伊那谷の食文化を伝える二つの企画展(伊那市創造館「蕎麦は正義」と伊那市高遠町歴史博物館「ふるさとごはんの300年」)へ

伊那谷の食文化を伝える二つの企画展(伊那市創造館「蕎麦は正義」と伊那市高遠町歴史博物館「ふるさとごはんの300年」)へ

強い風が吹く春分の日から、春霞の中、穏やかで暖かな日となった連休二日目。

人出の少ないこの春ですが、折角なので少し足を延ばしてこれまで寄る事の出来なかった場所へ。

高速道路を1時間ほど。両岸の山裾や天竜川沿いを抜ける道筋は幾度も通っているのですが、入り組んだ街路へと入る事の少ない伊那谷の市街地。その中心部にある県合同庁舎の裏手にあるモダンな建物。

昭和初期に地元で製糸工場を興した人物がその全額を負担して建築されたとされる、閉館までの長期に渡り民間運営とされた私立図書館、旧上伊那図書館。片倉館を設計した森山松之助が基本設計を手掛け、飯田にある追手町小学校を設計した黒田好造が実設計を行ったとされる、虚飾を廃した昭和モダンのシンプルで味わい深い造形が美しい建築。現在は伊那市創造館として、学習教育施設に生まれ変わっています。

内部は改装されて学習室と展示スペース、多目的ホールとされた伊那市創造館。

今日は、こちらの「蕎麦は正義」展を見学にやってきました。

薄暗い展示スペースの中に飾られた、家庭で使われていたという蕎麦打ちの道具。実は本展で明確に蕎麦と伊那谷の関係性を伝える展示物は、こちらと石臼、蕎麦粉を捏ねる鉢の各一点のみ。壁面にガラスケースが連なる展示室ですが、ほぼすべての展示ケースは、こちらのようながらんとした解説パネルで占められます。

そして、展示の内容もちょっと掲げられたテーマとは離れた内容。しかしながら伝えたいと願うイメージは明確です。

伊那谷の行者そばこそが、そばの発祥であると表明したいという願い。それにもかかわらず、伝統的な家庭料理(蕎麦が打てなければ嫁に行けないとされたという)故に、伊那の市街地には殆ど蕎麦屋が発達しなかったという事実。一方で、保科正之の会津転封により伊那から伝わったとされる会津地域における高遠そばの発展と、その元祖として逆輸入する形で有名になったお隣の高遠そば。全国に広まったご当地蕎麦の存在。それらに対して地域活性化の新たな一手としての蕎麦の活用を目指す、地元伊那(この場合は「旧伊那市」)の活動を伝える展示。

高遠そばの繋がりで親善交流を続ける会津若松や全国各地のご当地そば、地元伊那、高遠の蕎麦店マップなどのパンフレットが豊富に並べられ、何やら観光や産業振興のPRを見ているような気分になってきますが、当館のスタンスを考えれば尤もな展示内容かなと改めて思いながら。

息が詰まるくらいに暗く圧迫感のある展示スペースに煌々と明るいガラスケースというちょっと秘密めいた展示エリア。パネル展示なら室内照明自体も明るくした方がよいのではないかとも思ってしまいますが、実は真っ暗な展示室の奥にある休憩スペースにはちょっとしたお楽しみも。

昭和43年に、信州に所縁を持つとされる看板を受け継ぐ、麻布十番にある永坂更科布屋太兵衛が制作した「蕎麦絵巻」その全巻が壁一面と卓の上に飾られています。

遙か古代から当時の蕎麦屋(もちろん更科の暖簾分けのお店を中心に)と蕎麦の産地の分布を重ねた全国地図を巻末として、時代ごとの世相に描かれた蕎麦の姿を綴る錦絵風の大作。暗くちょっと息苦しい空間ですが、この作品を眺めているだけであっという間に時間が過ぎてしまいます。

実は1階の展示室でも「信州伊那谷の美味しい昆虫」というミニ展示(こちらもパネル展示です)が行われており、企画展と合わせて地元の食文化に触れられる機会となっています。

企画展はここまでですが、伊那市創造館の展示ハイライトは実はこちら。

いずれも国指定の重要文化財となる、神子柴遺跡から出土した石器の展示と、顔面付釣手形土器の展示エリア。

和田峠のお膝元、下諏訪の博物館や諏訪地域の博物館でも見かけることが少ない、削り出した跡が克明に分かる、見事に黒光りする黒曜石の石器が放つ迫力には思わず目が釘付けになります。

そして、この施設一番のお宝でもある、御殿場遺跡から発掘された顔面付釣手形土器。

展示ケースの裏側にも入れるようになっているため、その背後に施された複雑な造形もじっくりと眺めつつ驚かされる逸品。土曜日のお昼前のひと時、来訪者のいない館内を暫し独り占めで楽しんでしまいました。

一般開放はされていませんが、中央構造線を有する多様な地質を擁する当地の岩石標本など多彩な収蔵物も擁する、産業・観光振興や多目的学習施設としての位置づけを有する伊那市創造館。入館は無料、幕末から明治中期にかけて伊那谷を転々と寄宿しながら詠み続けた漂泊の歌人、井上井月を顕彰する展示室以外、撮影は可能です。

そして、天竜川を渡って車を走らせること20分ほど。白銀の南アルプスをバックに穏やかな午後の日差しを受けてエメラルドグリーンに輝く、満々と水を湛える高遠ダムの畔。

市街地にある伊那市創造館から一変して、同じ市内でも歴史溢れる街並みを誇る観光都市、城下町高遠を代表する観光スポットの一つでもある伊那市高遠町歴史博物館

先ほどの伊那市創造館とは打って変わって、風光明媚な湖畔を望む斜面に建てられた如何にも近世をテーマにした美術館風の佇まい。そのせいでしょうか、こちらの入館料は有料(因みに、入館受付が高遠城址のお城ご朱印状(御城印)の受付でもあるのですが、結構高いのだと…。)、周囲の資料館、美術館などとの共通料金制もない点は、観光地故でしょうか。高遠町という表記をいまだに残すことからも、同じ市内でもかなり異なる印象を受けます。

お約束の、館内の離れにある、絵島囲屋敷(復元)

