心を編み、彼方へと水面を飛び立ち再び静かに舞い降りる。清々しい旅するアコースティックサウンド(「宇宙よりも遠い場所」オリジナルサウンドトラック)

New!(2018.12.9)

選評者のコメントもこの作品の特性をとても良く捉えているようです。各種の配信サービスで観る事も出来ますので、未見の方は是非。

 

仕事に行くにも買い物をするも、もちろん写真撮影も…何をするにもまずは車に乗らないことには始まらないのが、田舎暮らしの現実。

車に乗っている時間が長くなるとどうしても恋しくなるのが、音楽。特に仕事の行き帰り等でリラックスして運転したいときには、お気に入りのサントラなどを車内で流しておきたくなります。

最近はリリースの数が大分減ってしまったのですが、CDやDLでぽつぽつとサントラを買っている中で、お気に入りとなった一作の紹介です。

今年の1月から3月まで放送されていた、こちらのアニメーション作品のサントラ

作品については色々な形で語られているかと思いますが、オリジナルシナリオで放映当初はあまり注目されていなかった作品。私自体も制作協力として国立極地研究所が携わっていた(というか、作品自体そちら方面からの告知で知ったくらい)ので視聴を始めたのですが、女子高生が民間南極観測隊員として南極を目指すというファンタジーにも拘わらず、極地研の全面協力による現実感を伴った舞台設計と、家族や大人の隊員たちとの関係も描く事で虚構感とのバランスを取りつつ、ち密に描き込まれるストーリー、同じくらいにファンタジーに現実感を持たせる美しい背景描写。往年の作品(バイファムを思い出してしまいました)を思わせる、愛らしくも安心して見続けられるキャラクター造形。あくまでもエンターテイメントとしての視聴者を楽しませる作品の中に、自分の過去を振り返りながら心の機微という形で彼女たちを表現したいと願った女性監督さんが、繊細な演出に織り込む想いが結実した、近年稀に見る良い作品になっていたかと思います。

その現実感と心の機微をサウンド面から支えていたのが、絶妙なタイミングで映像に差し込まれていく、藤澤慶昌さんが手掛ける挿入歌とサウンドトラックたち。

アルバム2枚組相当、OP/EDのボーカルなしアコースティックバージョンを含む全48曲という、13話のTVシリーズとしてはかなりのボリューム。同一のメロディラインで、ちょっと聞いただけでは、あれ、同じ?と思う曲の微妙なアレンジの違い(1-14. ちょっと待ちなさーい!、1-15. 待って待って待ってー!や、1-21. き”も”ち”わ”る”い”…、1-22. あ”ー…のように)を聴き比べるのも、サントラならではの楽しみ。

思わずコスモ…(禁則事項)となった、1-1.南極の太陽で始まるDisc1は主に日常の場面を扱った楽曲たち。ちょっとコケティッシュで楽しそうな、様々な場面を鮮やかに彩る曲。1-6.憩いの自動販売機、1-7.井戸端会議、1-12.軽く死ねますね、1-13.まあなんとかなるんじゃない?等の日常ドラマでもよく使いそうな楽曲も多く収録されていますが、1-2.青春の始まりから1-5.通いあうココロまで、1-9.夕暮れの帰り道のような、伸びやかでアコースティックな楽曲には強く惹かれます。中には、1-11.南極少女のような、少しミステリアスな感じを出す曲や、1-20.何か隠していることはなぁい?といった、作品中で一番?背筋の寒くなる、ここ一番のシーン(おたま、ぺしぺし…です)で使われたホラータッチの曲も織り込まれています。

後半は日常を離れてドラマチックな舞台へと誘う曲たちが続きます。

場面の余白を埋めていくかのようにギターの音色とコーラスが響く、遠くへ旅立つ思いを伝える1-24.大人からのYellからDisc2へ続くアコースティックな楽曲たちは、日常を飛び出したその先に描かれる風景。

光輝く水面を蹴って羽ばたいていく飛翔感が気持ち良い、作品のテーマメロディとなる楽曲の2-15.Bon Voyage! ~Main Theme~、次の場面をゆっくりと押し開けていく2-4.見つけた答えから、2-5.私たちは必ず南極に行く。組み合わされる、落ち着いた雰囲気を醸し出す1-23.確かめたいことがあるからと、1-25.忘れ形見。スケール感を感じさせる楽曲が、ロードムービーとしての雄大な旅の一ページを思い起こさせてくれます。

そして、2-9.消せない記憶をピークに、2-7.もう届かないから、2-13.失われた命まで続く、物語の底辺に据えられた伏流を辿る楽曲。この作品のもう一つのテーマ、独りでは融けない暗く蠢き揺れ動く心が織りなす綾をじっくりと表現しているかのようです。

そして、クライマックスで印象的に使われた、2-6.最後まで諦めないの、疾走しつつも低く抑え込まれる感情。伏線を回収するその後の場面で、悲しさを埋める様に奏でられる、ボーカルを添えられた、2-23.またね。

旅の果てに行き着いたシーンを振り返るように、本編を閉じるシーンで使われた2-20.きっと忘れないを聴いていると、ひとつの旅路がゆっくりと終わりを迎えていく事を感じさせてくれます。

日常から遥か彼方に旅立つ飛翔感と、心の機微に寄り添う繊細な想い、そして再び日常に舞い降りるまでを凛とした清々しいアコースティックな楽曲たちで彩るこのアルバム。海からはるか離れた山里を行き交う時でも、その楽曲たちが奏でる心地よさは、いささかも変わる事はありません。

収録曲の一覧です。旅路の先に、どんなシーンを思い出されるでしょうか。

Disc 1

1. 南極の太陽

2. 青春のはじまり

3. のんびり昼下がり

4. 朝が来た

5. 通いあうココロ

6. 憩いの自販機前

7. 井戸端会議

8. よっし始めようか!

9. 夕暮れ時の帰り道

10. いい天気だねー

11. 南極少女

12. 軽く死ねますね

13. まあなんとかなるんじゃない?

14. ちょっと待ちなさーい!

15. 待って待って待ってー!

16. ホッと一息

17. えーっと…え?

18. 無理無理無理!

19. だぁかぁらぁ!

20. 何か隠してることはなぁい?

21. き”も”ち”わ”る”い”…

22. あ”ー…

23. 確かめたいことがあるから

24. 大人からのYell

25. 忘れ形見

 Disc 2

1. ともだち

2. おもいで

3. ひとりぼっち

4. 見つけた答え

5. 私たちは必ず南極に行く

6. 最後まで諦めない

7. もう届かない想い

8. 心に絡まる鎖

9. 消せない記憶

10. 失った親友の面影

11. 溢れ出す想い

12. ぜっこう

13. 失われた命

14. 親友との約束

15. Bon Voyage ! 〜Main Theme〜

16. 任務遂行

17. 状況説明

18. 予感

19. 緊急事態

20. きっと忘れない

21. The Girls Are Alright! 〜Piano Version〜

22. ここから、ここから 〜Piano Version〜

23. またね

個人的に印象深かったのが、操船経験者として実感が湧く、嵐の南極海を往く8話の、1-21. き”も”ち”わ”る”い”…から始まる一連の船酔いのシーン。気持ち悪さとグルグルしていく想いが重なり合う中で、(本当はいけないのですが)暗闇の中、嵐の甲板へと出ていき、その先に広がる「違う日常」へと、その両方を振り切っていく、c/wのOne Stepへと繋げていくシーンが大好きです。

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