映画「この世界の片隅に」(2016.11.20)

映画「この世界の片隅に」(2016.11.20)

New!(2018.7.26) :

もう一つの片隅の物語がいよいよスクリーンに『この世界の(さらにいくつのも)片隅に』12月公開予定です。

 

New!(2017.2.3) : 公開からまもなく3ヶ月を迎える2月3日、これまでの観客動員130万人到達を記念して、新たに収録されたすずさんのナレーションによる、感謝を込めた「“すずさんのありがとう”動画』の公開が始まりました。どうぞご覧下さい。そして、宜しければ映画館に足を運んでくださると嬉しいです。

New!(2016.11.23) : 11/12から公開が始まったこの映画、次のプロジェクトとして海外展開が発表されていますが、作品紹介の為に監督を海外に送り出すためのクラウドファンディングが開始されました。

作品にご興味があり、趣旨にご賛同の方は、是非ご一読を(この文章を書いている時点0:10)で既に達成率80%を越えそうな物凄い勢いです)。

 

<本文此処から>

晩秋にしては妙に暖かい、土曜夜の立川。

何か、ぼーっとしたまま駅に向けて足を進める私の頭の中は、まだぐるぐるとこの2時間で起こった出来事が廻り続けている。そして、この文章を書いている今も、廻り続ける旋律は止まらない。

あれは何だったんだろうか、と。

まだぐるぐる回っている、自分自身の呟き。

制作支援メンバーとして、本ページのサイドバーに宣伝を載せている割には恥ずかしながら、クラウドファンディングに参加した際も原作の内容を知らず(上映見るまで原作も読まず)、監督に至っては、その作品性とは正反対の世界で著名かつ、世界名作劇場のファンとしては複雑な想いを抱いていた方だったので、かなりの躊躇があったのは間違いありません。

唯、なかなか世に出にくい、誰でもが観る事が出来る作品がアニメーション作品として世に出るために必要な、ほんの僅かな後押しをしたかっただけだったように思います。

でも、作品を観た今なら言えます、ほんの僅かでもその輪に繋がる事が出来て良かったと。

この世界の片隅に、クラウドファンディングお礼品クラウドファンディング参加者(制作支援メンバーズ)に送られたすずさんからの手紙と、メンバーズミーティング資料(残念ながら、遠方ゆえに参加できず。今回はあずさに乗って日帰りで)。

作品の内容は、あらゆる場所で述べられているかと思いますので、改めてこのページで述べる事はやぶさかかと思います。

こちらに掲載されている紹介記事を参考例として挙げておきます(他にもたくさんありますね)。

議論になっている部分や、セリフが入れ替えられた部分には、確かに映画を見ている際にも少し唐突感がありましたが(やはり原作未読でも判るところは判るのですね)、そこは、全体のストーリーとして監督が描こうとしているスタンスに則ったまでの事。

この世界の片隅に絵コンテ本とパンフレットある一人の女性が、色々な人と巡り合いながらも少女から大人の女になっていく物語は、営々と続けられる朝の連続テレビ小説そのものだと思います。ただ、一つだけ違う事、それはアニメーションとして、そして絵の中という本来虚構の世界ゆえに、更に現実に繋ぎこむために史実として、いえ、その時代を生きた方がいらっしゃる最後のタイミングで捉えられた事実を描き込みながら、物語の主人公であるすずさんが暮らしていた世界を築き上げた点。優しいBGMと温かみのある絵柄を用いて、観客を史実と物語の狭間に自然に誘ってくれる点に、最大の魅力を感じています。

細やかな人物描写、戦中に向けて厳しさを増し、少しずつ変わっていく日常を実に丹念に描く(それでも尺を詰めたと明確に判る部分があるのは、制作上やむを得なかったようです)その演出には、この世界にそのまま浸ってしまいたいと思わせる包容力を秘めています。少しおっとりしたキャラクターのすずさんのしぐさが起こす、時にくすっと笑わせるエッセンスを織り込む事も忘れていません。徐々に生活に慣れて、少し楽しみながらも、乏しくなり続ける資材や食料を色々と工面して乗り越えていこうと知恵を働かせ、近所の人々と協力して暮らしていく、すずさんや登場者達のコミカルな作劇には、大きな流れとは別に、そのような穏やかな時が、戦中、しかも軍都、呉を舞台にした人々の暮らしの中にもあった事を呼び起こしてくれます。