そして、伊那市創造館と決定的に異なる点は、高遠ダムの湖畔を望むロビーを含めて館内が全面撮影禁止である点。最近の博物館の状況を鑑みるとちょっと不思議にも思えてきますが、展示内容も一般的な公立の歴史博物館のイメージとは少し異なる、低い天井と多人数を同時に収容できる広々とした動線で主に近世、近代初頭の高遠に遺された武具や書画、藩校進徳館に繋がる所蔵品や在学した地元出身者の遺品をガラスケース内で展示するという、古美術品の美術館といった雰囲気が濃厚に漂う施設。

今回の特別展は、そのような施設の雰囲気とだいぶ異なるテーマとなる「ふるさとごはんの300年」展。

写真撮影は出来ませんが、こちらのように展示内容と出展目録(期間中の展示替えを想定されているのでしょうか、一部未展示と思われる掲載品もあり)のパンフレットが用意されており、展示内容や意図が明確に把握できるよう配慮されています。

今回の展示のきっかけとなった、一昨年から杖突峠の麓、藤沢の集落にある農業レストラン「こかげ」で提供を始めた、参勤交代で伊那に入部する際、藩主が必ず最初に立ち寄ったとされる御堂垣外宿本陣、藤澤家に残された献立を元にして作られた「殿様御膳」。この成果を広く紹介する事を目的とした活動の一環として、レシピの復元にも協力した博物館サイドが実現した展示企画であることが冒頭で述べられていきます。

博物館で「食」の展示は難しいのでは?と思ってしまいますが、模型と復元調理の写真を合わせて紹介する事でそのイメージを何とか伝えようという思いが伝わる展示内容。実は展示を見ていくと料理の復元というテーマ以上の姿が浮かび上がってきます。それは、高遠、伊那谷の歴史を重んじる風土に支えられた、豊富に残された古文書たちが語りだす、当時の食生活、残された食文化の姿。

本展で紹介される復元料理は、食材の点からも、調理法や調味料の製造手法の点からも残念ながら何処まで行っても当時の味には迫れない(このあたりのお話は、日本の中世、近世食文化史、醸造技術史の研究をされている吉田元先生の著作をご参考頂ければ)事は明確にしておく必要があるかと思いますが、だからといって古文書に書かれた内容には些かの影響を与える事ではありません。むしろ、豊富に残された古文書に綴られた食材の数々がどのように伊那谷の山深くまで伝わってきたのかを考えると、一膳一膳の品書きと復元された献立の姿に思わず唸ってしまいます。

殿様御膳や伊能忠敬の測量隊が伊那谷を通過した際の献立(残っているのか!)、宴席での本膳の品書きなど、帳面として残されていた膳の姿が読み下し文を添えて飾られていますが、殿様御膳といっても現在の食卓の姿と比べると極めて質素なもの。しかしながら炊き合わせには松茸が添えられていたり、川魚や焼玉子、名産で献上品ともなっていた岩茸が含まれるなど、当時としてはもてなしの膳であったことがわかります。また、寒冷な土地柄を示すように干瓢、豆腐、茸、山菜、漬物など地の物や貯蔵に適する食材が積極的に使われる一方、貴重な青菜は保存して周年で用いられたと指摘されています。

そして、何よりも驚くのが魚類の多さ。川魚がふんだんに食膳に上るのは理解できますが、目を引くのは数多くの海の魚、魚介類。海苔から始まり烏賊、鰤(イナダ)、鰺、鯔、鮭に、明らかに足の速そうな鯖に鯛、更には鮪、海老!!(海の海老だけでなく諏訪湖からは小海老を取り寄せていたと)。

更には伊能忠敬達に供されたとされる献立には、学芸員の方は簡素なと評していますが、岩茸や赤魚(ハヤ)の魚てん(天ぷらか)、など山の幸だけではなく、遙か伊那谷の奥、高遠の膳に奈良漬や鯔、更には琵琶湖から近江商人の手を経て運ばれてきたと推察する江鮭(ビワマス)と、これ程の賄いが出来たのかと感嘆してしまいます(後日請求する金額もしっかり述べられていますが…人数も相応だったこともあり、流石によいお値段)。

大きな街道から外れた山里の小さな城下町というイメージを完全に払しょくする、豊かな財力を有する町民たちに支えられた藩庁と、その豊かさを物流面で支えた中馬業の発展、更には高遠の城下町でそれらの荷を継立てする際に、更に北方の松本に対しても相互に海産物の余剰品売買が行われていたことを示唆する、列島を縦断する物流ルートが構築されていたことが示されます(伊那の方々が今もイナダ(鰤)を珍重されるのは、明らかに飛騨越えの日本海ルートに通じる鰤街道からの流入があった事を示していますね)。

山間部であっても豊かな経済力を背景に物流が支えた饗応の膳。その一方で、当地から送り出される食材についても本展では語られていきます。各地から江戸表に運ばれ、公儀への献上品として、要路への付け届けとして贈られた特産品。本展が秀逸なのは、これらの献上品の集荷や帳面の史料を提示するとともに、公儀への披露を行った事を返答する老中奉書の現物も展示されている点。江戸時代の歴史にご興味のある方であれば、披見した相手が判らなくても、直筆の花押が添えられた奉書主となる老中の名前だけでも、その時代がすぐわかってしまうのではないでしょうか(此処で田沼意次の老中奉書に巡り合うとは…感涙でした)。

豊富に所蔵する古文書を駆使した近世の膳から見る伊那谷の姿を示す前半部分。後半の展示は少し詰めた形で近世以降の姿を示していきます。品書きには表れてこない、しかしながら絵図や地誌からは明確に分かる狩猟者達の存在、山仕事の食事で使われる「めんぱ」と呼ばれた、一昔前のお弁当箱にも繋がる小判型、丸形の、抱えるほどの大きさのあるご飯を入れるお櫃からアルマイトのお弁当箱に給食の食器(見学者の方が展示を見ながら自分たちが使っていたものとの違いに声を上げられていたのも印象的)。そして伊那谷という気候、風土が生み出す食の姿はB級グルメから給食と食育への想いまで。

暖かな日差しを受けて膨らみを増す、春を待つ名物の高遠桜。

今年は桜まつり開催の中止が決まり、何時もの年よりちょっぴり静かな桜のシーズンを迎える事になる春の高遠。桜を眺めた後にちょっと寄り道して、食という形の残らない、でもしっかりとその地に息づく人々の暮らしを伝える記憶に触れてみてはいかがでしょうか。

