伊那谷の食文化を伝える二つの企画展(伊那市創造館「蕎麦は正義」と伊那市高遠町歴史博物館「ふるさとごはんの300年」)へ

伊那谷の食文化を伝える二つの企画展(伊那市創造館「蕎麦は正義」と伊那市高遠町歴史博物館「ふるさとごはんの300年」)へ

強い風が吹く春分の日から、春霞の中、穏やかで暖かな日となった連休二日目。

人出の少ないこの春ですが、折角なので少し足を延ばしてこれまで寄る事の出来なかった場所へ。

高速道路を1時間ほど。両岸の山裾や天竜川沿いを抜ける道筋は幾度も通っているのですが、入り組んだ街路へと入る事の少ない伊那谷の市街地。その中心部にある県合同庁舎の裏手にあるモダンな建物。

昭和初期に地元で製糸工場を興した人物がその全額を負担して建築されたとされる、閉館までの長期に渡り民間運営とされた私立図書館、旧上伊那図書館。片倉館を設計した森山松之助が基本設計を手掛け、飯田にある追手町小学校を設計した黒田好造が実設計を行ったとされる、虚飾を廃した昭和モダンのシンプルで味わい深い造形が美しい建築。現在は伊那市創造館として、学習教育施設に生まれ変わっています。

内部は改装されて学習室と展示スペース、多目的ホールとされた伊那市創造館。

今日は、こちらの「蕎麦は正義」展を見学にやってきました。

薄暗い展示スペースの中に飾られた、家庭で使われていたという蕎麦打ちの道具。実は本展で明確に蕎麦と伊那谷の関係性を伝える展示物は、こちらと石臼、蕎麦粉を捏ねる鉢の各一点のみ。壁面にガラスケースが連なる展示室ですが、ほぼすべての展示ケースは、こちらのようながらんとした解説パネルで占められます。

そして、展示の内容もちょっと掲げられたテーマとは離れた内容。しかしながら伝えたいと願うイメージは明確です。

伊那谷の行者そばこそが、そばの発祥であると表明したいという願い。それにもかかわらず、伝統的な家庭料理(蕎麦が打てなければ嫁に行けないとされたという)故に、伊那の市街地には殆ど蕎麦屋が発達しなかったという事実。一方で、保科正之の会津転封により伊那から伝わったとされる会津地域における高遠そばの発展と、その元祖として逆輸入する形で有名になったお隣の高遠そば。全国に広まったご当地蕎麦の存在。それらに対して地域活性化の新たな一手としての蕎麦の活用を目指す、地元伊那(この場合は「旧伊那市」)の活動を伝える展示。

高遠そばの繋がりで親善交流を続ける会津若松や全国各地のご当地そば、地元伊那、高遠の蕎麦店マップなどのパンフレットが豊富に並べられ、何やら観光や産業振興のPRを見ているような気分になってきますが、当館のスタンスを考えれば尤もな展示内容かなと改めて思いながら。

息が詰まるくらいに暗く圧迫感のある展示スペースに煌々と明るいガラスケースというちょっと秘密めいた展示エリア。パネル展示なら室内照明自体も明るくした方がよいのではないかとも思ってしまいますが、実は真っ暗な展示室の奥にある休憩スペースにはちょっとしたお楽しみも。

昭和43年に、信州に所縁を持つとされる看板を受け継ぐ、麻布十番にある永坂更科布屋太兵衛が制作した「蕎麦絵巻」その全巻が壁一面と卓の上に飾られています。

遙か古代から当時の蕎麦屋(もちろん更科の暖簾分けのお店を中心に)と蕎麦の産地の分布を重ねた全国地図を巻末として、時代ごとの世相に描かれた蕎麦の姿を綴る錦絵風の大作。暗くちょっと息苦しい空間ですが、この作品を眺めているだけであっという間に時間が過ぎてしまいます。

実は1階の展示室でも「信州伊那谷の美味しい昆虫」というミニ展示(こちらもパネル展示です)が行われており、企画展と合わせて地元の食文化に触れられる機会となっています。

企画展はここまでですが、伊那市創造館の展示ハイライトは実はこちら。

いずれも国指定の重要文化財となる、神子柴遺跡から出土した石器の展示と、顔面付釣手形土器の展示エリア。

和田峠のお膝元、下諏訪の博物館や諏訪地域の博物館でも見かけることが少ない、削り出した跡が克明に分かる、見事に黒光りする黒曜石の石器が放つ迫力には思わず目が釘付けになります。

そして、この施設一番のお宝でもある、御殿場遺跡から発掘された顔面付釣手形土器。

展示ケースの裏側にも入れるようになっているため、その背後に施された複雑な造形もじっくりと眺めつつ驚かされる逸品。土曜日のお昼前のひと時、来訪者のいない館内を暫し独り占めで楽しんでしまいました。

一般開放はされていませんが、中央構造線を有する多様な地質を擁する当地の岩石標本など多彩な収蔵物も擁する、産業・観光振興や多目的学習施設としての位置づけを有する伊那市創造館。入館は無料、幕末から明治中期にかけて伊那谷を転々と寄宿しながら詠み続けた漂泊の歌人、井上井月を顕彰する展示室以外、撮影は可能です。

そして、天竜川を渡って車を走らせること20分ほど。白銀の南アルプスをバックに穏やかな午後の日差しを受けてエメラルドグリーンに輝く、満々と水を湛える高遠ダムの畔。

市街地にある伊那市創造館から一変して、同じ市内でも歴史溢れる街並みを誇る観光都市、城下町高遠を代表する観光スポットの一つでもある伊那市高遠町歴史博物館

先ほどの伊那市創造館とは打って変わって、風光明媚な湖畔を望む斜面に建てられた如何にも近世をテーマにした美術館風の佇まい。そのせいでしょうか、こちらの入館料は有料(因みに、入館受付が高遠城址のお城ご朱印状(御城印)の受付でもあるのですが、結構高いのだと…。)、周囲の資料館、美術館などとの共通料金制もない点は、観光地故でしょうか。高遠町という表記をいまだに残すことからも、同じ市内でもかなり異なる印象を受けます。

