今月の読本(特別編)「わいるどらいふっ! 身近な生きもの観察図鑑」(一日一種 山と溪谷社)シュールな4コマ漫画に込めた自然観察への誘い

SNSをやっていると、知らなかった事、知っていても自分の視野が随分と狭かった事を改めて見つめ直させられる事が多々あります。

普段見慣れた生き物達、特に鳥を中心とした野生生物のちょっとした仕草や習性、観察される方々の姿などをコミカルに、時にシュールギャクを以てSNSだけではなく商業誌のイラストや漫画で発表されている一日一種さんが、ネット上に置かれたご自身のサイトやSNSで公開している作品を再編集して纏めた一冊。

7月に刊行されていたのですが、田舎故になかなか入手する事が出来ず、暫く後に地元の本屋さんでも入れて下さったらしいのですが、痛恨のニアミスで手に取る事が出来ず(お詫び申し上げます…懺悔)。刊行から2ヶ月を経て、漸く山を下りた際に本屋さんで入手する事が出来ました。

今回は本ページではほとんど扱う事が無い漫画(アニメーションは観ますが、漫画は殆ど買わないので尚更)、しかも四コマ漫画の読み切り「わいるどらいふっ! 身近な生きもの観察図鑑」(一日一種 山と溪谷社)のご紹介です。

最近ですと、本屋さんの生き物関係書籍のコーナーに別枠でちょっとユルめの生き物たちをテーマに扱ったカラフルな本達が並んでいる書棚か、雑誌/Web連載以外の単独作品が集められたハウツー系を含むコミック棚、ないしは頻繁に入れ替わるSNSで話題となった本が面陳されるコーナーに置かれるであろうこの一冊。確かに下記にご紹介するように、先月、著者の方が投稿された内容には夥しい数の「いいね」が付されていました(以前から相互フォローさせて頂いていたので反響の大きさにびっくりでしたが)。

SNSで拡散されている内容だけ見てしまうと、かなりキツいシュールギャグを全面に出しておきながら最後はお涙頂戴で落とす、所謂「バズる」内容を狙ったかのようにも思えてしまいますが、プロフィールにもありますように著者は環境部門の技術士の資格も有する専門家。専門知識を生かしたイラストレーションを自然科学関係の雑誌や会誌へ多数提供する、元野生生物調査員の方です(この辺りの背景については、山と溪谷社の編集担当の方が寄稿した記事をご覧ください)。

昨年には、専門分野である野鳥観察の知識を生かして、短期集中連載でしたがWeb漫画もリリースされており、その内容には「鳥見(バードウォッチャー)」の方々からも高い評価が与えられていたかと思います(本書にも抜粋が掲載されていますが、日本野鳥の会の会報にも連載を持たれています)。

本書も野生生物を扱った四コマ漫画が中心なのですが、春から冬へと季節を追ってその時々の観察対象となる生き物たちを対比で示しながら見分けるポイントや生態の面白さ、不思議さを捉えて描く、特に欄外や吹き出しの中に小さく書かれたポイント・注意事項に対して、コラムとして独立して掲載できる点は書籍の大きなメリット(アナフィラキシーショック、経験はしたくないですが恐ろしい話なのですよね)。その内容には著者の専門分野である野生生物への実践的な視点が充分に生かされており、少し緩めの生き物をテーマにした本とは一線を画す、野生生物観察入門としても実践的な内容を具えています(四コマ漫画にも拘わらず親会社のインプレスさんではなく、山と溪谷社さんが扱われるという点だけでも出色です)。

特にコラムで扱われる「生きもの観察入門」や、生き物や木々、草花を観察する際のポイント。オールルビ付きで丁寧な言葉づかい(4コマの台詞と比べちゃいけませんが…)で書かれた、子供の頃から身の回りの生き物への興味を持って欲しい、自然環境とはかけ離れた生活環境で育ってきたかもしれない、一緒に読まれるかも知れない親御さんにも興味を持って欲しいと願う、野生生物調査員であった著者の想いが伝わってきます。

ちょっと悪戯っぽい表題と、シュールギャグにドン引きされる方もいらっしゃるかと思いますが、正確な観察眼と知識に裏付けされた、生き物たちの姿に触れて欲しい、知って欲しいと願う著者の想いが、著者が最も得意とするスタイルを以て書籍と言う形で結実した一冊。

少し残念な事に、本屋さんで扱われるジャンルが版元さんの影響もあってでしょうか、若干不安定な感もありますが、著者を知る切っ掛けがSNSだったという方には、より馴染みのある、入手も容易な電子書籍版(Kindle)ももちろんありますので、ちょっと覗いてみて、または著者のホームページをご覧になって、ご興味を持たれたら是非ご一読を。

屋外を歩くのに心地よい季節となる秋、身近にある生き物たちの姿にちょっと触れてみませんか。

 

ほんの少し周囲を歩くだけでも、色々な生き物たちの姿が見えて来る、そんなきっかけとなる一冊として。

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