 

リフレインする柔らかなメロディとデジタルのウイットが物語の輪郭を透き通るように色付けていく「四月は君の嘘」オリジナルサウンドトラック

リフレインする柔らかなメロディとデジタルのウイットが物語の輪郭を透き通るように色付けていく「四月は君の嘘」オリジナルサウンドトラック

晩秋のある日。

少し早く帰宅した月曜の夜、偶然付けたTVの再放送から流れてきたメロディに耳が釘付けになって。

今から5年前の深夜に東京のキー局で放映されていたアニメーション作品。当時クラシックファンの間で話題となっていたことは知っていましたが、番組自体を見ることはなく全く以て忘れていた作品。今春のBD boxの発売と作品を手掛けた監督さんによる初監督映画作品公開を前にして始まっていた再放送で巡り合った作品。

サントラが好きな私にとって、その回のラストで流れてきたメロディが心を捉えて離さない。翌週の放送から慌てて録画を開始して、クライマックスを迎えた現在も見続けている作品のサントラの紹介です。

「四月は君の嘘」オリジナルサウンドトラックです。

ピアノを弾けなくなった天才ピアニストの少年と、彼にほのかな思いを寄せつつもその思いを屈折した形でしか伝える事が出来ない(理由は物語後半を動かす大きなテーマとなっていきます)バイオリニストの少女が織りなす恋愛ストーリーという、ちょっとベタなテーマではあるのですが、作品全体を通貫する主人公の周囲を取り巻く登場人物たちの真摯な想いと、二人の切ない思いに添えられる暗い影、それを和らげる様に組み入れられるシュールなギャク。原作を昇華するように美しい映像で描き込んだ若い監督さんとベテラン脚本家さんの構成力が存分に発揮された、大変高い評価を受けた作品です(私はまだ視聴中ですが、ネット配信などでは全話公開されています)。

そして、音楽をテーマにした作品に相応しい、美しい楽曲で綴られれるサントラですが、他の作品と少し異なるアプローチがなされています。

最近の作品では省略されることの多い、アニメーション作品のサントラに挿入されるライナーノーツ。本作は幸いなことに作曲の横山克氏と監督のイシグロキョーヘイ氏の対談という形で制作の背景がライナーノーツで語られています。

2枚組、全65曲という収録曲数ですが、楽曲は大きく4つのパターンに分かれます。サントラとして求められる作品のシーン描写を彩る楽曲、前述のシュールなギャクをウィットという形で表現するデジタルサウンド(作曲の横山克氏はピコピコにならないようにという発言をされていますが、最初に視聴したときはやはり「ピコピコ」でした)。そして、セルフアンソロジーとして捉えた方がよいのでしょうか、ボーカリストENAさんによる、サントラの楽曲をベースに作品をイメージしたボーカル曲。

後に作品内で登場人物たちが演奏したクラシック楽曲の作品集を複数枚リリースするなど、最初から制作する楽曲に対して強い思いを持って作られた作品ですが、私が惹かれたのはやはりメインテーマとなるメロディ。

アニメーション作品を見る楽しさは、絵と声であるのはもちろんかと思いますが、視認による認識力が弱い私にとっては、何よりも耳に伝わってくる音たちが印象を最初に左右するもの。ライナーノーツにも書かれているメインテーマとなる楽曲のメロディが、画面を見ずともすっと耳に入ってきたのが本作に惹かれた起点。そして、サントラの楽しさともいえる、メインテーマのメロディを生かして、様々なシーンへとその楽曲のイメージを広げていく、そのアレンジ展開の素晴らしさがアルバムいっぱいに溢れています。

おんなじメロディを何度も聞かされて楽しいの、という疑問を持たれることもあるかもしれませんが、作品のテーマに寄り添うようにその姿を美しく彩っていくことがサントラに求められる命題。少し物悲しくも美しい映像を引き立たせる、作品のテーマに通じるピアノとバイオリンを軸に演奏される、透明な楽曲たちが物語の輪郭を鮮やかに際立させていく。作品のテーマにぴたりと嵌ったメインテーマの秀逸さを、映像とシーンを引き立たせる様々なアレンジで聞く事が出来る嬉しさがこのアルバムには溢れています。

10月から始まった作品の再放送は、表題のように四月を前にして苦しくも悲しい最後を迎えようとしていますが、寄り添うメロディたちがどんな姿で物語と映像を包み込んでくれるのか、あと2回の放送を楽しみにしながら、日々その美しいメロディに浸っています。

博物館/美術館の展示物って撮影できるのでしょうか(八ヶ岳山麓界隈の場合)

博物館/美術館の展示物って撮影できるのでしょうか(八ヶ岳山麓界隈の場合)

一部の施設ではSNS等を利用したPR手段の一環として積極的に推奨される事もある、博物館/美術館の展示物撮影。しかしながら、著作権上の問題や様々な理由で撮影禁止の表示を出していたり、明確な表記がなされていない施設もあり、時にトラブルとなる事もあるようです。

全国でも有数の博物館/美術館の集積地帯である八ヶ岳山麓界隈でも状況は全く同じで、各施設に訪れた際に、かなり躊躇する事があります。

参考までに、これまで訪れた事のある公立施設(博物館/郷土館/考古館)の撮影の可否について、判る範囲で掲載しておきます(状況は随時変化しますので、無用なトラブルを防ぐためにも、可能な限り現地でご確認いただくことをお勧めします)。

公式な内容ではありませんので、本ページの内容を以て各施設へ問い合わせるのはご遠慮願います。現状と認識が変わっている部分があれば、御指摘頂けますと幸いです(各施設には2013~2019年の間に訪れています)。