お約束の、館内の離れにある、絵島囲屋敷(復元)

そして、伊那市創造館と決定的に異なる点は、高遠ダムの湖畔を望むロビーを含めて館内が全面撮影禁止である点。最近の博物館の状況を鑑みるとちょっと不思議にも思えてきますが、展示内容も一般的な公立の歴史博物館のイメージとは少し異なる、低い天井と多人数を同時に収容できる広々とした動線で主に近世、近代初頭の高遠に遺された武具や書画、藩校進徳館に繋がる所蔵品や在学した地元出身者の遺品をガラスケース内で展示するという、古美術品の美術館といった雰囲気が濃厚に漂う施設。

今回の特別展は、そのような施設の雰囲気とだいぶ異なるテーマとなる「ふるさとごはんの300年」展。

写真撮影は出来ませんが、こちらのように展示内容と出展目録(期間中の展示替えを想定されているのでしょうか、一部未展示と思われる掲載品もあり)のパンフレットが用意されており、展示内容や意図が明確に把握できるよう配慮されています。

今回の展示のきっかけとなった、一昨年から杖突峠の麓、藤沢の集落にある農業レストラン「こかげ」で提供を始めた、参勤交代で伊那に入部する際、藩主が必ず最初に立ち寄ったとされる御堂垣外宿本陣、藤澤家に残された献立を元にして作られた「殿様御膳」。この成果を広く紹介する事を目的とした活動の一環として、レシピの復元にも協力した博物館サイドが実現した展示企画であることが冒頭で述べられていきます。

博物館で「食」の展示は難しいのでは?と思ってしまいますが、模型と復元調理の写真を合わせて紹介する事でそのイメージを何とか伝えようという思いが伝わる展示内容。実は展示を見ていくと料理の復元というテーマ以上の姿が浮かび上がってきます。それは、高遠、伊那谷の歴史を重んじる風土に支えられた、豊富に残された古文書たちが語りだす、当時の食生活、残された食文化の姿。

本展で紹介される復元料理は、食材の点からも、調理法や調味料の製造手法の点からも残念ながら何処まで行っても当時の味には迫れない(このあたりのお話は、日本の中世、近世食文化史、醸造技術史の研究をされている吉田元先生の著作をご参考頂ければ)事は明確にしておく必要があるかと思いますが、だからといって古文書に書かれた内容には些かの影響を与える事ではありません。むしろ、豊富に残された古文書に綴られた食材の数々がどのように伊那谷の山深くまで伝わってきたのかを考えると、一膳一膳の品書きと復元された献立の姿に思わず唸ってしまいます。

殿様御膳や伊能忠敬の測量隊が伊那谷を通過した際の献立(残っているのか!)、宴席での本膳の品書きなど、帳面として残されていた膳の姿が読み下し文を添えて飾られていますが、殿様御膳といっても現在の食卓の姿と比べると極めて質素なもの。しかしながら炊き合わせには松茸が添えられていたり、川魚や焼玉子、名産で献上品ともなっていた岩茸が含まれるなど、当時としてはもてなしの膳であったことがわかります。また、寒冷な土地柄を示すように干瓢、豆腐、茸、山菜、漬物など地の物や貯蔵に適する食材が積極的に使われる一方、貴重な青菜は保存して周年で用いられたと指摘されています。

そして、何よりも驚くのが魚類の多さ。川魚がふんだんに食膳に上るのは理解できますが、目を引くのは数多くの海の魚、魚介類。海苔から始まり烏賊、鰤(イナダ)、鰺、鯔、鮭に、明らかに足の速そうな鯖に鯛、更には鮪、海老!!(海の海老だけでなく諏訪湖からは小海老を取り寄せていたと)。

更には伊能忠敬達に供されたとされる献立には、学芸員の方は簡素なと評していますが、岩茸や赤魚(ハヤ)の魚てん(天ぷらか)、など山の幸だけではなく、遙か伊那谷の奥、高遠の膳に奈良漬や鯔、更には琵琶湖から近江商人の手を経て運ばれてきたと推察する江鮭(ビワマス)と、これ程の賄いが出来たのかと感嘆してしまいます(後日請求する金額もしっかり述べられていますが…人数も相応だったこともあり、流石によいお値段)。

大きな街道から外れた山里の小さな城下町というイメージを完全に払しょくする、豊かな財力を有する町民たちに支えられた藩庁と、その豊かさを物流面で支えた中馬業の発展、更には高遠の城下町でそれらの荷を継立てする際に、更に北方の松本に対しても相互に海産物の余剰品売買が行われていたことを示唆する、列島を縦断する物流ルートが構築されていたことが示されます(伊那の方々が今もイナダ(鰤)を珍重されるのは、明らかに飛騨越えの日本海ルートに通じる鰤街道からの流入があった事を示していますね)。

山間部であっても豊かな経済力を背景に物流が支えた饗応の膳。その一方で、当地から送り出される食材についても本展では語られていきます。各地から江戸表に運ばれ、公儀への献上品として、要路への付け届けとして贈られた特産品。本展が秀逸なのは、これらの献上品の集荷や帳面の史料を提示するとともに、公儀への披露を行った事を返答する老中奉書の現物も展示されている点。江戸時代の歴史にご興味のある方であれば、披見した相手が判らなくても、直筆の花押が添えられた奉書主となる老中の名前だけでも、その時代がすぐわかってしまうのではないでしょうか(此処で田沼意次の老中奉書に巡り合うとは…感涙でした)。

