再び賑わいの秋を迎えた奥蓼科(2019.10.14~20)

台風によって東京方面を結ぶ南北の高速道路も鉄道も寸断された八ヶ岳界隈。

秋の紅葉シーズンを迎えて、本来であれば出掛けるのが億劫になるくらいに多くの観光客の皆様がお越しになる時期なのですが、人も車も少ない、静かな日々。

それでも、中央道も復旧し、限定的ながら鉄道も東京方面と繋がった今週末、秋の賑わいを取り戻しつつあるようです。

まだ緑が残る日の出前の奥蓼科、御射鹿池。このシーズンですと夜明け前から多くの方々が湖畔にお越しなのですが、台風が過ぎ去った翌々日、まだ薄暗い中で僅かにシャッター音が響く、静かな朝を迎えました。

台風が過ぎ去っても天気が安定しない今年の秋。

麓に降りると、北の空には青空が広がり、八ヶ岳の山裾から太陽が昇ってきましたが、背中の杖突峠からは遠雷が響き、ぽつぽつと雨が降り始めるという複雑な空模様(2019.10.14)

それでも、一雨ごとに秋が深まる10月。

雲の隙間から照らされる八ヶ岳の山裾も徐々に色付き始めている事が、麓からもはっきりと判るようになってきました。深まる秋も本番です(2019.10.17)

生憎の雨となった土曜日から一転。朝から青空が広がった日曜日ですが、やはり天気は不安定。昼過ぎに奥蓼科へと足を運びますが、湖畔に着く頃にはどんよりと曇り空。

落葉松の黄葉が徐々に進んできています。

暫く湖畔に佇んでいると山から霧が降りてきました。山の天気は変わりやすく、湖畔の彩も刻一刻と変化していきます。

湖畔を離れて、少し谷筋へ。

今年は白樺の黄葉と少し遅れるモミジの紅葉が一緒にやってきています。

谷へと下った先にある明治温泉の裏庭。

おしどり隠しの滝の周辺も紅葉が進んでいます。

暫く滝の周囲を散策していると、日射しが戻ってきました。

午後の日射しを受けて華やかな彩となったおしどり隠しの滝。

上空は青空が見えるようになってきました。

爽やかな秋空の下、明治温泉の前庭から望む山並みを駆け上るように伸びる雲。

遠く蓼科山を望む奥蓼科の渓谷は、色とりどりの紅葉に囲まれます。

日射しが戻って明るさを取り戻した午後の御射鹿池。

南側の高速道路が開通したことで、観光バスを含めて多くの県外ナンバーの車が駐車場に停まり、湖畔へと歩いていく多くの観光客の方も、思い思いの場所を定めて満足そうにシャッターを切っていきます。

御射鹿池の紅葉ピークはもう間もなく、今週末以降は午後の日射しに照らされてぐっと色を濃くする落葉松の黄葉に移り変わっていくはずです。

高い秋空にたなびく雲の尾が輝く午後の圃場。

眩しい日射しに腕まくりをしながら、標高1200m近くにも拘わらず、刈り取られた圃場に稲のひこばえがびっしりと生えている姿を見る度に、やはり暖かくなっているのだなと実感が湧いていきます。

再び台風の接近が予想される、中々秋本番とはいかない今年の10月です。

台風一過、まだ浅い秋色の静かな八千穂高原で(2019.10.13)