  • 韮崎市民俗資料館
    • 撮影可能です(蔵座敷公開時に学芸員さん同伴で)
  • 小海町高原美術館
    • 展示内容によって変わるようです(北欧の灯り展は「個人的な利用に限り撮影可」でした)。安藤忠雄設計による建屋や庭、展示場所以外の屋内撮影は可能です
    • 小海町高原美術館
  • 小諸高原美術館
    • 撮影不可です
  • 南牧村美術民俗資料館
    • 民俗資料館部分は撮影可能、美術館の部分は展示内容によって変わるようです(訪問時の展示は撮影不可でした)
  • 北杜市郷土資料館
    • 撮影可能です
  • 北杜市考古資料館
    • 撮影可能です
  • 井戸尻考古館
    • 撮影可能です(大抵の場合、学芸員さんが一緒に廻ってくださいますので、ご確認ください)
  • 富士見町高原のミュージアム
    • 撮影不可です
  • 八ヶ岳美術館(原村民俗考古館)
    • 美術館部分、考古館部分を含めて展示物は全面撮影禁止です。公式HP記載の通り、村野藤吾設計による建屋に関しては撮影が許可されています。但し、屋内の撮影については展示物をフレームに入れ込まない形でも撮影前に必ず確認を取ってください(屋外で彫刻が映り込んだ場合、現状では黙認です)。企画展の際などに特例で撮影が許可される場合もありますが、利用は個人の学習目的に限られるそうです。詳しくは原村教育委員会にご相談ください
  • 原村郷土館
    • 撮影可能です
  • 尖石縄文考古館
  • 茅野市八ヶ岳総合博物館
    • 撮影の可否については係員の方にご相談ください
  • 神長官守矢史料館(未確認)
  • 茅野市美術館(未確認)
  • 諏訪市博物館
    • 第一展示室(歴史展示)は現在撮影不可です
    • 第二展示室(近代及び藤森栄一記念コーナー、片倉館からの寄贈品)は撮影可能です
    • 企画展示室は殆どの場合撮影不可ですが、連動企画などで特別に撮影が許可される場合もあります(事前告知あり)
  • 諏訪市美術館(未確認)
  • 諏訪市原田泰治美術館(未確認)
  • 市立岡谷美術考古館(未確認)
  • イルフ童画館
    • SNSコーナーが設けられており、SNSマークが表示されたエリア内では撮影、SNSへのUpが可能です。展示作品は撮影不可です
  • 下諏訪町立諏訪湖博物館・赤彦記念館(未確認)
  • しもすわ今昔館おいでや(星ヶ塔ミュージアム 矢の根や)
    • 撮影可能です

なお、此処で表記される「個人」には、解釈上としてSNS等による不特定多数に向けた発信は含まれないと理解して下さい。

岡谷、イルフ童画館のSNS撮影コーナー(武井武雄の再現仕事場)にて。

最近では美術館でも(個人利用に限り)撮影許可を出されている例も増えてきました(小海町高原美術館にて)。特に美術館の場合、許諾関係で難しい点もあるかと思いますので、訪れた際には極力図録も購入しているのですが、差し障りの無い範疇での撮影も認めて頂けると嬉しいですし、イルフ童画館のようなSNSコーナーというのも一つの妥協策かもしれません。

権利関係の厳しい企画展の展示でも、横浜市歴史博物館「道灌以後の戦国争乱」では、メインイメージの前で撮影できるコーナーが設けられていました。

長野県立信濃歴史館でも、撮影禁止マークが表示されていない展示物について撮影は許されています。

南八ヶ岳周辺の博物館・美術館の企画展情報(2019年秋冬~2020年春シーズン)2020.3.30更新

南八ヶ岳周辺の博物館・美術館の企画展情報(2019年秋冬~2020年春シーズン)2020.3.30更新

[2020.3.30更新]現在の最新状況を掲載します

 

本ページは、企画展の情報等を逃して悔しい想いを何度もしている自分の為に用意した備忘録です(地元に住んでいても情報は全然入って来ませんし、今日までで終了の企画展でも気が付けなかったものがいっぱいある…涙々)。私自身が訪れた事のある施設を中心に掲載しておりますので、かなり偏った掲載内容になっている点はご容赦ください。

情報のソースは各施設、観光案内施設やショッピングモールなどで配布されている展示会の公式パンフレット、地元新聞社、放送局による紹介、SNS等による発信内容を用いていますが、最終的な確認については各施設のホームページ掲載内容に基づきます。

なお、南八ヶ岳周辺にある各施設の概要についてお知りになりたい方は「八ヶ岳ミュージアム・リング」(八ヶ岳ミュージアム協議会)という公式サイトがありますので、そちらをご覧ください(但し、更新頻度が極めて低く、企画展などの情報もありません)。

【八ヶ岳東麓(小海、野辺山方面)】

  • 小海町高原美術館
    • 国道141号線、松原湖交差点から松原湖方面へ10分(松原湖から5分ほど)。タクシー、バスをご利用の方は小海線の小海駅から(バスの本数は僅か)。広い駐車場がありますが、お隣の日帰り温泉と共用の為、シーズン中や新海誠監督関連のイベント開催時は混雑します。4月3日まで冬期休館です
    • 開催中の企画展 :
    • 今後の企画展 : 口から入って、届くまで 東条真之介(2020/4/4~6/1)
      • オープニングレセプション4/4(土)
      • ギャラリートーク5/30(土)
    • 過去の企画展 :北欧の灯り展(2019/9/7~2019/11/4)
      • オープニングセレモニー9/7(土)
      • 企画者による講演会9/8(日)小海町高原美術館
  • 南牧村美術館民俗資料館 
  • 国立天文台 野辺山
    • 国道141号線、JR最高地点にある看板の指示に従って小海線の側道を直進、突き当たりの踏切を渡って(右側の道)2分程。小海線、野辺山駅からは徒歩20分ほど。駐車場有。3/7(土)より屋外の一般見学ルートを含めて公開中止中です
    • 現在開催中の企画展 : 4次元デジタル宇宙シアター(4D2Uシアター)12/7から3/28までの冬季上映は、年末年始以外の毎週土曜に3回、各回定員30名で先着順です