豊富に所蔵する古文書を駆使した近世の膳から見る伊那谷の姿を示す前半部分。後半の展示は少し詰めた形で近世以降の姿を示していきます。品書きには表れてこない、しかしながら絵図や地誌からは明確に分かる狩猟者達の存在、山仕事の食事で使われる「めんぱ」と呼ばれた、一昔前のお弁当箱にも繋がる小判型、丸形の、抱えるほどの大きさのあるご飯を入れるお櫃からアルマイトのお弁当箱に給食の食器(見学者の方が展示を見ながら自分たちが使っていたものとの違いに声を上げられていたのも印象的)。そして伊那谷という気候、風土が生み出す食の姿はB級グルメから給食と食育への想いまで。

暖かな日差しを受けて膨らみを増す、春を待つ名物の高遠桜。

今年は桜まつり開催の中止が決まり、何時もの年よりちょっぴり静かな桜のシーズンを迎える事になる春の高遠。桜を眺めた後にちょっと寄り道して、食という形の残らない、でもしっかりとその地に息づく人々の暮らしを伝える記憶に触れてみてはいかがでしょうか。

 

博物館/美術館の展示物って撮影できるのでしょうか(八ヶ岳山麓界隈の場合)

博物館/美術館の展示物って撮影できるのでしょうか(八ヶ岳山麓界隈の場合)

一部の施設ではSNS等を利用したPR手段の一環として積極的に推奨される事もある、博物館/美術館の展示物撮影。しかしながら、著作権上の問題や様々な理由で撮影禁止の表示を出していたり、明確な表記がなされていない施設もあり、時にトラブルとなる事もあるようです。

全国でも有数の博物館/美術館の集積地帯である八ヶ岳山麓界隈でも状況は全く同じで、各施設に訪れた際に、かなり躊躇する事があります。

参考までに、これまで訪れた事のある公立施設(博物館/郷土館/考古館)の撮影の可否について、判る範囲で掲載しておきます(状況は随時変化しますので、無用なトラブルを防ぐためにも、可能な限り現地でご確認いただくことをお勧めします)。

公式な内容ではありませんので、本ページの内容を以て各施設へ問い合わせるのはご遠慮願います。現状と認識が変わっている部分があれば、御指摘頂けますと幸いです(各施設には2013~2019年の間に訪れています)。

  • 韮崎市民俗資料館
    • 撮影可能です(蔵座敷公開時に学芸員さん同伴で)
  • 小海町高原美術館
    • 展示内容によって変わるようです(北欧の灯り展は「個人的な利用に限り撮影可」でした)。安藤忠雄設計による建屋や庭、展示場所以外の屋内撮影は可能です
    • 小海町高原美術館
  • 小諸高原美術館
    • 撮影不可です
  • 南牧村美術民俗資料館
    • 民俗資料館部分は撮影可能、美術館の部分は展示内容によって変わるようです(訪問時の展示は撮影不可でした)
  • 北杜市郷土資料館
    • 撮影可能です
  • 北杜市考古資料館
    • 撮影可能です
  • 井戸尻考古館
    • 撮影可能です(大抵の場合、学芸員さんが一緒に廻ってくださいますので、ご確認ください)
  • 富士見町高原のミュージアム
    • 撮影不可です
  • 八ヶ岳美術館(原村民俗考古館)
    • 美術館部分、考古館部分を含めて展示物は全面撮影禁止です。公式HP記載の通り、村野藤吾設計による建屋に関しては撮影が許可されています。但し、屋内の撮影については展示物をフレームに入れ込まない形でも撮影前に必ず確認を取ってください(屋外で彫刻が映り込んだ場合、現状では黙認です)。企画展の際などに特例で撮影が許可される場合もありますが、利用は個人の学習目的に限られるそうです。詳しくは原村教育委員会にご相談ください
  • 原村郷土館
    • 撮影可能です
  • 尖石縄文考古館
  • 茅野市八ヶ岳総合博物館
    • 撮影の可否については係員の方にご相談ください
  • 神長官守矢史料館(未確認)
  • 茅野市美術館(未確認)
  • 諏訪市博物館
    • 第一展示室(歴史展示)は現在撮影不可です
    • 第二展示室(近代及び藤森栄一記念コーナー、片倉館からの寄贈品)は撮影可能です
    • 企画展示室は殆どの場合撮影不可ですが、連動企画などで特別に撮影が許可される場合もあります(事前告知あり)
  • 諏訪市美術館(未確認)
  • 諏訪市原田泰治美術館(未確認)
  • 市立岡谷美術考古館(未確認)
  • イルフ童画館
    • SNSコーナーが設けられており、SNSマークが表示されたエリア内では撮影、SNSへのUpが可能です。展示作品は撮影不可です
  • 下諏訪町立諏訪湖博物館・赤彦記念館(未確認)
  • しもすわ今昔館おいでや(星ヶ塔ミュージアム 矢の根や)
    • 撮影可能です

なお、此処で表記される「個人」には、解釈上としてSNS等による不特定多数に向けた発信は含まれないと理解して下さい。

岡谷、イルフ童画館のSNS撮影コーナー(武井武雄の再現仕事場)にて。

最近では美術館でも(個人利用に限り)撮影許可を出されている例も増えてきました(小海町高原美術館にて)。特に美術館の場合、許諾関係で難しい点もあるかと思いますので、訪れた際には極力図録も購入しているのですが、差し障りの無い範疇での撮影も認めて頂けると嬉しいですし、イルフ童画館のようなSNSコーナーというのも一つの妥協策かもしれません。