大きな台風が過ぎ去った翌朝。

山々に囲まれた八ヶ岳南麓でも強い風が吹き、雨が多く降りました。

交通の便以外、幸いにして生活に支障をきたす様な事は起きなかった今回。眩しいほどの日射しが戻ってきた八ヶ岳の山裾へと車を走らせます。

抜けるような青空が広がる南アルプスの上空。

刈り入れられていなかった圃場の稲穂は多くが倒伏してしまったようです。

今年は暖かいのでしょうか、はざ掛けされた圃場越しに望む甲斐駒の山裾はまだ緑に覆われています。

標高を上げて、八ヶ岳を望む清里、東沢大橋(通称、赤い橋)まで登ってきましたが、まだ紅葉はまばら。

都県境で鉄道も高速道路も寸断されているためでしょうか、連休にも拘らず、周辺を走る車はほとんど見かけません。

台風が過ぎ去ってすっきりと晴れ上がった、野辺山の野菜畑から望む八ヶ岳の山並み。

まだ緑に包まれる牧草地、台風が残した強い風が吹き抜けていきます。

遠くに望む八ヶ岳の山裾。

少しずつですが、秋色に変わり始めています。

もう少し山裾の奥へと進んでみます。

まだ通行止めの箇所が残るためでしょうか、人影のない午後の八千穂高原、八千穂レイク。

本来であれば今日は紅葉祭りで、例年ですと多くの方がいらっしゃる筈なのですが、周囲の各施設は全てお休み。時折、麦草峠へと上がっていく車が通り過ぎていくだけです。

八千穂高原の白樺林。黄葉はちょうど見ごろを迎えています。

白樺林を抜けて遊歩道に入っていきますが、木々の紅葉はまだ始まったばかり。

それでも、所々で色付き始めた紅葉を眺めながら、誰もいない遊歩道をゆっくりと歩いていきます。

遊歩道を抜けると再び白樺林へ。

高い秋の空に雲が広がり始めました。

隣の落葉松林へ足を進めます。まだ黄葉は始まったばかり、軽やかな琥珀色に染まる落葉松の幼樹たち。

色付き始めた落葉松林の上にも雲が広がり始めてきました。

八ヶ岳の山懐へと傾き始めた西日を浴びて輝き出す紅葉する木々。

晴れ渡っていた空は、八ヶ岳から下って来た曇に覆われてきました。

西日を浴びる八千穂レイク。

周囲に広がる広葉樹たち、今週末頃には色付くでしょうか。

落葉松の黄葉はまだしばらく先になりそうです。

麦草峠の入口、レストハウスふるさとから望む落葉松林と浅間山。

南から雲が押し迫ってきています。

茅野市側が路盤損傷で通行止めとなっている麦草峠から折り返して再び戻ると霧が降りてきた八ヶ岳東麓。連休最終日の明日は天気が崩れる予報です。

今月の読本「戸籍が語る古代の家族」(今津勝紀 吉川弘文館)反故紙を捲り音で読み解く、家と女、遥かなる記憶の断片

今月の読本「戸籍が語る古代の家族」(今津勝紀 吉川弘文館)反故紙を捲り音で読み解く、家と女、遥かなる記憶の断片

最近色々と騒がしかった「公文書」に関する一連の話題。

後年の人々にとって記録が残る事の大切さとその内容に対する興味深さ、時に恐ろしさは、歴史が好きな方であればご理解されるところかと思いますが、偶然に残ってしまった記録から辿られる歴史もまた興味深い一面を持っています。

今回ご紹介するのは、その偶然残った極めて貴重な記録から、より深く議論を掘り下げて語られる一冊です。

何時も新刊を楽しみにしている吉川弘文館の歴史文化ライブラリー最新刊より「戸籍が語る古代の家族」(今津勝紀 吉川弘文館)です。

本書でメインに据えられる「戸籍」、著者はその制度や記録自体が古代の律令制以降、近代、実に明治に入るまで全国的な規模で整えられていない点をまず明示します。

巻末で「都市平安京の王朝政府」と述べられる、対外的な危機が遠ざかり、統一的な国内政策を行う必然性が薄れて地方行政が国司へと分権縮小化され、人身課税から土地課税へと転換した結果失われた「戸籍」をベースにした人身管理。明治以降に整備された戸籍法による人身管理まで大きく断絶するその制度の歴史的な空白を埋めてくれるものが、遥か過去に存在した戸籍、それも反故紙として偶然残された「裏紙」(コピーの裏紙も怖いのですが)に書かれた内容からの復元。

その保存過程から非常に断片的な内容(後年の整理で更に複雑化したとも)に留まる当時の戸籍、それでもこれまでの研究結果に基づき、他分野の成果も加える事で、当時日本列島に居住した人口を見出すことが(大まかにですが)可能となってきている事を示します。急激な人口減少に対して様々な警句が発せられる昨今ですが、歴史にご興味のある方ならご存知のように、明治初頭の人口は約3480万人と現在の人口の1/3程度に過ぎません。遡って近世初頭の人口はさらに減って1200~1800万人、著者の指摘する八世紀初頭の人口の推定はぐっと少なく僅かに450万人程度に過ぎないと指摘します。人口増加が年率1%を越えるのは漸く近代に入ってから、それ以前は0.1~0.2%という極めて低位な人口増加を示すに過ぎない点を、断片的に残った戸籍から見出す事が出来ることになります。