戦時下の薄暗い照明の室内や、日差しをいっぱいに浴びてスクリーンが客席を照らし出すほどに明るく描かれる夏の日。穏やかな瀬戸内海、軍艦が浮かぶ呉の海を遠望する山並みの美しい景色など、緩やかに移り変わる物語の世界にどっぷりと浸り込んでいると、突如、音響(特に鑑賞した立川のシネマシティは特別に音響調整がされていたようで、単なる迫力とは違う、むしろBGMに合わせた、ちょっとウエットで柔らかい音響)と監督がもう一つ得意とする真実味のある演出で、いきなり現実の世界に引き戻されます。場内を閃光で包む光と、その後に遅れてやって来る振動、激しい爆音、轟音、そして立ち昇る雲。本作品のもう一つの魅力であり、トラウマにもなりかねない、事実を突きつける厳しい場面が後半になると繰り返し押し寄せ、主人公のすずさんでさえその現実から逆らうことを許されません。女性原作者らしいといえば失礼でしょうか、自らに現実を突きつける事に対して妥協を許さない、それを乗り越えてもなお、日々が続いていくという事を自覚させようとする作品のテーマと、それをアニメーションならではの演出手法で表現しようとする演出、監督(ご夫婦です)。その厳しさに、館内のあちこちから、すすり泣く音すら聞こえてくるほどでした。

それでも、突き放す様な最後ではなく、その先に繋がる想いを示してくれるラストシーン、そしてエンディング(監督のオリジナルだそうです)へと繋がる物語には希望の色が色濃く描かれていきます。絶望する時も、悲しむ時もある。その原因が自らにある時、やりようのない想いを抱き、もう終わってしまいたくなる事もある。そんな時、自分の横に支えてくれる人がいて、周りのみんなが気に掛けてくれている事に気付いた時、まだ生き続けられると思える。繋がりを持てることは、他の人に対してもその優しさを分け与えてあげる事が出来る。

この作品を見て、もう遅いかもしれないけれど、そんなふうに、強く、しなやかに生きてみたい、そんな想いがしてくるのです。

この世界の片隅に、パンフレットのクラウドファンディング参加者リストパンフレットの最後に掲載された、製作委員会のリストとクラウドファンディングに参加された皆さんの名前リスト(エンドロールでも流れます)。

制作が実現した最大のキーとなった出資社さんのライバル新聞社の記者さんがこぞって公開前、更には公開後にも好評価を与える記事を書いているて事(普段は、お互いを貶しあうような某社さんでさえ)に、エンドロールの製作体制を観て改めて驚いたと同時に、この作品なら誰にでも観て欲しいと思わせる、素直に推せると思わせる魅力がある事は間違いありません。

決してドラマチックでも、アクションや華やかな恋愛模様もない地味な作品です(そのような意味で、往年の世界名作劇場のトーンも感じさせます)が、所謂新聞購読層と見做させる高齢者向きのノスタルジーな作品という訳ではありません。

一部の紹介で高年齢者が多く…と書かれていますが、実際に観に行った、土曜の夜に上映された満席の立川ではむしろ、お子さんを連れた家族、カップル、そして上演直前に続々と入ってくる女性の皆さんが目立つという逆のシチュエーション。

観て楽しいという作品ではありませんが、観て良かったときっと思わせる、前を向きたくなる、そんな世界がスクリーンと劇場に広がる作品でした。

そして、その世界の片隅にほんの僅かばかりでも繋がる事が出来た事に、素直に喜んでいます。

映画「この世界の片隅に」

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今月の読本(特別編)映画「ちえりとチェリー」とノベライズ版「ちえりとチェリー」(中村誠、島田満:共著 伊部由起子:絵 角川つばさ文庫)

今月の読本(特別編)映画「ちえりとチェリー」とノベライズ版「ちえりとチェリー」(中村誠、島田満:共著 伊部由起子:絵 角川つばさ文庫)

New!(2018.11.29):映画公開から3年、遂に全国のイオンシネマで拡大上映が行われる事になりました。いちファンとして、クラウドファンディングの応援メンバーとして、是非この機会に映画館に足を運んでいただければと思います。

New!(2015.10.1):映画ちえりとチェリーの公式サイトがリニューアルしました。

Chieri and Cherry top2

依然として劇場公開情報は掲載されていませんが、プレイベント的に東京国際映画祭での公開が決定しました。詳細は公式サイトにて。

 

いつも本ページで扱っている書籍とは異なるスタイルの作品のご紹介です。

本ページのサイドバーでご紹介している、映画「ちえりとチェリー」。

日本では数少ないパペットアニメーション(人形アニメ)制作者でもあり、脚本家、グラフィックデザイナーにして、大手アニメーション企画、制作会社のプロデューサーでもある中村誠さんによるオリジナルパペットアニメーション作品。