【八ヶ岳南麓(清里、長坂、大泉、白州方面)】

  • 清泉寮やまねミュージアム
    • 中央道、長坂インターから五町田の信号を左折して県道北杜八ヶ岳公園線を清里、八ヶ岳高原大橋方面へ北上、八ヶ岳高原大橋を越えて登坂車線付きの道を登った先にある「清泉寮」方面看板の指示に従って進む。国道141号線方面からは清里の交差点を越えた先の、清里トンネル東交差点を八ヶ岳高原道路方面へ左折、清里トンネルを抜けた先にある同じ看板の指示に従って進む。清泉寮の向かい側にある、県立八ヶ岳自然ふれあいセンターの奥にあります。小海線、清里駅からは観光周遊バスが利用可能です。駐車場は清泉寮もしくは県立八ヶ岳自然ふれあいセンターを利用。11/1から冬季シーズンのため、開館日は金・土・日・月(及び祝日、年末年始)のみとなります
    • 開催中の企画展:
    • 過去の企画展 : 開催中の企画展はありません。次回のギャラリートーク「研究員に聞け! 冬の巻」は、ヤマネの冬眠期間中となる来年2/9(日)です
  • 清里フォトアートミュージアム
    • 国道141号線、丘の公園交差点を入った先ですが、ルートがやや複雑なので、心配な方はナビへの入力ないしは、事前に地図をご用意の上で、お越しください。駐車場有。当面の間、休館となります
    • 今後の企画展 : 2019年度ヤング・ポートフォリオ(4/1~6/14)
    • 過去の企画展 : 山本昌男「手中一滴」展(2019/10/5~2019/12/8)
      • 出展者によるアーティスト・トーク10/26(土)
    • 過去の企画展 : ロバート・フランク展-もう一度、写真の話をしないか。(2019/6/29~2019/9/23)
      • ピーター・バラカン Live DJ「ロバート・フランクの写真・アメリカ・それから」9/21(土)
  • 北杜市考古資料館
    • 中央道、長坂インターから五町田の信号を左折して県道北杜八ヶ岳公園線を清里方面に北上、若林交差点を小淵沢方向に左折、旧大泉村役場跡の向かい側にある図書館を過ぎた先の交差点を看板の指示に従って谷戸城跡方向に左折して1分程。中央本線、長坂駅から市民バスも利用可能ですが本数は僅か。駐車場はありますが10台未満。臨時休館中です
    • 開催中の企画展 :
    • 過去の企画展 : 「黒き星のかけら~黒曜石と八ヶ岳山麓の縄文世界~」(2019/10/26~2020/1/26)
      • ギャラリートーク : 11/2(土)、12/14(土)、1/19(土)
      • 講演会「八ヶ岳山麓の縄文遺跡を中心とした黒曜石ネットワーク」11/24(日)
    • 過去の企画展 : 共同企画展「ワンダフルジャーニー 星降る八ヶ岳山麓の縄文文化」(2019/7/6~2019/11/24)
  • 北杜市郷土資料館
    • 県道17号線七里岩ライン、長坂駅手前の信号を小淵沢方面に入りガードを潜った先の交差点を白州方面へ左折、谷筋を越えた先にある「清春白樺美術館」の案内看板が出ている交差点を右折してすぐ。国道20号線方面からは台ヶ原中交差点を曲がって峠道を登り切った先にある前述の看板に従って左折してすぐ(清春白樺美術館の向かい側)。中央本線、長坂駅から市民バスも利用可能ですが本数は僅か。駐車場有、満車の場合は向かいの清春白樺美術館の駐車場も利用可能。臨時休館中です
    • 開催中の企画展 :
    • 過去の企画展 : 「動物の神様」(2019/7/13~2019/10/27):終了
      • ギャラリートーク : 9/14(土):終了、10/13(日):終了
      • 講演会「御坂のニホンオオカミ頭骨と甲斐周辺の狼信仰」10/6(日)
  • 北杜市オオムラサキセンター
    • 県道17号線七里岩ライン、日野春陸橋を越えた先にあるオオムラサキセンター交差点を曲がってすぐ。中央本線、日野春駅から徒歩1分。駐車場有
    • 開催中の企画展 :
    • 過去の企画展 : 特別展「太古の虫たち」(2019/9/10~2019/12/27)
  • 藪内正幸美術館
    • 国道20号線、鳥原の交差点を曲がって、サントリー白州蒸留所へ。工場に入る手前の交差点を左折、200m程先にある案内看板に従って右折して1分ほど。バスは韮崎駅から国道20号線経由の下教来石行きに乗車して松原下バス停で下車、もしくは小淵沢駅から発着するサントリー白州蒸留所行きの見学バス(3月~11月の主に土曜休祝日とGW、夏休み中の運行)に乗車して工場から徒歩、いずれも15分ほど。駐車場有。
    • 開催中の企画展 : 2020年前期企画展「鷲・鷹・梟」(2020/3/20~2019/7/14)
    • 過去の企画展 : 2019年度後期企画展「おなじみのどうぶつたち」(2019/7/20~2019/11/30)

【八ヶ岳西麓(富士見、原村、茅野、諏訪方面)】

  • 神長官守矢史料館
    • 中央高速、諏訪インターを降りて右折、陸橋脇をビーナスライン方面に入ってすぐの荒井交差点を右折、突き当たりの高部東交差点を右折して1分ほど、高部交差点の先。中央本線、茅野駅からバスもあり(茅野駅から徒歩でも行く事は可能ですが、お勧めしません、凡そ40分)駐車場はありますが、数台に限られます
    • 開催中の企画展
    • 過去の企画展 : 守矢文書に見る 改元・元年の古文書(2020/1/4~2/11)
  • 諏訪市博物館
    • 中央高速、諏訪インターを降りて左折、飯島交差点を諏訪大社方向に左折して5分弱、諏訪大社上社本宮正面。中央本線、上諏訪駅からバスもあり(茅野駅から徒歩で行く事も可能ですが、お勧めしません。凡そ45分)。駐車場有。
    • 開催中の企画展 :
    • 過去の企画展 : 企画展「仏法紹隆寺-諏訪の真言道場 古刹の歴史-」(2019/9/14~2019/11/24):終了
      • 講演会「仏法紹隆寺の仏像-普賢菩薩騎象像と不動明王立像について-」10/13(日)
      • 展示説明9/15(日)、10/12(土)
  • イルフ童画館
    • 中央高速、岡谷インターから下諏訪方面へ向かい、岡谷インター東交差点を岡谷方向へ曲がって5分ほど、イフルプラザ内。中央本線、岡谷駅からは徒歩3分。駐車はイルフプラザの市営立体駐車場(5時間まで無料)へ
    • 開催中の企画展 : 武井武雄 七つの顔展(2020/2/29~4/20)
    • 過去の企画展 : 黒井健 絵本原画展(2019/12/21~2020/2/24)
    • 過去の企画展 : 加藤休ミ展 おいしい たのしい クレヨン画(2019/9/28~2019/12/16)
      • 読み聞かせと演奏会、サイン会10/14(月・祝日)
    • 過去の企画展 : うらしまたろう展 あんな浦島 こんな乙姫(2019/7/20~2019/9/23):終了

