮で無学な武力が、軟弱な京の公家社会を刷新して、新たな大地たる東国、鎌倉に清冽たる新政体「幕府」を築き、中世の幕が上がるという、私が学生時代には依然として通用した視点に対して、明確にそれを正す方向での著作を上梓され続けた点です。但し、このような点を採り上げると、ではやはり京都に拠点を置かれているから、所謂体制論的な立場なのですかと問い返されそうなのですが、そのような体制論であったり王権論とは一線を画した立場で議論を進める点が、著者の論旨の大きな特徴ではないかと思います。

本書はそのような大きな歴史論(体制論)に固執することなく、出来るだけ史料から読み解ける、実際の登場人物たちの動きからその流れを読み解こうとしていきます。従って、表題と異なり本書を通貫する様なストーリーであったりテーマが明確に設定されている訳ではありません。特に人物を離れて京都七条町の職人集住に関する記述は、全体のテーマから見ると大分かい離が認められますが、著者の提示しようとするストーリーを彩るためにはどうしても必要な内容だったようです。

著者が描こうとするテーマ、それは石井進氏の前述のような体裁の色濃い「辺境としての東国から勃興する」とする歴史展開を乗り越え、下向井龍彦氏の著作(日本の歴史07 武士の成長と院政 講談社学術文庫)にもみられるように、中央から下向し、その貴種性と地方の反乱を鎮圧する為に乱発された勲功賞で得た権能を加える事で、在地との強い絆と利権を築きつつも、引き続き中央での関係を維持しつつ勢力を積み上げていく、武士の姿を描く事にあります。

そこには、草深い無学の輩等ではなく、権門の家使としての側面と、在地における所領管理、いざという時には国衙の兵力や私兵を従えて戦闘に挑むという、極めて実践的な能力が試される、中央での出世には見放されたとしても、実務能力が極めて高い人々が集っていた事が判ります(本書の冒頭で描かれる藤原保昌のような簒奪者や、為朝のような正に暴れん坊ももちろん居ますが)。そして、本書で著者が最も描きたかった点。これまでの「東国」中心の武士研究に対して、前述の視点を相対化させる行為。東国の武士研究でも中核に位置した著者自身が、本書の成立に至るまでの20年近くに渡って取り組みを続けた模索の結果としての、九州、特に島津荘の成立と拡大における武士の動きと貿易の痕跡を現地で研究を続ける研究者と交流を図る事で、東国と京都という二元的な視点、又は、大宰府-京/福原-平泉という公家文化に対抗する東国、鎌倉の武家という対峙系とは異なる、より普遍的な武士の成長に対する視点を導き出すことです。

著者はこの視点を実証する為に、敢えて自らの長い研究テーマでもあり、如何にも東国武士の代表である千葉常胤を採り上げ、源平合戦における源範頼を支えながら転戦した九州における戦歴とその転戦地に設定された地頭職の成立、更には京都に戻った後の治安活動や、鎌倉に居を構え全国に広がった所領を管理する都市型領主となった後の千葉氏の活動を通して、名字の地たる在地にしがみ付く東国武士というステレオタイプを明確に否定していきます。

そして、九州の南端に構えられた島津荘を中心とした、摂関家の金城湯地となった南九州。この島津荘を始め肥後、南九州を席巻した為朝の所業を荒唐無稽と一刀両断することはせず、それ以前から下向していた薩摩平氏(平安武士という言葉と併せて本書で初めて出てくる呼称でしょうか)達による、東国と同じような騒乱が生じていた事を紹介していきます。結果として、それらの鎮圧を担った勢力が、東国同様にその後の武士として勃興していく事は論を待たないかと思います。列島の南北で勃発した反乱とその鎮圧。大宰府を舞台にした刀伊の入寇。これらの鎮圧に伴いもたらされる勲功による栄爵を纏っての在地への定着、国衙官職を含む利権化の流れは東国だけに限定して起きたわけではない事を遥か南九州の事例を示す事で明確化していきます。

在地化と足並みを揃えるかのように肥大化する南九州の荘園群。その成立以前に遡って、王朝国家内での摂関家の勢力推移を重ねる事で、時代が下がるにつれて極めて重要な収益源、貿易拠点として成長していったことが示されていきます。当時の交易品として極めて重要であった火薬の原料となる硫黄が取れるこの地が、大宰府、神崎荘と並ぶ海外、特に南洋貿易の拠点であった事を発掘成果から明らかにし、南洋特有の檳榔、螺鈿がこの地から京、そして平泉に至ったと考えられると述べていきます。勿論、平泉からはその代わりに、知られているように馬、黄金、そして海獣や毛皮や猛禽類の羽など武具として、交易資金として必要な物資が送られる訳ですが、ここで著者は東国における近年増えてきた中世期の遺跡発掘事例や、前述の千葉常胤が滞納していた貢納を一度に納めた際に積み上げた膨大な量の金を以て、これらの平泉文化に付随する王朝国家的な文化が東国やその交易路をスルーしてピンポイントに平泉に花開いたという、王朝国家の一種理想郷を平泉に見出し、東国、武家の文化的な低さを殊更に指摘する視点に対して明確に否定を示し、その交易路においても、同程度の文化的な浸透があったはずだとの認識を示していきます。