僅かな断片からでもその史料を繋ぎ合わせ、他に残された史料を突き合わせる事で復元されていく、古文献の検証による研究。著者は古代の戸籍が作られた事情とその形式から議論を始めますが、現在の戸籍の姿と大きく異なる点をまずは明確にします。当時の大陸との緊張した関係から生じた、兵力の確保と戦力の源となる生産力の正確な把握を目的とした極めて軍事的な色彩の濃い戸籍作成の経緯。そのため、記録される内容も兵士を供給できる単位としての「家」の姿を現している事を示します。古代の氏族制が徐々に形作られる中で編成された戸籍、家を構成する形にもその過程が色濃く反映されている事を示します。その結果、数値で復元された古代日本の姿は、典型的なピラミッド型年齢構成を取り、若年での婚姻と多産多死の傾向を明瞭に示す一方、残存する戸籍によって男女比が著しく異なるという奇妙な構成を示します。

残された戸籍の断片から見出す、現在の家族や親族とはかなり異なる様相を呈する「家」の姿。著者は其処に生きたであろう人々の姿をさらに掘り下げるために、戸籍に残された「家」姿からもう一歩踏み込んで、残された言葉の中にその核となる「男女」の姿を求めて踏み入っていきます。

兵站の基礎として整備された戸籍、徴税の元となる戸籍に残された成人男性を核に記録される家の姿。其処には妻と言う表現と共に付される女性と共に多くの妾、そして年齢がかみ合わない多数の子どもたちが存在する点を指摘します。多くは年長の男性に対して不釣り合いな若年の女性が複数含まれるという家の構成。経済力のある男性が複数の女性を妾として住まわせるという視点だけでは補正しきれない、明らかに連れ子と見做せる子どもの年齢。前述の婚姻傾向と高い出生率を添えてその主因を述べていきますが、著者は敢えてある問題について提起を行います。

現代に繋がる大きなテーマとなる「家」と「家族」という姿が、古代ではどのように構築されてきたのか。

近年まで続く家父長制が定着する前に、貴族の姿を綴る平安文学で語られる「通い婚」という形で男女が結ばれ、妻の住まいに夫が居住するという姿。貴族と言う限定的な範囲で残された記録から更に議論を発展させて「妻問婚」という生涯に渡っての通い婚という姿がそれ以前には存在していたのではないかと言う説に対して、その反証を試みます。

これまで述べてきた戸籍の内容を踏まえた上で、古代史を扱う者としては必須となる、万葉仮名(上代特殊仮名遣い)による音の読み分けを示した上で、これらの議論で着目される内容に対して改めて検証を加えていきます。本書の後半部分ほぼ全てを注ぎ込んで積極的に議論される、古代における男と女の関係から導き出されれる女性の一生、「家」が形作られる姿。その議論には当該する分野に強いご興味のある方にとっては看過できない論旨も含まれるかもしれませんが、著者はあくまでも古代史の研究家としての視点で、その姿の復元を述べていきます。

偶然の記録として残された断片から復元される、古代の「家」に示される姿。あくまでも断片である一方、最終章で語られる「改竄された戸籍」との対比から、明らかに当時の一側面を示す史料から述べられる内容は、これが全てであると言い切る訳にはいきませんが、現代的な家族と家というテーマにも一石を投じる内容。記録が残る事の大切さと、そこから何を読み解くのか、歴史研究者の方の視点を知る上で、興味深い一冊です。

同じく歴史文化ライブラリーより、本書と同じような経緯で残された史料、発掘される木簡から、その戸籍を綴る側の立場にあった官人、特に国造達の系譜に繋がる地方官人たちの姿を軸に、律令制、中央集権制という制度が日本に於いてどのようにローカライズされていたのかを再現する一冊「地方官人たちの古代史」併せてご紹介しておきます。

実りの秋色から次の季節へ(2019.9.19~30)

実りの秋色から次の季節へ(2019.9.19~30)