他にもご紹介したい施設は沢山ありますが、とりあえず此処まで。

土曜の夜に美術と建築の楽しさを教えてくれた19年間に感謝を(遂にリニューアルを迎える「美の巨人たち」)2019.3.31

土曜の夜に美術と建築の楽しさを教えてくれた19年間に感謝を(遂にリニューアルを迎える「美の巨人たち」)2019.3.31

昨夜の放送で、何の前触れもなく次回からのリニューアルが伝えられた、テレビ東京系で放送されている「美の巨人たち」(以前の番組紹介はこちらのアーカイブサイトのアドレスにリダイレクトされています)。

先週の予告から疑問を抱いていた、何でこのタイミングで広重なんだろう、しかもテーマは東海道五拾三次の終点、京都という不安。番組が始まると更に正蔵が広重役を請け負うとはちょっとおかしいなと思いながらラストに至って確信を得た後の予告。

2000年4月から始まった放送が20年目を前にしてあっさりとリニューアルと言う形で終焉を迎えた瞬間。呆気にとられて暫し思考停止となった中でSNSを眺めはじめると、視聴されていた多くの皆さんも同じように動揺を隠せないコメントを残されていたのがとても印象的でした。

思えば、今シーズンは久しぶりにモデュロール兄弟が登場していましたし、絵画警察でも不穏なセリフが述べられたり、年が明けてからも奇妙なタイミングで若冲の特集とちぐはぐなイメージが付きまとっていましたが、やはりと言うべきか遂にと言うべきでしょうか、その時が来たようです。

落ち着いた時間が流れる土曜日夜の放送、酒類会社による一社提供番組(実際にはスタート時は異なりますし、最後の2年間は2社提供)。小話を多用したスタイルや、専門家を立てての我々が知らない見方、考え方を教えてくれる構成。知的好奇心の高い若い社会人層をターゲットにした設定。更には番組末期に行われた番組の若返り、若者や女性層へのアプローチを狙った番組内容のライト化と出演者の追加。その姿は終了間際のちぐはぐ感までも含めて、少し前に終了した東京FM系列(JFN)で放送されていたSuntory Saturday Waiting Bar AVANTIとそっくりであった事が判ります(AVANTIの最末期も構成分割しての実質2社提供でしたね)。

数々の小話を彩って来た名シリーズ(絵画警察、モデュロール兄弟、桜子さん…etc)、出演者たちの舞台も喫茶店や古書店など、大人の雰囲気を漂わせる少しノスタルジーを感じさせる雰囲気を作り出す事に注力していたように思えます。

そして、少しエッジが効き過ぎて滑る事もままあった小話を引き締めて、美の鑑賞へと誘ってくれる、落ち着いた小林薫さんのナレーション(時には出演者たちを宥めたりも)は、19年に渡る番組のイメージを決定付けていたように思えます。

番組を彩り、美術鑑賞と建築の妙を伝えてくれた数々のギミック(ラストシーズンには制作者のご紹介もあったAOKIT、大好きでした)。豊富な経験が生かされた海外ロケーションでは、他の番組が取材しても叶わないであろう貴重なシーンの撮影も数々であったかと思います(作者を演じる事になる現地での出演者さんとの調整も大変だったのではと)。

更に、前述のAVANTIではないですが、この番組が誇る選曲の素晴らしさ。手元にある500回記念の際にリリースされたアルバムのライナーノーツを書かれているのは、何と初代のプロデューサーの方。その伝統が番組の根底に脈々と受け継がれているのは、番組のHPで毎回使用されたBGMのタイトルとアルバム情報が掲載され続けている点からも明らかかと思います(番組終わった後で楽曲チェックするのも楽しみでした)。

良質な音楽に乗せて、限られた時間の中で一つの作品を楽しくも丁寧に解説してくれる、貴重な土曜夜の30分間。特に美術作品の紹介はEテレの日曜美術館(時に作品が寸でのタイミングでバッティングする事も)もありますが、建築関係の作品が紹介されるのは殆ど唯一と言っていい番組(それだけに、モデュロール兄弟がライトな建築ファンに与えた影響は絶大だったはずです)。

私自体もこの番組が無ければライトの作品もコルビュジエにも興味を持たなかったかもしれませんし、自由学園、聴竹居や日土小学校を知る事も無かったでしょう(末期には次回が建築関係の放送と知ると、何時も録画スタンバイ状態でした)。絵画でも、ほとんど知識が無かった近代アメリカの作家たち、ホッパーやフュークス、モーゼスが大好きになったのも番組のおかげです。

そして、何時も写真を撮影している御射鹿池をモチーフにした「緑響く」しか知らなかった東山魁夷の作品を観るために東山魁夷館(長野県信濃美術館)に赴き、彼の絶筆となる「夕星」に出逢い、唐招提寺の襖絵、ヨーロッパ取材旅行の作品に圧倒され、すぐ近くに作品が収蔵されている事すら知らなかった犬塚勉の作品を観る機会を得られたのも、この番組、放送を観る事が出来たおかげです(放送翌週の週末、作品が収蔵されている旧日野春小学校の校庭が県外ナンバーの車で埋め尽くされていたのを観て、番組の影響力の大きさと視聴者の皆様の旺盛な行動力に驚きました)。

久しぶりに番組のアルバムを聞きながら、数々のシーンを思い出す夜。

一社提供番組と言う豊穣な世界が生み出したその姿は、美術館に飾られた絵画の如く、視聴者の皆様の番組への深い想いと共に、時代のワンシーンへと収められていくようです。

次回予告で登場された出演者の皆様や次のテーマ選曲を拝見すると、正にEテレがそのまま移ってきたかのようなラインナップと構成となるリニューアルにちょっと驚きながら。でも、テレビ東京の前身と制作会社(日経映像)を考えれば、制作サイドとしてはお互いに影響を与え合う程に両者は極めて近い間柄にある事も事実(日曜美術館の方は4月からアシスタントが柴田祐規子アナに変わって、2年目となる小野正嗣さんの趣向がより前面に出て来そうですね)。