権利関係の厳しい企画展の展示でも、横浜市歴史博物館「道灌以後の戦国争乱」では、メインイメージの前で撮影できるコーナーが設けられていました。

長野県立信濃歴史館でも、撮影禁止マークが表示されていない展示物について撮影は許されています。

南八ヶ岳周辺の博物館・美術館の企画展情報(2019年秋冬~2020年春シーズン)2020.4.6更新

南八ヶ岳周辺の博物館・美術館の企画展情報(2019年秋冬~2020年春シーズン)2020.4.6更新

[2020.4.6更新]現在の最新状況を掲載します。

週末から状況が一変しております。今後、八ヶ岳方面に来訪を予定されている方は、今一度、旅行の是非をご検討くださいますよう、お願いいたします。

また、来訪時には地元各自治体より提供されている情報に配慮願いますよう、お願いする次第です。

 

本ページは、企画展の情報等を逃して悔しい想いを何度もしている自分の為に用意した備忘録です(地元に住んでいても情報は全然入って来ませんし、今日までで終了の企画展でも気が付けなかったものがいっぱいある…涙々)。私自身が訪れた事のある施設を中心に掲載しておりますので、かなり偏った掲載内容になっている点はご容赦ください。

情報のソースは各施設、観光案内施設やショッピングモールなどで配布されている展示会の公式パンフレット、地元新聞社、放送局による紹介、SNS等による発信内容を用いていますが、最終的な確認については各施設のホームページ掲載内容に基づきます。

なお、南八ヶ岳周辺にある各施設の概要についてお知りになりたい方は「八ヶ岳ミュージアム・リング」(八ヶ岳ミュージアム協議会)という公式サイトがありますので、そちらをご覧ください(但し、更新頻度が極めて低く、企画展などの情報もありません)。

【八ヶ岳東麓(小海、野辺山方面)】

  • 小海町高原美術館
    • 国道141号線、松原湖交差点から松原湖方面へ10分(松原湖から5分ほど)。タクシー、バスをご利用の方は小海線の小海駅から(バスの本数は僅か)。広い駐車場がありますが、お隣の日帰り温泉と共用の為、シーズン中や新海誠監督関連のイベント開催時は混雑します。
    • 開催中の企画展 : 口から入って、届くまで 東条真之介(2020/4/4~6/1)
      • オープニングレセプション4/4(土)中止
      • ギャラリートーク5/30(土)
    • 過去の企画展 :北欧の灯り展(2019/9/7~2019/11/4)
      • オープニングセレモニー9/7(土)
      • 企画者による講演会9/8(日)小海町高原美術館
  • 南牧村美術館民俗資料館 
  • 国立天文台 野辺山
    • 国道141号線、JR最高地点にある看板の指示に従って小海線の側道を直進、突き当たりの踏切を渡って(右側の道)2分程。小海線、野辺山駅からは徒歩20分ほど。駐車場有。3/7(土)より屋外の一般見学ルートを含めて公開中止中です
    • 現在開催中の企画展 : 4次元デジタル宇宙シアター(4D2Uシアター)12/7から3/28までの冬季上映は、年末年始以外の毎週土曜に3回、各回定員30名で先着順です

【八ヶ岳南麓(清里、長坂、大泉、白州方面)】

  • 清泉寮やまねミュージアム
    • 中央道、長坂インターから五町田の信号を左折して県道北杜八ヶ岳公園線を清里、八ヶ岳高原大橋方面へ北上、八ヶ岳高原大橋を越えて登坂車線付きの道を登った先にある「清泉寮」方面看板の指示に従って進む。国道141号線方面からは清里の交差点を越えた先の、清里トンネル東交差点を八ヶ岳高原道路方面へ左折、清里トンネルを抜けた先にある同じ看板の指示に従って進む。清泉寮の向かい側にある、県立八ヶ岳自然ふれあいセンターの奥にあります。小海線、清里駅からは観光周遊バスが利用可能です。駐車場は清泉寮もしくは県立八ヶ岳自然ふれあいセンターを利用。
    • 開催中の企画展:
    • 過去の企画展 : 開催中の企画展はありません。次回のギャラリートーク「研究員に聞け! 冬の巻」は、ヤマネの冬眠期間中となる来年2/9(日)です
  • 清里フォトアートミュージアム
    • 国道141号線、丘の公園交差点を入った先ですが、ルートがやや複雑なので、心配な方はナビへの入力ないしは、事前に地図をご用意の上で、お越しください。駐車場有。当面の間、休館となります
    • 今後の企画展 : 2019年度ヤング・ポートフォリオ
    • 過去の企画展 : 山本昌男「手中一滴」展(2019/10/5~2019/12/8)
      • 出展者によるアーティスト・トーク10/26(土)
    • 過去の企画展 : ロバート・フランク展-もう一度、写真の話をしないか。(2019/6/29~2019/9/23)
      • ピーター・バラカン Live DJ「ロバート・フランクの写真・アメリカ・それから」9/21(土)
  • 北杜市考古資料館
    • 中央道、長坂インターから五町田の信号を左折して県道北杜八ヶ岳公園線を清里方面に北上、若林交差点を小淵沢方向に左折、旧大泉村役場跡の向かい側にある北杜市金田一春彦記念図書館を左手に見て過ぎた先の交差点に掲げられた看板の指示に従って谷戸城跡方向に左折して1分程。中央本線、長坂駅から市民バスも利用可能ですが本数は僅か。駐車場はありますが10台未満。
    • 開催中の企画展 :
    • 過去の企画展 : 「黒き星のかけら~黒曜石と八ヶ岳山麓の縄文世界~」(2019/10/26~2020/1/26)
      • ギャラリートーク : 11/2(土)、12/14(土)、1/19(土)
      • 講演会「八ヶ岳山麓の縄文遺跡を中心とした黒曜石ネットワーク」11/24(日)
    • 過去の企画展 : 共同企画展「ワンダフルジャーニー 星降る八ヶ岳山麓の縄文文化」(2019/7/6~2019/11/24)
  • 北杜市郷土資料館
    • 県道17号線七里岩ライン、長坂駅手前の信号を小淵沢方面に入りガードを潜った先の交差点を白州方面へ左折、谷筋を越えた先にある「清春白樺美術館」の案内看板が出ている交差点を右折してすぐ。国道20号線方面からは台ヶ原中交差点を曲がって峠道を登り切った先にある前述の看板に従って左折してすぐ(清春白樺美術館の向かい側)。中央本線、長坂駅から市民バスも利用可能ですが本数は僅か。駐車場有、満車の場合は向かいの清春白樺美術館の駐車場も利用可能。
    • 開催中の企画展 :
    • 過去の企画展 : 「動物の神様」(2019/7/13~2019/10/27):終了
      • ギャラリートーク : 9/14(土):終了、10/13(日):終了
      • 講演会「御坂のニホンオオカミ頭骨と甲斐周辺の狼信仰」10/6(日)
  • 北杜市オオムラサキセンター
    • 県道17号線七里岩ライン、日野春陸橋を越えた先にあるオオムラサキセンター交差点を曲がってすぐ。中央本線、日野春駅から徒歩1分。駐車場有。当面の間、休館となります
    • 開催中の企画展 :
    • 過去の企画展 : 特別展「太古の虫たち」(2019/9/10~2019/12/27)
  • 藪内正幸美術館
    • 国道20号線、鳥原の交差点を曲がって、サントリー白州蒸留所へ。工場に入る手前の交差点を左折、200m程先にある案内看板に従って右折して1分ほど。バスは韮崎駅から国道20号線経由の下教来石行きに乗車して松原下バス停で下車、もしくは小淵沢駅から発着するサントリー白州蒸留所行きの見学バス(3月~11月の主に土曜休祝日とGW、夏休み中の運行)に乗車して工場から徒歩、いずれも15分ほど。駐車場有。
    • 開催中の企画展 : 2020年前期企画展「鷲・鷹・梟」(2020/3/20~2019/7/14)
    • 過去の企画展 : 2019年度後期企画展「おなじみのどうぶつたち」(2019/7/20~2019/11/30)