山里の秋を象徴する黄金色に染まる稲穂。

9月も終わりになって来るとそろそろ刈り入れの時を迎えます。

刈り入れを前に実りの色に染まる圃場で。

雨上がり、空に広がる雲の漣と稲穂の渚(2019.9.19)

雨雲に沈む山の圃場。

刈り入れが済んだ圃場の稲藁もしっとりと雨に濡れています。

霧に沈む夕暮れ前の圃場で。

雨に濡れた稲穂の黄金色が一際、鮮やかになる時。

晴れ間が戻ってきた朝の圃場。

稲穂の渚の向こう、雲に覆われていた南アルプスの山裾はまだ緑に覆われています(2019.9.25)

稲穂の輝きが増すと共に八ヶ岳の緑は徐々に色褪せますが、今度は赤銅色の落葉松の黄葉に染まる山の彩へと移っていきます(2019.9.27)

雨上がりの朝、高い秋の青空に雲が巻く下で、はぜ掛けが進む圃場を望んで。

集落沿いの圃場で稲刈りが進む頃、秋の例祭を控えた天神社の提灯が灯されるとシーズンも終盤。

季節は10月、今度は山から里へ秋を迎えに行くシーズンがやってきます。

今月の読本「菅原道真」(滝川幸司 中公新書)文学者の視点で読む漢詩人、道真の揺れ動く想い

今月の読本「菅原道真」(滝川幸司 中公新書)文学者の視点で読む漢詩人、道真の揺れ動く想い

余りに有名な歴史上の人物を扱った評伝。本新書シリーズでこれまで取り上げられてこなかった事にむしろ驚くくらい、教科書はもとより、既に多くの一般向け書籍でも語られているその人物像ですが、少し立ち読みした際に切り口の特異性に非常に興味を持って読んでみた一冊。

今回は「菅原道真」(滝川幸司 中公新書)のご紹介です。

本書の著者である滝川幸司先生は平安文学の研究者。あとがきでも述べられているように、平安文化の象徴的存在でもある和歌が政治的な存在としてどのように当時の王朝国家に取りいれられたか、その経緯を研究されている方です。このように書いてしまうと、如何にもその発祥期を生きた道真の研究テーマに相応しい、和歌の研究者から見た、文学の神様として祀られるに至る彼の生涯を綴るように思えてしまいますが、本書に於いては敢えて道真をそのような位置付けに置く部分にまで議論を至らせない事を示します。

著者が専門分野である和歌を離れて、道真の研究として敢えて検討を加える必要を感じた事。それは、和歌が宮廷政治の中で重んじられる以前から貴族にとっては必須の素養であった「漢詩」として残された道真の言葉を辿る事。

遥か未来の戦前期まで続く、日本人のみならず、広く北東アジアの儒学文化圏で文人を標榜する人々にとっての基礎教養、コミュニケーションを取るための共通言語ともいえるその技能に於いて頂点を極めた大学者である道真が、日本人にもなじみの深い白居易の体を具えたと評された漢詩として残した歌と自注を読み込む事で、歴史学や通史で描かれる道真の姿に別の側面を与えていきます。

特に本書では、その華麗なる遍歴と悲惨な末路に対して大きく二分される傾向にある道真の評価について、これまでの認識を改めるべき点を明確に示した上で、双方極端な視点に偏り過ぎないように配慮を求めていきます。

まず、文章博士を歴代輩する俊英の誉れ高き菅家の跡継ぎと言うイメージに対して、彼が残した漢詩では、その試験勉強に苦しみ青息吐息で対策に及第、年齢的には若かったが秀逸と言う位置付けではなかったことを示します。そのような結果を強く意識していたのでしょうか、著者は道真が繰り返し起こる他者からの誹謗中傷に悩まされ、その状況を改善することを求める動きを取っていた事を見出します。その結果、当時の官僚制度の中で貴人と言われる五位以上の貴族の家系ではなく、より低い位階からステップを上がっていく事になる道真にとって、当時の貴族(官僚)一般の生き様から、昇進を果たす事自体は当然の目標と捉える一方、官僚としての評価にはかなり神経を尖らせ、早い昇進の裏返しとなる複数の官職を兼ねながら本職と弁える文章博士を並行して務める激務に精勤するも、かなりの苦痛であったこと示していきます。