その前身の姿を今に伝える貴重な枠が、土曜の夜と言う誰もが視聴しやすい時間帯で継続してくれたことにまずは安堵しながら。リニューアルした番組がより楽しく、美術と建築を理解するための入口としての役割を果たし続けて下さることを願って。

素敵な番組を届けて下さったスタッフの皆様と、19年に渡って土曜夜の一時を穏やかなナレーションで紡ぎ続けて下さった小林薫さんに感謝を。

15年の時を経て再びライチョウの展示を開始した大町山岳博物館へ(2019.3.17)

15年の時を経て再びライチョウの展示を開始した大町山岳博物館へ(2019.3.17)

今月の15日から全国5箇所の施設で開始された、人工孵化、飼育のライチョウ公開。

これまで動物園で観る事が出来なかった高山に住むライチョウの姿を一目見ようと多くの方がこの週末に動物園を訪れたようですが、その中で少し異なった雰囲気での公開を迎えた施設があります。

昼前になって時折吹雪き始めた、大町市にある市立大町山岳博物館

今回公開を迎えた施設の中で、唯一2004年まで長期に渡る低地での繁殖活動を実施していた場所。2015年から開始された域外保全活動に於いて、環境省の支援の元で再び繁殖活動を再開、実に15年振りの再公開を迎えました。

雪雲の下に沈む大町の市街地を望む、博物館3階の展望デッキより。

お天気が良ければ、北アルプスの大パノラマが楽しめる格好の場所(写真撮影用にレンズを外に向けられる小窓が付いています)なのですが、残念ながら今日は雪雲の中。

そして、シーズンオフのこの時期ですと数台の車がぱらぱらと止まっているだけの筈の駐車場が…実は建屋の裏側まで満杯に。吹雪の中、スタッフの方が誘導に走り回るという驚きの光景を目にする事になりました。

今日は、今回の公開再開を記念して開催された特別講演を聴講にやってきました。

講師は本邦初(ご本人談)のライチョウ研究で学位を取得した小林篤氏。ライチョウ研究の第一人者、中村浩志先生と共に研究されている方で、昨年刊行された「ライチョウを絶滅から守る! 」(しなのき書房)の共著者でもあります。

他の施設と大町山岳博物館が大きく異なる点、それは地元北アルプスの自然を象徴する鳥であり、前述のように過去にも長く(20年以上)に渡ってこの場所を拠点としてライチョウの低地における飼育に挑戦していたというベースを市民の皆様が共有されている事です。

今回の講演会もその中核を担う山岳博物館の会員組織(山博友の会)の皆様が会場運営に当たり、聴講する側も県が活動を展開するライチョウサポーターズの皆様等、熱心な方々が多く集まられたようです(参加者の年齢層が広く、何より女性の方が多いのに驚きました)。

地元報道各社の取材が入り、定員80名が満席となる盛況の中で行われた講演。内容自体は前述の著作を読まれた方であれば御承知の内容が殆どかと思いますが、南アルプスで行われているゲージ保護の動画が紹介(雛たちが殆ど人手を介さずに連なって自らゲージに戻っていく)されると、会場から一斉に歓声が上がっていました。

ライチョウの生態とこれまでの活動の推移を示した後で、直近の保護活動、人工繁殖に極めて大きな示唆を与えることになる、親の盲腸糞から腸内細菌を雛が取り入れている事を確認した最新の報告まで、丁寧な解説がなされていきましたが、今回の講演会で少し驚いたのが、講演後の質疑における演者の方が述べる率直な見解の数々。

質問される方も流石に良くご存知のようで、スライドには用意されない最直近の話題、しかも当事者としては微妙な問題が含まれる内容だと思うのですが、自らの見解としてはっきりと述べて下さったのは、とても好感が持てるところでした。

  • 中央アルプスで発見された個体は北アルプスに生息する群である事は把握できているが、実際にどこから飛来したかはわかっていない(多分乗鞍岳だろうと)
  • 中央アルプスへの移植については今後の検討に委ねられる(中村先生は実施したいと考えている)。現行の活動は5年計画で本年度で終了する事になっている
  • 火打山でのイネ科植物の除去については、当該群の生息数が極めて少なく、標高が低いという特殊な場所故の施策であり、火打山以外で実施する予定はない
  • ライチョウの生息群全てが絶滅に瀕している訳ではない。北アルプスの群は比較的安定ているが、特にゲージ保護を行っている南アルプスの群は減少が著しく、このままであれば絶滅する可能性がある
  • 南アルプスの群が減少している理由はゲージ保護を採用した理由である捕食者の影響もあるが、高山植物の減少、特にシカの食害が著しい。但し、全ての高山植物が激減している訳ではなく、巷間に伝えられるような話は登山道沿いなど限定的(それほどでもないと。サルのライチョウ捕食写真の件を含めて、少々センセーショナルに扱われているというニュアンスを演者の方から感じました)。もう一つはより大きな話なので、と
  • (山小屋周辺での捕食者を捕える罠の設置を認めるなど)国立公園は石一つ葉一枚動かさないという環境省のスタンスは徐々に変わりつつある
  • 腸内細菌のうち、有用な菌の分離、精製が出来ないか研究を続けている(宮野典夫前館長だったと思いますが、博物館側からの補足として、飼育個体でも雛の段階で親鳥の糞を食させる検討をしていると)。これが出来ないと、飼育個体を自然に放鳥した時に自然の食性に対応できなくなる恐れがある(朱鷺とは違う)。こちらの研究は今後にご期待くださいとの力強い発言も

館内の2階にある、この博物館が長年手掛けてきたライチョウ飼育、研究の経緯を辿るコーナーに新たに設けられた、現在のフィールドで保護、研究活動の全般を紹介するボード。今回ご紹介されていた内容が解説されています。