【八ヶ岳西麓(富士見、原村、茅野、諏訪方面)】

  • 神長官守矢史料館
    • 中央高速、諏訪インターを降りて右折、陸橋脇をビーナスライン方面に入ってすぐの荒井交差点を右折(立体交差の下を潜る)、突き当たりの高部東交差点を右折して1分ほど、高部交差点の先。中央本線、茅野駅からバスもあり(茅野駅から徒歩でも行く事は可能ですが、お勧めしません、凡そ40分)駐車場はありますが、数台に限られます。当面の間、休館となります
    • 開催中の企画展
    • 過去の企画展 : 守矢文書に見る 改元・元年の古文書(2020/1/4~2/11)
  • 諏訪市博物館
    • 中央高速、諏訪インターを降りて左折、飯島交差点を諏訪大社方向に左折して5分弱、諏訪大社上社本宮正面。中央本線、上諏訪駅からバスもあり(茅野駅から徒歩で行く事も可能ですが、お勧めしません。凡そ45分)。駐車場有。当面の間、休館となります
    • 開催中の企画展 :
    • 過去の企画展 : 企画展「仏法紹隆寺-諏訪の真言道場 古刹の歴史-」(2019/9/14~2019/11/24):終了
      • 講演会「仏法紹隆寺の仏像-普賢菩薩騎象像と不動明王立像について-」10/13(日)
      • 展示説明9/15(日)、10/12(土)
  • イルフ童画館
    • 中央高速、岡谷インターから下諏訪方面へ向かい、岡谷インター東交差点を岡谷方向へ曲がって5分ほど、イフルプラザ内。中央本線、岡谷駅からは徒歩3分。駐車はイルフプラザの市営立体駐車場(5時間まで無料)へ。4/5~4/19臨時休館となります
    • 開催中の企画展 : 武井武雄 七つの顔展(2020/2/29~4/20)
    • 過去の企画展 : 黒井健 絵本原画展(2019/12/21~2020/2/24)
    • 過去の企画展 : 加藤休ミ展 おいしい たのしい クレヨン画(2019/9/28~2019/12/16)
      • 読み聞かせと演奏会、サイン会10/14(月・祝日)
    • 過去の企画展 : うらしまたろう展 あんな浦島 こんな乙姫(2019/7/20~2019/9/23):終了

他にもご紹介したい施設は沢山ありますが、とりあえず此処まで。

今月の読本「信州の縄文時代が実はすごかったという本」(藤森英二 信濃毎日新聞社)信州の縄文研究系譜を継ぐ研究者が挑んだ、美しく丁寧に描かれた机上の八ヶ岳縄文ミュージアム

今月の読本「信州の縄文時代が実はすごかったという本」(藤森英二 信濃毎日新聞社)信州の縄文研究系譜を継ぐ研究者が挑んだ、美しく丁寧に描かれた机上の八ヶ岳縄文ミュージアム

New!(2018.7.5) : 今月から始まった東京国立博物館の縄文展。著者である藤森英二さんが制作された、本書にも掲載されている縄文人たちをイメージしたフィギュアが展示されているそうです。

国立博物館の展示で著者の作品をご覧になられた方にも是非お勧めしたい一冊です。

<本文此処から>

版元さんからの刊行案内が出て以来、心待ちにしていた一冊。

金曜の晩に漸く地元書店さんの店先(何時の間にか郷土本コーナーが店舗の奥の方に移っていて、危うく見つけそこなうところでした)で見つけて読み始めましたが、予想を超える素晴らしい仕上がりに、一気に読み進めてしまいました。

地方出版社の衰亡が続く中、まだまだやれる事はあると、意欲的な企画と、地方だから、少部数だからとの妥協を許さない丁寧な制作、編集。大手出版社さんにも全く引けを取らない美しい装丁を施した本を次々と送り出していく信濃毎日新聞社さんが、これまでのコンセプトを更に推し進める形で新たに送り出した一冊。狙ったようなインパクト重視でキャッチーな表題の裏側に描かれる、本当に版元さんの良心に溢れる一冊のご紹介です。