そして、著者が極めて重視する点。道真が用いたとされる「詩臣」という言葉への強い自負心と、紀伝道と明経道という二つの科を経て官界に出た大学寮出身者達の本質的な考え方の違い。どうしても儒学として包括的に捉えてしまう事が多いのですが、著者はその違いを阿衡事件の際に交わされた議論を用いて明確化していきます。

紀伝道としてのスタンスを重んじる一方、当時の官界の情勢にも敏感で父の時代から藤原北家との関係を有する道真の揺れ動く態度。本職と任じる文章博士を務め、菅家廊下の門下を率いる学寮の雄としての姿は父親と同じ歩みである一方、文章博士を離れ、国司として心ならずも在地に下向している最中に起きた阿衡事件によって、大きなうねりの中に取り込まれていく事になります。

著者が指摘する「詩臣」という立場が、宮廷政治の中で政治的な意味合いを持つ「詩宴」へと組み込まれていく中で、菅家にとって破格の位階へと地位を上げていく道真。此処で著者は宇多天皇の藤原北家に対する牽制人事であるという見解に対してやや否定的な立場を採ります(大師としての極端な優遇に傾いた理由は是非ご一読で)。道真がまだ若く官界に出る以前から上表の代筆を頼むなど、父親の代から藤原北家にとって菅家、道真はむしろ協調すべき相手であったことを、醍醐天皇即位後に生じた納言達のサボタージュに共に対処した道真と時平を捉えて、旧来述べられてきた言説が誤っている事を指摘します。また、遣唐使派遣を道真が中止したとされる理解についても、道真が詠んだ漢詩の解釈を読み違えており、彼が醍醐天皇が即位する頃まで遣唐大使の職位を帯び続けていた点からも、その間も派遣を模索し続けていたのではないかと指摘します。

破格の優遇による職位と先の天皇の大師、新天皇の父師としての存在。では何故、大宰府へ流される事になってしまったのか。三善清行の書簡と彼の立場を指摘した上で、終盤でその引き金となった可能性を指摘しますが、著者が挙げる説とその後、大宰府幽閉時に綴られる、漢詩として残された道真の言葉、無実を信じつづけていたという想いとの微妙なずれは少々気になる所ではあります。

最後に紀長谷雄の言葉から引く「卿相の位に居た雖も、風月の遊を抛てなかった。」実際はその間で大きく揺れ動く想いを文学者の視点として漢詩の解釈から示しながら綴られる本書は、数多ある人物評の中でも興味深い指摘を伴いながら、一般人にとって歴史に触れるという事に対してより立体的な視野を与えてくれる一冊。

もしかしたら偉大な漢詩人、紀伝道を修めた文学者であった道真の姿に、同じく文学研究者である著者の研究への想いを少し重ねながら、その姿を描きこんでいるのかもしれません。

今月の読本(特別編)「わいるどらいふっ! 身近な生きもの観察図鑑」(一日一種 山と溪谷社)シュールな4コマ漫画に込めた自然観察への誘い

今月の読本(特別編)「わいるどらいふっ! 身近な生きもの観察図鑑」(一日一種 山と溪谷社)シュールな4コマ漫画に込めた自然観察への誘い

SNSをやっていると、知らなかった事、知っていても自分の視野が随分と狭かった事を改めて見つめ直させられる事が多々あります。

普段見慣れた生き物達、特に鳥を中心とした野生生物のちょっとした仕草や習性、観察される方々の姿などをコミカルに、時にシュールギャクを以てSNSだけではなく商業誌のイラストや漫画で発表されている一日一種さんが、ネット上に置かれたご自身のサイトやSNSで公開している作品を再編集して纏めた一冊。

7月に刊行されていたのですが、田舎故になかなか入手する事が出来ず、暫く後に地元の本屋さんでも入れて下さったらしいのですが、痛恨のニアミスで手に取る事が出来ず(お詫び申し上げます…懺悔)。刊行から2ヶ月を経て、漸く山を下りた際に本屋さんで入手する事が出来ました。

今回は本ページではほとんど扱う事が無い漫画(アニメーションは観ますが、漫画は殆ど買わないので尚更)、しかも四コマ漫画の読み切り「わいるどらいふっ! 身近な生きもの観察図鑑」(一日一種 山と溪谷社)のご紹介です。