先般、一般公開に向けたクラウドファンディングで無事に目標額に到達、スローシネマという新しい興行形態で全国を巡る劇場公開が実現することになりました。

今回ご紹介するのは、本作の劇場公開を前にノベライズ版として刊行された一冊です。

文庫版ちえりとチェリーちえりとチェリー」(中村誠、島田満:共著 伊部由起子:絵 角川つばさ文庫)です。

この角川つばさ文庫というシリーズ、本ページをご覧頂く方には馴染みのないレーベルかもしれません。

数多くのレーベルを抱える角川グループが刊行するノベライズのうち、最も低年齢層向けに用意されたレーベルがこちらのつばさ文庫。本文の漢字にはすべてルビが振ってあり、文字サイズも大きめ、イラストもふんだんに載せられている、主に小学校中学年までの読者を想定した作品群が収められたレーベルです。

所謂ジュニア文庫と呼ばれるジャンルの中でも低年齢向けと見做されるレーベルの一冊ですが、執筆者の皆さんはそんな作品の執筆陣とはちょっと毛色の違ったメンバーが集まっています。

メインライターの中村誠さんは、映画版の原作者にして脚本と監督を担当。ロシアと共同で製作したチュブラーシカのリメイク&新作版の監督と言えばご存知の方もいらっしゃるかもしれません。もしくは、アニメファンの方には賛否両論を巻き起こした劇場版AIRとCLANNADの脚本家と言った方が判りやすいかもしれません。

そして、もう一人の執筆者は島田満さん。映画版でも共同で脚本を手掛けられていますが、アニメーションを中心としたキャリア数十年のベテラン脚本家(女性です)。Drスランプ、うる星やつら、るろうに剣心といった往年の名作から、初期のワンピースやドラゴンボールといった大タイトルの脚本を数多く手掛ける一方、劇場版アンパンマン(2作品)、世界名作劇場「若草物語ナンとジョー先生」と「ロミオの青い空」の全話脚本を一人で手掛けられたという、多彩なキャリアを有する方です。

そして、イラストを手掛けるのは伊部由起子さん。映画版のキャラクターデザインを共同で手掛けられていますが、本職はSDキャラと謂われる二頭身キャラや可愛らしい少女を得意とするアニメーターの方で、何作かのTVシリーズでキャラクターデザイン、総作画監督を務められていらっしゃいます。

映像作品のノベライズというと、本編と異なる作者や作家の方が手掛けられる例が多いのですが、本作では映画版のメインスタッフがそのままノベライズを手掛けられるという点でも珍しいことかもしれません。

そして、本作のスタッフ(更には、映画版の主演を務める声優さん)にはある共通点があります。本作を応援しようと決めた理由でもあるのですが、詳しくはこちらをご覧頂ければと…。

ちえりとチェリー挿絵田舎のおばあちゃんの家にお母さんと一緒にやって来たちえり。好奇心旺盛だけど人見知りで、ちょっと臆病な小学六年生。そんな彼女の傍らには何時も大切にしているぬいぐるみ「チェリー」がいっしょに居ます。想像力豊かなちえりが生み出す世界の中では、大人の背丈ほどに大きくなって、話が出来るようになるチェリー。ちえりが困った時には何時も傍らに居て言葉を掛けてくれます。

母子家庭で育った彼女がやって来た古いおうちは、亡くなったお父さんの育った家。法事のためにやって来た彼女は早速、従妹たちとすれ違いを起こしてしまいます。一人法事に行く事から取り残されてしまったちえり、でも好奇心旺盛な彼女はチェリーと一緒に大きなおうちの中へ探検に出掛けてしまいます。

おとうさんが昔住んでいたおうちの中をチェリーと一緒に巡るちえり。懐かしくも悲しい思い出と、亡くなったおとうさんが世界一といつも励ましてくれた、彼女の溢れる想像力が重なり合って生み出された世界の狭間で、ちえりは大切なこと、かけがえのない想いを見つけ出していきます。自分の弱さや恐怖が生み出しているもの、儚くも小さな命の火、そしていつも自分をそっと支えてくれる暖かい想い。

彼女がその想いを受け止めて、一歩踏み出す時、何時も側に居てくれたチェリーと一緒に唱える合言葉、

「いーつーもー。いっしょ」

そして想いを繋げた先に訪れるもう一つの物語…、

少し古い日本の面影を感じさせる、ファンタジックな舞台設定の中、主人公ちえりの視点で少女が自ら一歩踏み出す想いを遂げるまでを語るノベライズ版。原作者で監督の中村誠さんによれば、映画版とはちょっと視点を変えて描かれているとの事ですが、果たして映画版ではどのように描かれるのでしょうか。

残念ながら遠方のため試写に参加することは叶いませんが、白箱版(一応、出資者?)で観られることを楽しみに、そして、スローシネマとして、いずれこの片田舎のスクリーンでも観られる機会が巡ってくる事を願って。

New!(2015.10.31):ハロウィンで盛り上がる週末に素敵なプレゼント。遂に製作応援のリターンでもあるDVDとノベルティが到着しました!これからじっくり拝見したいと思います。

ちえりとチェリー、プロジェクト支援御礼のお品物

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