今回公開が始まったライチョウは、博物館の裏側にある付属園で飼育されています(こちらの付属園への入場は無料、館内の展示を見学する場合は入場料が必要です)。

雪が舞う中、付属園のスバールバルライチョウ舎の前で、講演会参加者の皆さんに説明する大町山岳博物館の館長さん。

ちょっとおネムのスバールバルライチョウ。

別のタイミングで撮影した1枚。ライチョウ飼育の事前検証の為に飼育を開始したこちらのスバールバルライチョウですが、ライチョウと見比べて違いが判るでしょうか。

そして、以前は飼育員さんの作業用プレハブ小屋が建っていた場所に、こんな立派な展示用飼育舎が建ってしまいました(驚)。奥の大きな建屋が、展示用の飼育舎です。

見学入口にはこのように域外保全活動の取り組みを示す解説板が用意されています。

この奥が展示場所なのですが…えーっと、他の展示施設の写真などを拝見していると、共通する展示場所のセンスには発注主様の…(以下自主規制)。

窓の向こうに雪が降る中、沢山の見学者に見つめられて落ち着かないのでしょうか、時にゆったりとポーズをとってくれるスバールバルライチョウに対して、右へ左へと忙しく動き回る、1羽だけ展示される事になった人工孵化から飼育されているライチョウの雌。

彼女の前途に、再び北アルプスの峰々を優雅に歩くライチョウ達の姿が見られる日が来る事を願って。

今回の人工孵化個体の公開は、環境省の主導日本動物園水族館協会との協定に基づき5箇所の施設で同時に実施されています。

大町山岳博物館での展示は、当面の間は毎日11時から15時までです。

もし機会があれば、お近くの施設で是非ご覧頂き、四季を通じて姿を変えていく愛らしい姿とその向こうにある彼女たちが生活する生息環境にも、少し思いを巡らせて頂ければと。

彼らが住まう南アルプスの麓より、今年の繁殖も成功を願って。

縄文の街で映画「縄文にハマる人々」を(私だけの自分を映し出す1万年のドキュメント)2018.11.25

縄文の街で映画「縄文にハマる人々」を(私だけの自分を映し出す1万年のドキュメント)2018.11.25

New!(2018.11.26) : 今週末30日からの岡谷での上映が決定したようです。縄文を熱く語り続ける人々の言葉を是非スクリーンで。

今年は国宝土偶や各地の土器を一挙に集めて国立博物館で開催された縄文展に多数の来場者が押し掛け、マスメディアや書籍などでも多くの縄文に関するテーマが扱われた年でした。

主に美術やサブカルチャーサイドで大いに盛り上がった「縄文ブーム」とも呼べるムーブメント。その一方で苦言を呈される論調も出てくるのは、このテーマがより普遍的に扱われるようになってきた証拠。そんな中で登場したこの作品、パンフレットのデザインやPR内容からは正に今回のブームの落とし子のような感触を受けますが、果たしてどうでしょうか。

茅野駅に直結する形で建てられた、美術館とホールを兼ね備えた茅野市民館。

公開から4ヶ月を経た11月末の連休最終日。松本で映画上映活動を続けているプロジェクトが茅野に出張上映する形で実現した、映画「縄文にハマる人々」を観に、八ヶ岳南麓から足を延ばしてやってきました(とは言っても、茅野へは日常的に行き来しているのですが)。

収容780席を誇る、近年のミニシアターに慣れた人間からすると驚きの大ホールですが、2回公演の1回目で日曜日の朝10時開演と言う事で、観客は100人少々とこじんまりとした入り。多くは年配の方々ですが、如何にもな方もちらほらと…という形で上映スタート。

102分の上映時間の後に舞台に上がった、監督である山岡信貴さんのトークが30分ほど続きましたが、大変残念なことにトークの間もぱらぱらと席を立たれる方が続く状態に。12時には終わるだろうと踏んでいた方が多かったようなのでそのギャップからとも思われましたが、縄文文化の本拠地を自負するこの街の皆様とその上映内容のギャップもやはりあったようにも感じられます。

トークで述べられていたように監督は縄文遺跡や文化とは縁遠い、奈良県の出身。本作の制作も、何れ使えるだろうというスタンスによる折々のインタビュー蓄積の過程から映画化を視野に入れ始めたと述べられており、当初から本作を作るために取材を重ねてきたわけではない事を認めています。

13章に分けて、26人の「縄文」を自らのテーマとした人々の語りで、それこそあらゆる角度から「縄文」という認識を積み重ね確認していく、極めて真っ当な自己検証型のドキュメンタリー。そこには、縄文ブームに乗るかのようなカラフルなポスターや紹介されるコメントとは全く異なる、彷徨いながら帰着点を探す、制作者が自らに課したテーマを辿るロードムービーが描かれていきます。

自らの考え方、縄文への想いをそれこそ滔々と語り続ける登場人物達と対極をなす、水曜日のカンパネラ、コムアイさんの高いキーで甘く乾いたナレーションに乗せて響く、デジタルな傍観者としての醒めた視線。まるで縄文をテーマにしたドキュメント72時間を観ている気分にさせられる時間が過ぎていきます。次々と登場する方々が語る内容に、「縄文の」文化や考古学、「縄文」をモチーフとしたテーマにご興味を持たれている方であれば、余り疑問を持たれないかもしれませんが、その範疇の外にある制作者の視点は、熱っぽく語る彼らの話を積み重ねてもなお、疑問を抱えたままに進んでいきます。その疑問は縄文文化の核心とも称されるこの地に住む私にとっても依然として溶けないもの。解のない問題を解き続け、答える事のない世界に対して向けられる、如何にも解でありそうな事を事実であるとして語り、時に学問として述べ続ける事に対する素朴な疑問。

制作者の視点は上映後のトークそのままに、ラストカットに添えられた映像で表現されるように、作品中で常によろよろと揺れ動き続けているようにも見えますが、終盤に向けて徐々にピッチを伸ばしながら、キャッチーなフレーズのナレーションを減らしながら探し続けた着地点は映像作家らしい、言葉では届かないものとしての、自らが縄文からインスパイアされた現代を映し出す映像詩。

その結論に対してはご覧になられた方によって色々な意見があるかと思いますが、辿り着いた事を示す際に添えられた「言葉では届かない」というイメージとは真逆の、登場されてきた方々が雄弁に述べる言葉の数々を聞き続けてきた中でふと思った事。

縄文に魅せられ、縄文をテーマにされる方々が語るほどに「言葉では届かない」その先に、私にしか見えない、私だけの自分を映し出しているのだという感触。その中の一つとしての、制作者が縄文というテーマの向こうに、映像作家としての自らの世界を映しだすまでのアプローチを綴った作品だと思えてきました。

一万年の過去から未来まで、私だけの思いを私の形で映し出せる、時の向こうにあるもう一つの世界の入口へ。