さようなら、小さくとも全てが揃っていた趣ある山間の駅舎(今日で利用終了となる小淵沢駅、旧駅舎)2017.7.2

さようなら、小さくとも全てが揃っていた趣ある山間の駅舎(今日で利用終了となる小淵沢駅、旧駅舎)2017.7.2

昨日から信州DCが始まり、小海線には久しぶりの専用観光列車「HIGH RAIL」運行も始まった、中央本線の小淵沢駅。

実は、本日(7/2)を以て、長らく使われてきた駅舎の利用が終了、隣接地に建設された新しい駅舎に移転することになりました。

中央本線の特急停車駅でもひときわ小さな駅舎。

つい数年前に駅舎右側に建てられた、お土産物を扱うショップが出来るまでは、待合室と駅蕎麦しかない、本当に小さな駅でした。左側は駅事務所です。

2014年の豪雪直後の小淵沢駅。まだ除雪が進んでおらず、駅前には雪が積み上げられています。

駅前には小さなロータリーが設けられており、すぐ隣にあるタクシー会社の車が常に配車されており、こんな状態で駅に降り立っても、すぐにタクシーで移動することが出来る点は、誠に心強い限りでした。

山間の小駅ですが、小海線の始発駅でもあり、中央本線の山梨と長野の境界に位置する駅。普段の列車運行でも、この駅で多数の折り返し列車が設定されており、深夜に渡る貨物列車の交換、そして特急「あずさ」は1本を除いてすべて、「スーパーあずさ」も半数は停車する、中央本線における運転の要衝でもあります。スペースは狭いですが、5本の発着線を有する本格的な交換駅です。

小さな待合室スペースと使い込まれたベンチ。

冬場になるとストーブが置かれるために、ベンチの前にはスペースが空けられています。降雪や大雨、強風などの気象条件で頻繁に遅延が発生する、高尾以西の中央本線。付近の学校に通学する生徒と併せて、この待合室が一杯になってしまう事も少なくありません。

小さいとは言いながらも、有人改札を有し、みどりの窓口もちゃんとある小淵沢駅。列車の接続や運行トラブル時の説明、不慣れな観光客の方に丁寧に対応する駅員さんの存在は実に頼もしいです。みどりの窓口開設時間外でも指定席を取れる指定券自動券売機は、あずさ回数券を常用する地元民にとって、急ぎの上京の際に何時でも指定席を取れる貴重な存在でもあります。

駅弁を販売する「丸政」が運営する駅蕎麦のお店。

こんな山間の小駅ですが、駅を行き交う人を温かく迎えてくれています。

駅蕎麦の食券機。こんな山奥の駅にも拘らず、下の方にずらっと並ぶトッピングメニューに驚かされます。そして、一番右下に設けられた「持ち込み容器」のボタン。こちらで購入した蕎麦を列車内に持ち込む事が出来るのです(地元の方はおかずとしてトッピングだけ買って持ち帰るという技も)。実は駅舎の新築工事が始まる以前には、ホームにも駅蕎麦の売店があり、旅行客の方や地元の高校生などが、持ち込み容器を手に慌てて列車に乗り込むシーンが良く見られたものです。

山間の小さな駅ながら、小淵沢駅の知名度を全国的に高めているのが、こちらのお弁当「高原野菜とカツの弁当」駅弁としては異例の生野菜のサラダをメインに据えるという英断が大人気となり、昭和40年代から現在でも販売が続く、全国的にも長寿を誇る名物弁当です。

小さな駅舎ながら、特急列車が1~2時間ごとに停車する小淵沢駅。駅前には終電までタクシーが待機し、みどりの窓口では駅員さんが直接乗降客の応対を行い、駅蕎麦と駅弁が揃う、昔ながらの旅行するための駅としての全てが揃った、現在の縮小を続ける地方の鉄道事情から考えると、とても恵まれた駅であった事が判ります。