信州の縄文時代が実はすごかったとう本今月の読本「信州の縄文時代が実はすごかったという本」(藤森英二 信濃毎日新聞社)のご紹介です。

本書の著者、藤森英二さんは、八ヶ岳の東麓、北相木村の考古博物館で学芸員を務めながら、主に長野県下の縄文遺跡に関する研究に従事する研究者。このお名前をご覧になって、本書にご興味を持たれた方はピンとくるのではないでしょうか。縄文研究に大きな足跡を残し、今に至るまで学界において議論を呼び続ける、ある意味において、日本の古代史の視点が世界的な考古学の流れと決定的な違いを見せる結果となった論考を残した人物。在野の考古学研究家と呼ばれた、縄文農耕論を著した藤森栄一氏に繋がる方です。

こう書いてしまうと、まるで縄文農耕論の継承者が描く、本格的な縄文文化論が展開される本のように見受けられてしまいますが、さにあらず。更に言えば、このような紹介自体、あくまでも本書を売り込むためのセールストークのようなものであり、著者の意図する所とは異なっている事を予め述べておかなければなりません。

本書が本当に素晴らしい点、それは八ヶ岳西麓に広がる縄文遺跡をテーマに、学芸員とモデラー(掲載されている写真のフィギュアは全て著者の自作です)という、二つのキャリアを存分に注ぎ込んだ、美しくも丁寧に纏められた、ページの上に描かれる縄文ミュージアムを見事に作り上げた事です(注記:信州と表題されていますが、前述のように八ヶ岳西麓がメインテーマです)。

信州の縄文時代が実はすごかったという本巻末に掲載された多くの協力者の皆様の手助けを受けながら、信州の息の長い学研的な伝統が培ってきた研究者の系譜に連なる著者(出身の明治大学において、戸沢充則氏の薫陶を受けています)が、その中心地からほんの少し離れながらも息吹を肌身に感じるであろう八ヶ岳東麓から俯瞰する、数千年に渡ると云われる八ヶ岳高原で大繁栄した縄文時代の主要な研究テーマを丁寧に解説していきます。

執筆協力の皆様によって集められた美しい画像や、良く錬り込まれた豊富な図案。著者自身の制作によるフィギュアによる美しくも可愛らしいフルカラーのページたち。ページに添えられたキャッチーなフレーズを眺めていると、一見して小中学生向けの所謂副教材ではないかと思えてしまいますが、それは大きな誤りのようです。低年齢向けの語法はあえて避けて、一般の読者を想定した文意と、博物館等の刊行物では当然の配慮である、時代感の指摘やキャプション、補記への配慮は、正に本書が学童向けの入門書に留まることなく、より広範な読者、好事者、歴史ファンの皆様に向けて書かれている事の証。多くの皆様が感じているかもしれません、大好きな博物館、美術館を訪れた後、この感動をそのままに収めた一冊の本が欲しいと思う感触そのままに、本書は仕上げられているかのようです。

信州の縄文時代が実はすごかったという本そのテーマ故に入門書としての体裁で纏められていますが、要所に書かれた内容は最新の学術成果も盛り込まれています。本書を読まれる方であれば、一番気になる点についても、最先端の圧痕法(レプリカ法)による知見が盛り込まれており、この一冊で最新の縄文研究の一端に触れる事が出来るように配慮されている点は、更に嬉しいところです。著者はあくまでもこれらの議論に対して、距離を置いた発言をされていますが、その検証手法の発展と新たな知見が現れる事を密かに期待されているようです。

信州の縄文時代が実はすごかったという本そして、八ヶ岳の裾野に広がった縄文時代の遺跡で繰り広げられた物語について、考古学的成果から俯瞰していきます。特異な文様を持った縄文土器の分布と伝播、八ヶ岳の縄文文化を象徴する二つの国宝土偶の物語(二つの間の時間軸的な断絶についても)。そして、発展を支えたであろう豊かな生産性と、交易物としての黒曜石からみる、海をも超えて東日本を広く包み込む、広範な縄文人たちの移動する姿。これらの内容は博物館でじっくり見たつもりでも、改めて本という形で眺め直すと、別の見方が生まれて来るようです。そして、現代に生きる私たちもその大きな流れの中で生きている事を実感させられる、縄文海進とあれほど繁栄した八ヶ岳西麓に生きた人々が残した痕跡の消滅。

ここから先は、是非現在の八ヶ岳山麓に訪れて、その息吹を感じて欲しいとの想いから、多くの類書では決定的に欠けている、各所に点在する博物館の展示紹介や訪問ガイドにページを割いている点は、本書が博物館関係者が著述されている点以上に、地元に在住する人間として、更には本書を通じてその地を訪れたいと思う多くの歴史ファンにとって、極めて嬉しい配慮である事を重ねて述べておきたいと思います(双方に於いて絶対的に断絶して扱われる事が多い、隣県の博物館に関しても、特段の配慮を以て記載をして頂いている点については、深い敬意の念を述べさせていただきます。八ヶ岳山麓は東西南北みんな一緒)。

SNSや著者のブログに残された刊行前のコメントを拝見すると、研究者のキャリアとして本を出すのが早すぎたのではないか、刊行自体に無理があったのではないかと悩まれている様子が伺えますが、そんな想いは多分杞憂だったと思いますよと、お伝えしたいです。

これまでになかった、八ヶ岳山麓の縄文時代を美しくも丁寧に綴られた読むミュージアムとして、多くの歴史が好きな方の机上に届けられることを願って。そして、今度のお休みには、その足跡を訪ねて美しく整備された博物館たち、史跡へ訪れてみませんか。