最近ですと、本屋さんの生き物関係書籍のコーナーに別枠でちょっとユルめの生き物たちをテーマに扱ったカラフルな本達が並んでいる書棚か、雑誌/Web連載以外の単独作品が集められたハウツー系を含むコミック棚、ないしは頻繁に入れ替わるSNSで話題となった本が面陳されるコーナーに置かれるであろうこの一冊。確かに下記にご紹介するように、先月、著者の方が投稿された内容には夥しい数の「いいね」が付されていました(以前から相互フォローさせて頂いていたので反響の大きさにびっくりでしたが)。

SNSで拡散されている内容だけ見てしまうと、かなりキツいシュールギャグを全面に出しておきながら最後はお涙頂戴で落とす、所謂「バズる」内容を狙ったかのようにも思えてしまいますが、プロフィールにもありますように著者は環境部門の技術士の資格も有する専門家。専門知識を生かしたイラストレーションを自然科学関係の雑誌や会誌へ多数提供する、元野生生物調査員の方です(この辺りの背景については、山と溪谷社の編集担当の方が寄稿した記事をご覧ください)。

昨年には、専門分野である野鳥観察の知識を生かして、短期集中連載でしたがWeb漫画もリリースされており、その内容には「鳥見(バードウォッチャー)」の方々からも高い評価が与えられていたかと思います(本書にも抜粋が掲載されていますが、日本野鳥の会の会報にも連載を持たれています)。

本書も野生生物を扱った四コマ漫画が中心なのですが、春から冬へと季節を追ってその時々の観察対象となる生き物たちを対比で示しながら見分けるポイントや生態の面白さ、不思議さを捉えて描く、特に欄外や吹き出しの中に小さく書かれたポイント・注意事項に対して、コラムとして独立して掲載できる点は書籍の大きなメリット(アナフィラキシーショック、経験はしたくないですが恐ろしい話なのですよね)。その内容には著者の専門分野である野生生物への実践的な視点が充分に生かされており、少し緩めの生き物をテーマにした本とは一線を画す、野生生物観察入門としても実践的な内容を具えています(四コマ漫画にも拘わらず親会社のインプレスさんではなく、山と溪谷社さんが扱われるという点だけでも出色です)。

特にコラムで扱われる「生きもの観察入門」や、生き物や木々、草花を観察する際のポイント。オールルビ付きで丁寧な言葉づかい(4コマの台詞と比べちゃいけませんが…)で書かれた、子供の頃から身の回りの生き物への興味を持って欲しい、自然環境とはかけ離れた生活環境で育ってきたかもしれない、一緒に読まれるかも知れない親御さんにも興味を持って欲しいと願う、野生生物調査員であった著者の想いが伝わってきます。

ちょっと悪戯っぽい表題と、シュールギャグにドン引きされる方もいらっしゃるかと思いますが、正確な観察眼と知識に裏付けされた、生き物たちの姿に触れて欲しい、知って欲しいと願う著者の想いが、著者が最も得意とするスタイルを以て書籍と言う形で結実した一冊。

少し残念な事に、本屋さんで扱われるジャンルが版元さんの影響もあってでしょうか、若干不安定な感もありますが、著者を知る切っ掛けがSNSだったという方には、より馴染みのある、入手も容易な電子書籍版(Kindle)ももちろんありますので、ちょっと覗いてみて、または著者のホームページをご覧になって、ご興味を持たれたら是非ご一読を。

屋外を歩くのに心地よい季節となる秋、身近にある生き物たちの姿にちょっと触れてみませんか。

 

ほんの少し周囲を歩くだけでも、色々な生き物たちの姿が見えて来る、そんなきっかけとなる一冊として。

南八ヶ岳周辺の博物館・美術館の企画展情報(2019年秋冬版)

南八ヶ岳周辺の博物館・美術館の企画展情報(2019年秋冬版)

本ページは、企画展の情報等を逃して悔しい想いを何度もしている自分の為に用意した備忘録です(地元に住んでいても情報は全然入って来ませんし、今日までで終了の企画展でも気が付けなかったものがいっぱいある…涙々)。私自身が訪れた事のある施設を中心に掲載しておりますので、かなり偏った掲載内容になっている点はご容赦ください。