新しい観光列車の運行が発表され、鉄道による観光の復権が唱えられる一方、地方の鉄道利用には厳しい側面もあります。今回の小淵沢駅新駅舎運用開始と足並みを揃えるかのように実施された周辺駅の無人化、委託解除。お隣の長坂駅は一日の乗降客数では小淵沢駅と遜色が無く、3月までは特急停車駅でみどりの窓口も設置されていましたが、いずれも廃止となり、無人駅となってしまいました。

そして、新しい駅舎が完成を迎える小淵沢駅。

広くなったエントランスとアプローチを得た代わりに、これまでの商店街と離れた場所に設けられた入口。今日執り行われる竣工式典準備が進む土曜日の夕方、傍らで感慨深そうに駅舎を眺める地元商店街の方が印象的でした。私がこの駅に降り立った頃には既に俎上に上り、非常に長い間、紆余曲折を経てきた小淵沢駅の新駅舎建築。その間の経緯は此処では述べません。

竣工前日となって駅名標に火が灯された小淵沢駅新駅舎。これまであった駅蕎麦のお店と待合室は、改札が設けられる駅の2階となり、丸政直営となる売店と市の観光案内所は1階に入居することになっています。

元々1日1000人強の乗降客。建屋は大きく立派になりましたが、駅を利用される方が使われるスペースは、これまでとそれほどには大きく変わることは無い新しい小淵沢駅です。

木の温もりと甲斐駒と八ヶ岳の両方のパノラマが楽しめる事をウリにした、この新しい駅舎が、訪れる多くの方々に愛される事を願いながら。

明日の朝には目の前のロータリーと共に閉鎖される小淵沢駅の旧駅舎。上記のリンクで朝日新聞さんが取り上げていますように、この駅舎は解体される運命にあります。

見納めとなってしまう今日、中央本線開業以来とも伝えられる山間の小さな駅舎にお別れを告げに訪れようと思います。

7/2午後10時35分、お迎えで訪れた、最後の小淵沢駅、旧駅舎待合室の姿を収めました。既に指定券券売機は取り外され、構内には引っ越し作業に携わる工事関係者の方々が多数集まってきています。

この後、11:14発の上り甲府行き最終列車が出発の最終、0時38分着の小淵沢止まりの下り終電を迎えて、この駅舎は利用終了となります。これまで長らくの間、ありがとうございました。

最終の甲府行き上り列車がプラットフォームに到着した小淵沢駅。新エントランス側から新しい駅舎を遠望。明日の朝、この場所から新しい旅の物語が育まれ始めます。

<追記:2017.7.6>

旧駅舎が閉鎖になって4日、当初の混乱も少しずつ収まり始めた小淵沢駅前。

車の通行量がめっきり減った、旧駅舎前を通り過ぎようとすると、ちょっと様子が変わっていました。

子供の手で書かれたであろう色とりどりのイラストと、「ありがとう」の文字。

気になって、ネットを調べてみると、こんな記事がupされていました。

昨日のうちに地元の幼稚園の園児たちが描いたようです。既に今日の朝から解体準備工事が始まった小淵沢駅の旧駅舎。9月の末までの予定で解体が済んだ後、新しいロータリーと駐輪場(計画図ではバスの発着場もこちらに出来ます)が整備される予定になっています。

旧駅舎最後の一枚として。

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小淵沢駅の名物は「駅弁」です(高原野菜とカツの弁当)

小淵沢駅の名物は「駅弁」です(高原野菜とカツの弁当)