八ヶ岳ブルーの下で4

信州の縄文時代が実はすごかったという本

P1060493<おまけ>

本書に関連する内容を扱ったページをご紹介します。

中央道の休憩は縄文の想いに触れるひと時(釈迦堂P.Aと釈迦堂遺跡博物館)

中央道の休憩は縄文の想いに触れるひと時(釈迦堂P.Aと釈迦堂遺跡博物館)

中央高速を東京から西に向かうと、笹子トンネルを抜けた後、急坂を転げ降りるようにして甲府盆地に下っていきます。

緊張を強いられる運転から、少し傾斜が緩くなってほっと一息つける場所にある釈迦堂P.A。

車をパーキングに入れて、丘を見上げると、ちょっと不思議な案内板を見かけます。

釈迦堂P.Aと釈迦堂遺跡博物館丘の上に立つ、大きく「博物館」と書かれた建物と、行き先を示す案内板。

パーキングエリアから博物館?、と首を捻ってしまいますが、とりあえず行ってみましょう。

釈迦堂遺跡博物館外観階段を上り詰めると、一般道。

道を渡った正面に博物館の入口が見えてきます。

ここが、日本でも珍しい「高速道路から直接訪問(も)出来る博物館」、釈迦堂遺跡博物館です。

こちらの博物館、 そのものズバリ、中央道を建設中に発見された縄文遺跡である釈迦堂遺跡の発掘成果を展示する為に建てられた、珍しい施設なのです(同じようなシチュエーションで、もっと大規模な遺跡であった、長野県諏訪郡原村の阿久遺跡には、残念ながら併設の博物館は存在しません。遺跡の脇に立つ収蔵庫内の一部の収蔵品が、遥か山懐に立地する、村立八ヶ岳美術館に展示されています)。

釈迦堂遺跡博物館から中央道を俯瞰館内の喫茶室や展望室からは、このように釈迦堂P.Aの様子や笛吹の市街地を望む事が出来ます。

釈迦堂遺跡博物館内部1では、さっそく見学してみましょう。

縄文土偶にお詳しい方ならご存知の、この博物館の名物が出迎えてくれます。

何と、こちらの博物館はカメラOKなので、お好みの写真を撮る事も出来ます。但し、フラッシュ厳禁ですのでスマホ撮りの際にはご注意を。

釈迦堂遺跡博物館内部2奥の陳列棚にずらっと並ぶこの名物、さあ近づいて観てみましょう。

釈迦堂遺跡博物館内部3目の前を埋め尽くす、顔、顔、顔…。

この博物館の名物、それは国内で発掘された出土数の1割近くを占める、膨大な土偶たち。

目の前にびっしりと並べられた、土偶の顔を始めとしたパーツ類が見学者の皆様に向かって一斉にご挨拶です。

釈迦堂遺跡博物館内部4個性豊かな土偶たち。ちょっとおかしかったのが、真ん中の土偶にカメラの顔認識がばっちり反応した事(大笑)。縄文人の感性は、現代のエンジニアリングにも共鳴してくれるようです。

釈迦堂遺跡博物館内部5豊富な顔のバリエーション。どんな想いでこれらの顔を生み出していたのでしょうか。

釈迦堂遺跡博物館内部7土器の縁につけられていたと考えられる人面たち。

ちょっとお気に入りが左の2つ。どこかで見た事がある様な顔つきではありませんか…?

釈迦堂遺跡博物館内部6宇宙人のような土偶の顔達。こちらの遺跡では多数の土偶が出土していますが、これらのように破壊されたり、一部のパーツだけの状態の土偶が殆どで、国宝土偶が2つも揃う、尖石のような華やかさはありません。

釈迦堂遺跡博物館内部8華やかさが無いと言いましたが、特徴的な出土物には事欠かない釈迦堂遺跡。

こちらのような、出産シーンをそのまま土偶にしたと考えられる、極めて貴重な出土物もあります(江戸時代までの出産同様、中腰の姿勢で出産していたと考えられています)。

釈迦堂遺跡博物館内部9そして、館内を奥に進んでいくと、この博物館のもう一つのお宝が見えてきます。

釈迦堂遺跡博物館内部10ガラスケースの中で、周りを威圧するように静かに佇む、この博物館でも大物、縄文土器としても大きな逸品中の逸品、水煙文土器。土偶には興味があるけど、土器はちょっと…という方でも、納得の迫力を持った芸術作品と言いたくなる土器です。

釈迦堂遺跡博物館内部11水煙文土器の後ろには、同時に発掘された土器たちがオープンスペースに展示されています。

もちろん、手に取る事は出来ませんが、ガラス越しではなく、縄文土器の肌合いを直に感じる事が出来ます(この展示方法は、尖石でも実施されています)。

釈迦堂遺跡博物館内部12これらの土器を作った際に余った粘土を序に焼き上げたのでしょうか、指跡が残る粘土や、粘土を入れていたと思われる、編んだ網の跡が残る粘土も出土されています。大量に土器、土偶が生産されていた事を示す、貴重な発掘物です。

釈迦堂遺跡博物館内部13そして、こちらも貴重な土鈴。

生活に汲々としていたわけではなく、豊かな文化性を持ち合わせていた証拠。このような出土品は極めて珍しく、こちらの博物館では、名物の「桃の箱」にこの土鈴のレプリカを入れたノベルティも用意されています(土偶の顔が入っているバージョンも…欲しいですか?)。

釈迦堂遺跡博物館内部14縄文の世界から、ちょっと薄暗いエントランスを通って現代へと。

中央道のドライブに少し疲れた時にちょっと寄り道して、ひと時のタイムトリップなど如何でしょうか。

釈迦堂Jomonコレクションパンフタイミングが悪かったのが悔やまれますが、夏休みを前にした7/15から、発掘35周年、重文指定10周年を記念した特別展示が開催されるそうです(第一期、9/7まで。普段は閉鎖している特別展示室が使われるはずです)。メインは大型土器。縄文土器ファンの皆様には必見の展示になりそうですね。