情報のソースは各施設、観光案内施設やショッピングモールなどで配布されている展示会の公式パンフレット、地元新聞社、放送局による紹介、SNS等による発信内容を用いていますが、最終的な確認については各施設のホームページ掲載内容に基づきます。

なお、南八ヶ岳周辺にある各施設の概要についてお知りになりたい方は「八ヶ岳ミュージアム・リング」(八ヶ岳ミュージアム協議会)という公式サイトがありますので、そちらをご覧ください(但し、更新頻度が極めて低く、企画展などの情報もありません)。

【八ヶ岳東麓(小海、野辺山方面)】

  • 小海町高原美術館
    • 国道141号線、松原湖交差点から松原湖方面へ10分(松原湖から5分ほど)。タクシー、バスをご利用の方は小海線の小海駅から(バスの本数は僅か)。広い駐車場がありますが、お隣の日帰り温泉と共用の為、シーズン中や新海誠監督関連のイベント開催時は混雑します。12/24から冬期休館です
    • 現在開催中の企画展 : 北欧の灯り展(2019/9/7~2019/11/4):終了
      • オープニングセレモニー9/7(土):終了
      • 企画者による講演会9/8(日):終了小海町高原美術館
  • 南牧村美術館民俗資料館 
  • 国立天文台 野辺山
    • 国道141号線、JR最高地点にある看板の指示に従って小海線の側道を直進、突き当たりの踏切を渡って(右側の道)2分程。小海線、野辺山駅からは徒歩20分ほど。駐車場有
    • 現在開催中の企画展 : 4次元デジタル宇宙シアター(4D2Uシアター)10月,11月はお休みです。12月から3月までの上映は、年末年始以外の毎週土曜に3回、各回定員30名で先着順です(12/7より再開します)

【八ヶ岳南麓(清里、長坂、大泉、白州方面)】

  • 清泉寮やまねミュージアム
    • 中央道、長坂インターから五町田の信号を左折して県道北杜八ヶ岳公園線を清里、八ヶ岳高原大橋方面へ北上、八ヶ岳高原大橋を越えて登坂車線付きの道を登った先にある「清泉寮」方面看板の指示に従って進む。国道141号線方面からは清里の交差点を越えた先の、清里トンネル東交差点を曲がり、清里トンネルを抜けた先にある同じ看板の指示に従って進む。清泉寮の向かい側にある、県立八ヶ岳自然ふれあいセンターの奥にあります。小海線、清里駅からは観光周遊バスが利用可能です。駐車場は清泉寮もしくは県立八ヶ岳自然ふれあいセンターを利用。11/1から冬季シーズンのため、開館日は金・土・日・月(及び祝日、年末年始)のみとなります
    • 現在開催中の企画展 : 開催中の企画展はありません。次回のギャラリートーク「研究員に聞け! 冬の巻」は、ヤマネの冬眠期間中となる来年2/9(日)です
  • 清里フォトアートミュージアム
    • 国道141号線、丘の公園交差点を入った先ですが、ルートがやや複雑なので、心配な方はナビへの入力ないしは、事前に地図をご用意の上で、お越しください。駐車場有。12/9から冬期休館です
    • 現在開催中の企画展 : ロバート・フランク展-もう一度、写真の話をしないか。(2019/6/29~2019/9/23):終了
      • ピーター・バラカン Live DJ「ロバート・フランクの写真・アメリカ・それから」9/21(土):終了
    •  現在開催中の企画展 : 山本昌男「手中一滴」展(2019/10/5~2019/12/8)
      • 出展者によるアーティスト・トーク10/26(土):終了
  • 北杜市考古資料館
    • 中央道、長坂インターから五町田の信号を左折して県道北杜八ヶ岳公園線を清里方面に北上、若林交差点を小淵沢方向に左折、旧大泉村役場跡の向かい側にある図書館を過ぎた先の交差点を看板の指示に従って谷戸城跡方向に左折して1分程。中央本線、長坂駅から市民バスも利用可のですが本数は僅か。駐車場はありますが10台未満
    • 現在開催中の企画展 : 「黒き星のかけら~黒曜石と八ヶ岳山麓の縄文世界~」(2019/10/26~2020/1/26)
      • ギャラリートーク : 11/2(土)、12/14(土)、1/19(土)
      • 講演会「八ヶ岳山麓の縄文遺跡を中心とした黒曜石ネットワーク」11/24(日)
    • 現在開催中の企画展 : 共同企画展「ワンダフルジャーニー 星降る八ヶ岳山麓の縄文文化」(2019/7/6~2019/11/24)
  • 北杜市郷土資料館
    • 県道17号線七里岩ライン、長坂駅手前のガードを潜った先の交差点を白州方面へ左折、谷筋を越えた先にある「清春白樺美術館」の案内看板が出ている交差点を右折してすぐ。国道20号線方面からは台ヶ原中交差点を曲がって峠道を登り切った先にある前述の看板に従って左折してすぐ(清春白樺美術館の向かい側)。中央本線、長坂駅から市民バスも利用可能ですが本数は僅か。駐車場有、満車の場合は向かいの清春白樺美術館の駐車場も利用可能
    • 現在開催中の企画展 : 「動物の神様」(2019/7/13~2019/10/27):終了
      • ギャラリートーク : 9/14(土):終了、10/13(日):終了
      • 講演会「御坂のニホンオオカミ頭骨と甲斐周辺の狼信仰」10/6(日):終了
  • 北杜市オオムラサキセンター
    • 県道17号線七里岩ライン、日野春陸橋を越えた先にあるオオムラサキセンター交差点を曲がってすぐ。中央本線、日野春駅から徒歩1分。駐車場有
    • 現在開催中の企画展 : 特別展「太古の虫たち」(2019/9/10~2019/12/27)
  • 藪内正幸美術館
    • 国道20号線、鳥原の交差点を曲がって、サントリー白州蒸留所へ。工場に入る手前の交差点を左折、200m程先にある案内看板に従って右折して1分ほど。バスは韮崎駅から国道20号線経由の下教来石行きに乗車して松原下バス停で下車、もしくは小淵沢駅から発着するサントリー白州蒸留所行きの見学バス(3月~11月の主に土曜休祝日とGW、夏休み中の運行)に乗車して工場から徒歩、いずれも15分ほど。駐車場有。12月から冬期休館です
    • 現在開催中の企画展 : 2019年度後期企画展「おなじみのどうぶつたち」(2019/7/20~2019/11/30)