その上で、京を情報や文物ネットワークの交差点と見做し、京を起点に全国に向けて下向し、代を重ねつつも、色々な事情を以て武士としてこの地を行き交う事となった人々のネットワークの動き、悪い言い方をすれば欲望の離散集合の頂点に源平合戦があったと見做していきます。

京都で奉職し、第一線を退いた直後で上梓することとなった本書は、東国武士の研究者としての一方の史観と、自らが在する地におけるもう一方の史論に対する双方の疑念を九州の地に視点を置く事で、ネットワークという新たなテーマ設定によって相対化、より普遍的な視点を見出すことを目指した一冊。冒頭で述べたように各章ごとに別々の登場人物が語られるため、小テーマを集めたやや散漫な印象を受ける部分もありますが、昨今の地理学を組み合わせた繋がる歴史著述に対して、これまで培ってきた豊富な研究成果より具体的な視点を与える著述は実に楽しく、史論で語られる著述では欠落することが著しい発掘成果による史料補完への言及と併せて、中世の入口となるこの時代の著述がこれから更に発展していく事に期待を持たせる一冊です。

第一線の教壇から下る事で、今後は研究、著述により一層の注力を図る事が出来るであろう著者の更なる一冊に期待しながら。

<おまけ>

本書に関連する書籍を、本ページよりご紹介します。

今年も巡ってきた桜のシーズンへ、勝手に「ほくとの桜」峡北マイナー版をご紹介(2017.4.9)

今年も巡ってきた桜のシーズンへ、勝手に「ほくとの桜」峡北マイナー版をご紹介(2017.4.9)

今年の桜は例年並み(遅れていると良く云われますが、これで普通じゃないかと)の開花ペース。最も有名な神代桜も開花を迎え、お天気は悪いのですが、この暖かさで一気に満開に向かいそうです。

じゃあ急がなきゃ、と焦る必要はあまりないかもしれません。何せ峡北の標高は300m程度の韮崎から、清里を越えると1200m迄と、実に3倍近い標高差がありますので、如何に一斉に咲くために季節の指標とされるソメイヨシノといっても、開花のタイミングには1~2週間程度のタイムラグが生じます。

更に、この地域で楽しめる桜は都会でも多く植えられているソメイヨシノばかりではなく、開花時期も、その花の色、枝ぶりもバラエティ豊富なヒガンザクラ、ヤマザクラの仲間たち。山桜の開花時期は最も標高が高い八ヶ岳西麓の高原地帯では例年5月のGW頃と、山里の桜のシーズンはゆっくりとバラエティに富んだ広がりを見せていきます。

そんな桜達のうち、このページではこれまでも信濃境の桜達について、多くご紹介してきましたが、今度は峡北地域に絞って少しご紹介してみようと思います。お馴染み超有名な桜達については、公式さん(昨年は真田丸関連でTLを席巻れされていましたが、今年のスタッフさんはどうでしょうか)が愛着を込めて丁寧に制作してくださいました紹介ページ「ほくとの桜」がありますので、私が紹介するのは、ちょっとマニアックな地元の皆様に愛されている桜達をご紹介してみます。

1.神田の大糸桜(山梨県指定天然記念物:北杜市小淵沢町)

八ヶ岳を正面に望む素晴らしいロケーションに一本だけ立つ枝垂桜の老木。色の濃さが特に印象的です。隣の信濃境には枝垂桜の銘木が数多く知られていますが、この一本は更にそれらから時代を遡るようですが、やはり江戸時代に同じような経緯で植えられた、彼らの仲間ではないかと目されています。

お天気が良ければ、このように八ヶ岳をバックにした雄大な姿が望めます。

振り返ると甲斐駒と鳳凰三山を従えた、南アルプスの峰々がたおやかに伸びています。

最高のロケーションという事は、風雪を遮るものが無く、ひたすらに耐えて来たという事の証。近年、樹勢の衰えが著しく、通年で写真でも見られるような風除けネットが設けられ(シーズン中以外は完全に覆われてしまいます)、数年前に枝も大幅に切り落とされてしまいました。毎年、心配しながら開花を待つ一本です。