八ヶ岳南麓の玄関口でもある中央本線、小淵沢駅。

最近は中央高速を使って、車でいらっしゃる方が圧倒的に多いのですが、中央本線の特急「あずさ」を利用される方もまだまだ多くいらっしゃいます。

そんな、観光地の只中にある小淵沢駅ですが、至って質素な佇まいを見せる、山間部の小駅に過ぎません。

雪の小淵沢駅

観ての通りのちょっと寂れた田舎の小駅に過ぎないのですが、これでも1~2時間毎に特急が停車し、甲府方面からの終電は1時近くまであるという、意外と便利な駅なのです。

そんな小淵沢駅、八ヶ岳と甲斐駒ケ岳が望める絶好のロケーションにあってホームで写真を撮られる方も多くいらっしゃいますが、もう一つ、ホームにはちょっとした名物があります。それは「駅弁」なのです。

小淵沢駅の駅弁は駅のすぐ裏手にある「丸政」さんが構内の売店、立ち食い蕎麦(こちらも美味しいのです)と共に一手に請け負っていますが、こんな辺境の駅弁屋さんにも関わらず、至って盛業なのです。TV番組とのタイアップで有名になった事もありますし、マスコミ等で取り上げられる事も多い丸政さんの駅弁ですが、その中でも40年にも渡るロングセラーかつ代表ともなる一品が今回ご紹介する「高原野菜とカツの弁当」なのです。

高原野菜とカツの弁当1

ちょっと牧歌的でレトロなパッケージが如何にも列車で高原に来ましたという雰囲気を盛り上げてくれるこの駅弁。何と昭和45年に発売されて以来のロングセラーで、未だに人気が衰えない小淵沢駅の定番となっている駅弁です。ロングセラーとなった最大のポイントは何と言っても常識破りの「生野菜がたっぷり入った駅弁」なのです。

高原野菜とカツの弁当2

封を開けると、ご飯よりも、カツよりも「これでもか」と言わんばかりに野菜が入っているのが判るかと思います。そして、普通の駅弁なら申し訳なさそうに隅っこに入っているであろう調味料達が国際線の機内食を思わせる「調味料セット」になって入っているのです(充分な量のウースターソースとマスタード、サラダパッケージに使えるくらいのドレッシング、そして味塩がついているのが憎いです)。豊富な調味料を組み合わせて皆さんのお好みで野菜を楽しんでくださいとの心遣いからして、野菜が主人公の駅弁である事を雄弁に物語っています。

そもそも、最近の駅弁でも野菜、それも生野菜たっぷりの駅弁は早々見かけるものではありません。そんな珍しく、しかも保存が利きにくい生野菜を今から40年以上前に駅弁に取り入れようと考えたこと自体、もの凄い挑戦だったと思います。幸いにもその挑戦が功を奏し、今では高原野菜の駅弁と言ったら小淵沢駅、山梨の駅弁といったら丸政と全国の駅弁ファンや鉄道旅行の好きな方々に知られるようになっています。

高原野菜とカツの弁当3

そんな珍しい高原野菜の駅弁は中身も盛りだくさんです。

高原レタス、セロリ、きゅうり、ミニトマト、カリフラワー、りんご、コーン、しめじ、茎さつま、山ごぼう、チキンカツ(以上、丸政様のホームページより引用)

何と言ってもメインを飾るのは、これだけでお腹一杯になってしまいそうなくらいてんこ盛りで入っているしゃきしゃきの高原レタスです。

一緒に入っているレインボードレッシングをかけるもよし、お好みで塩胡椒で頂くもよし、何もつけずに、そのまましゃきしゃきを楽しむのももちろんOKです。

ウースターソースをさっとかけたチキンカツを頬張りながら、箸休めにはコーンとしめじ。歯ごたえたっぷりのヤマゴボウとセロリをこりこりとかじりながら、ミニトマトをポンと放り込む。

(丸政さんのホームページには載っていないのですが、実はカツの下にはスパゲッティが隠してあります。お子様は大喜びですよね)

食べ応え満点、でもお腹は重くならないところで、最後にリンゴを頬張って…と。

八ヶ岳の南麓にいらっしゃる際には、車も便利でいいですが、たまにはゆっくり列車の旅でちょっと美味しい駅弁を楽しまれるというのは如何でしょうか。