【八ヶ岳西麓(富士見、原村、茅野、諏訪方面)】

  • 神長官守矢史料館
    • 中央高速、諏訪インターを降りて右折、陸橋脇をビーナスライン方面に入ってすぐの荒井交差点を右折、突き当たりの高部東交差点を右折して1分ほど、高部交差点の先。中央本線、茅野駅からバスもあり(茅野駅から徒歩でも行く事は可能ですが、お勧めしません、凡そ40分)駐車場はありますが、数台に限られます
    • 現在開催中の企画展 : 守矢文書に見る 改元・元年の古文書(2019/8/3~2019/10/14):終了
  • 諏訪市博物館
    • 中央高速、諏訪インターを降りて左折、飯島交差点を諏訪大社方向に左折して5分弱、諏訪大社上社本宮正面。中央本線、上諏訪駅からバスもあり(茅野駅から徒歩で行く事も可能ですが、お勧めしません。凡そ45分)。駐車場有
    • 現在開催中の企画展 : 企画展「仏法紹隆寺-諏訪の真言道場 古刹の歴史-」(2019/9/14~2019/11/24)
      • 講演会「仏法紹隆寺の仏像-普賢菩薩騎象像と不動明王立像について-」10/13(日):終了
      • 展示説明9/15(日):終了、10/12(土):終了
  • イルフ童画館
    • 中央高速、岡谷インターから下諏訪方面へ向かい、岡谷インター東交差点を岡谷方向へ曲がって5分ほど、イフルプラザ内。中央本線、岡谷駅からは徒歩3分。駐車はイルフプラザの市営立体駐車場(5時間まで無料)へ
    • 現在開催中の企画展 : うらしまたろう展 あんな浦島 こんな乙姫(2019/7/20~2019/9/23):終了
    • 次回の企画展 : 加藤休ミ展 おいしい たのしい クレヨン画(2019/9/28~2019/12/16)
      • 読み聞かせと演奏会、サイン会10/14(月・祝日):終了

他にもご紹介したい施設は沢山ありますが、とりあえず此処まで。