<ご覧頂く際の注意>

シーズン期間中、午前9時頃から夕方まで、桜の正面に通じる道路は歩行者専用となります。誘導員の方が立たれますので、現場の指示に従って、指定の無料駐車場に止めてから、徒歩(数分です)で移動してください。すぐ後ろに走る中央本線の列車とセットで写真を撮られる方も多いですが、くれぐれも線路内進入はなさらないように。

 

2.城山公園(笹尾城址:北杜市小淵沢町)

甲斐駒と桜のコラボレーションが撮りたいという方にお勧めの場所。七里岩の絶壁に立つ枝垂桜です

本来は写真の左側にある山城の跡に繋がる公園なのですが、現在は崩落の危険があるため、進入禁止となっています。しかしながら、公園の駐車場までは自由に入れますので、この通り、クリアな景色を望む事も出来ます。

周囲の桜達の中で一番早く咲くため、時にはこんな姿にも(2015年4月)。

 

ここの枝垂桜も、色がしっかり乗って美しい桜色を呈します。

ほんの少し歩くと、このような八ヶ岳と火の見やぐら、桜のコラボレーションが望める場所も。

<ご覧頂く際の注意>

シーズン中のお天気が良い日には、地元、特に長野方面から一足早い春を楽しみにお越しになる方々がピクニック感覚で桜の下でランチなどを楽しまれている場合があります。甲斐駒をフレームに入れた全景撮影の際はどうか譲り合いで。前述のように、城跡側には入らないようにお願い致します。

 

3.関の桜(山梨県指定天然記念物:北杜市白州町)

今回ご紹介する桜の中で一番アプローチが難しい一本。北杜市内に3本ある県指定天然記念物の桜のうちの1本で非常に立派な木なのですが、如何せん場所が場所故に、シーズン中でも訪れる方はかなり限られるようです。

ほぼ白色の花をたわたに咲かせる。とても江戸時代から生き続ける老木とは思えない、生命力を感じさせる桜です。

木の根元に祠を構える、老木らしく地元の方々に大切にされている木です。この静かな場所が、昔の街道であった(関とは関所の事)とは、俄かに思えませんが、すぐ近くにあるお宅の重厚な造りを観て、やはりと思わせるところはあります。

<ご覧頂く際の注意>

県道からのアプローチルートが極めて判りにくいために、昨年ごろよりシーズン中に限って進入個所を示す看板が設けられましたが、白州側から向かう場合、コーナーが余りにもきつく狭いため、一旦、Uターンして進入する必要があります(たまごかけごはんで有名になった「おっぽに亭こっこ」さんのすぐ手前です)。また、その先は細い畦道のような道となりますので、対向車にはくれぐれもご注意ください(路上ですれ違う事は出来ません、路肩に空きスペースがある場所まで移動して避けて下さい)。桜の正面付近と周辺には車を止められる空き地が辛うじて2~3台分ありますが、止められない場合でも絶対に路上駐車は避けて下さい。

ルート的には韮崎方面から神代桜および、眞原の桜並木にも通じる甲斐駒ケ岳広域農道経由で向かう事も可能です。

 

4.熱那神社の桜(北杜市指定天然記念物:北杜市高根町)

こちらも立派な一本ですが、とても静かな場所です。

延喜式に記載され、実際の記録としても甲斐源氏発祥の頃まで遡る事が出来る非常に古い歴史を持つ神社の境内に立つ桜の古木。小さな神社とは思えない立派な神楽殿や、社殿の鮮やかな彫刻で知られていますが、桜の方の知名度は今一歩のようです。

こちらの桜も色は殆ど白色に近い薄紅色。花の付き方も特徴があります。

境内の空を埋め尽くさんばかりに伸びる枝ぶり。道路沿いのため、路上側の低い枝は切り揃えられてしまっていますが、境内側には大きく伸びています。お天気の良い午後に、西日を浴びるこの枝の下で暫し佇むのは、とても気持ちが良いです。

神社の裏手は牧草地。天気が良ければ正面に八ヶ岳を望み、背後には富士山が遠望できるという素敵なロケーションです。

<ご覧頂く際の注意>

須玉側からアプローチする際には、広域農道脇から細い路地を入る事になります(「高根町小池」と書かれた小さな看板が立っています)ので、運転には充分にお気を付け下さい。境内は車数台分であれば止められるスペースがありますが、空いていない場合は、少し八ヶ岳側に進んだ先に路肩に駐車できるスペースがあります。

広域農道を経由して、須玉方面に下る県道を経ると、ふるさと公園へ行く事が可能です。

 

5.ふるさと公園(若神子城跡:北杜市須玉町)

須玉の街並みを眼下に見下ろし、向かい側に茅ヶ岳の山容を間近に望む要害に位置する若神子城跡は、現在では農村公園として整備され、植えられた桜が春のシーズンを彩ります。今回ご紹介したエリア内でも一番標高が低い場所ですので、開花も早く、最初にご紹介した神田の枝垂桜とでは1週間近く開花タイミングが早いようです。

小さな運動公園の周囲を囲む、小さな桜並木です。

ここは、城跡ですので、桜を愛でた後はちょっとアスレチックがてらに城跡探訪なども楽しんでみては如何でしょうか。少し荒れていますが、断崖下の国道沿いまで下る事も出来ますので、往復すればちょっとした運動になりますよ。

<ご覧頂く際の注意>

農村公園として整備されていますので、麓の国道側と七里岩を登る県道の途中から入る山側の両方とも駐車場完備ですが、閉門時間(一応17時)が設けられていますので、お越しの際にはご注意願います。なお、この冬に完成した県道の新しいループ橋からは進入する事が出来ませんので、ループ橋の手前にある旧道に入る交差点を経由してお越しください。

 

6.連成寺の桜(北杜市長坂町)

今回ご紹介する桜の中で、一番マイナーな桜。

日野春駅からオオムラサキセンターを過ぎて、急に道が細くなった先に古い街並みを残す、長坂町渋沢集落のほぼ真ん中に位置する連成寺。無住の少し荒れたお寺ですが、その参道に一本の立派な枝垂桜が植えられています。

蓋もない道端の水路が今でも水を湛え、火の見やぐらが建ち、潰れた古い漆喰壁の家や、古い豪農たちの風格を残す長屋門や倉、門構えの跡が並ぶというタイムスリップしたかのような雰囲気に実にマッチした一本です。逸見牧とも呼ばれ、逸見路という、現在の国道20号線沿いに伸びる甲州街道が発達する以前から存在する街道沿いに成立した集落の面影を今に残す貴重な場所です。

<ご覧頂く際の注意>

前述のように、道路の脇には水路が通っており、道幅も集落の内部だけは極端に狭くなっていますので、路上駐車は絶対におやめください。長坂と日野春の間を抜ける旧道のため通行量はそれなりにあり、地元民は馴れていますので、対向車が来てもスピード落とさずに走って来ますから、撮影や歩行の際にも細心の注意をお願います。100mほど長坂側に離れた場所にある公民館に車を止める事が出来ます。なお、地元の皆様のご意向かと思いますが、この付近はその貴重な旧観を保つ一方、整備はされておらず一切観光地や史跡としては紹介されておりませんので、その点はご承知おき願います。

4月の雪、御射鹿池(2017.4.1)

3月も終わりになって、すっかり春めいてきた日々。

標高780m、甲斐駒を正面に望む七里岩の段上に位置するこの場所に植えられた枝垂桜は、この界隈で一番最初に花を咲かせます。蕾も大分膨らんで、いよいよ開花を待つ状態に…などと呟いていたのですが、昨晩から再び雪に。

カメラ不調で露出が定まらない状態ですが、重たい春の雪は、周囲の木々を真っ白に染め上げていきます。午後になって小降りになった雪の合間を突いて、何時もの場所へ。

真っ白になった、奥蓼科、御射鹿池周辺の落葉松林。お休みの日ともあって、小雪の中、一人、また一人と観光客の方が訪れています。

湖面は霧で真っ白に。新雪に白く彩られた白樺の木を重ねて。

静まり返った湖面。木々も真っ白に雪化粧をしています。

暫くすると、霧が少しずつ晴れてきます。

霧の中から稜線が見え始め、落葉松の木々が湖面に映り始めます。

雪雲に覆われた中から、すっと姿を現した御射鹿池の全景。

雪が止んだ湖面。湖面に映る落葉松から静かな旋律が流れます。

重たい春の雪は、山々も真っ白に染め上げていきます。墨絵のようなモノトーンに包まれる湖面。

このシーズンだけ望める風景。周囲の環境は大分変ってしまいましたが、小さなこの場所の美しさは変わりません。

再び霧が降りてきた湖畔にて。雪化粧をした木が一人佇みます。白と白のコントラスト。

春の雪は、重たくどどっと降りますが、アスファルトの路面には殆ど積もらず、陽射しがもたらされなくともすぐに溶けてしまいます。純白と漆黒が折り重なる湖畔が望めるのは僅かな時間だけ。そうして、雪と暖かな日を繰り返しながら、山里にも少しずつ春が訪れます。

4月の雪は暖かく、気温0℃でも上着も着ずにシャッターを切り続けていると、ふと岡崎律子さんの「四月の雪」の歌詞を思い出します。

♪でておいでよ 寒くないよ

四月はじめの雪

もう春だよ 冬にさよなら♪

春、四月のスタートです。