<おまけ>

似たようなテーマを扱ったページをご紹介。

今月の読本「奇妙なアメリカ 神と正義のミュージアム」(矢口祐人 新潮選書)多様性をテンプレート化する狭間で

暑い夏の午後。涼しい高原地帯とはいえ、ここ最近の猛暑では日中は出かけるのも躊躇してしまう程の日差しが降り注ぐため、日暮れまでの間は涼しい屋内で読書をして過ごす時間が長くなっていきます。

今日もそんな午後のひと時に読んでいた一冊をご紹介。選書のシリーズでは価格の安さとキワモノとまでは言いませんが、少し斜に構えたテーマ設定の作品が多い新潮選書の6月の新刊から一冊拾ってみました。

奇妙なアメリカ

奇妙なアメリカ 神と正義のミュージアム」(矢口祐人著)です。

普段は副題を添えてご紹介しない場合が多いのですが、本書ばかりは副題が必須のように思えます。当の本人も、副題に気が付くまで本書がアメリカのミュージアムを題材に取った作品だと気が付かなかったくらいですから…。

しかも、副題の内容も本書の内容を反映しているかといえば、殆ど正しくないようです。

本屋さんで書籍を手に取る最初のインターフェイスはもちろん題名、そして装丁だと思います。その点、同一の装丁で揃えられている都合上でしょうか、差別化を図るために用いられたと思われる、インパクト重視の題名やキャッチーな帯からは書籍のイメージが伝わりにくく、この辺りの選定に何時も首を傾げる点が多いのが新潮選書の難点なのですが、今回の表題は副題を含めても本書の内容をかなり歪めていると思えてなりません。

本書は神と正義の話のような、福音派をモチーフにした題材でもありませんし、取り扱われているテーマも奇妙さは全くありません。マガジンスタイルの書籍が扱うような、少しアメリカ文化を茶化してやろうという、表題から感じるノリとは全く反対の、極めて真面目なミュージアムについてのお話が続きます(著者はハワイ文化が専門の東京大学大学院総合文化研究科の教授でもあり、名著の中公新書「現代アメリカのキーワード」の共著者でもあります)。その点では、表題が内容を大きくスポイルしている(歪曲している)点は否めません。

本書を読み始めると、まず初めに、アメリカ人が毎年8億5ooo万人もミュージアムに訪れると聞いて、驚くのではないでしょうか。有名なスミソニアンやニューヨーク、ボストンの美術館等、著名なミュージアムが数多く存在するから当たり前と思われるかもしれませんが、あれだけ広大な国土にも関わらず、人口一人当たりの来訪者数で日本とほとんど変わらないと聞くと、まさかと思う方も多いのではないでしょうか。アメリカ人も、日本人同様に「ミュージアム大好き」な人たちなのかもしれません。

本書は、そんなミュージアム好きなアメリカ人にとっても極めて特徴的な展示内容を有するミュージアムを敢えてピックアップして紹介しています。本書では8つのミュージアムが紹介されていきますが、いずれの解説にも、著者の深い配慮が垣間見えます。扱っているミュージアムのテーマがかなり極端な故でしょうか、読者に偏向性と誤解を与えないように、内容には極力公平性を保とうとする筆致が伺えます。

そもそも、ミュージアムと定義づける以上、何らかのテーマに則った展示が求められるわけですから、テーマに合わせたテンプレート(もしくはストーリー)に展示内容を載せていく必要が生じる点は不可避なことだと思います。その点で、本書に紹介されている8つのミュージアムはいずれも特定のテンプレートを下敷きにどのように展示を組み立てているのかを、著者の感想や、時に施設の内外での出来事を交えながら語っていきます。

紹介されるミュージアムはどれも展示の上での芸術性、工夫に溢れており、特徴的な場所に所在し、ここでしか見られないというテーマを持っているのですが、著者はそれぞれの展示内容に対して、充分にアメリカ社会を理解した上でなければこれらの内容を理解することはできないと明言しています。

著者は、そこにあるアメリカ社会特有の理論構築について、展示者の意図から読み解いていこうとします。創造論や核兵器の正当性を示すためには科学を以て証明する。犯罪に対して罪は罪、罰は罰と割り切るドライさと、危うさ。成金趣味と言われようが、芸術に投資し、故郷に利益を誘導するのも成功者の一側面である事実(日本人もこの点は同じですね)。何を於いても、国家の大義、そしてコミュニティの大切さを訴える事を優先する。

そのような解説を通して、本書で扱われるミュージアムに一貫して、ある特定の配慮が欠落してる点を著者は指摘しようとしている事が判るかと思います。この想いの正体は、最後に紹介する戦艦アリゾナ号メモリアルと、最近改修されたビジターセンターの展示への言及で明確化するように本書は構成されています。多様化を価値観の一方の源泉として重視するアメリカ社会のもう一方の価値観としての、テンプレート化されたミュージアムの展示を通して、意図せずとも除外されたであろう価値観との対比を読み解いていこうという著者の想いが垣間見れます(例外的に、全米日系アメリカ人ミュージアムの紹介の部分では逆否定の表現で記述されている点は、やはり気になります)。

繰り返すようですが、本書は表題にあるような神と正義といった画一的なアメリカ論を語る内容でもありません。丁寧にアメリカの多様性の一側面としてのミュージアムを解説しながら、そこにマイノリティの代表でもある日本人としての著者が感じた、外から見た理想のアメリカ像からの「欠落」を見つけ出していこうという、深い考察を持った一冊であると思います。

<おまけ>

本書と併せて読みたい、最近新潮選書に収められた、同じようなテーマを全米の特徴的なコミュニティを舞台に考察する一冊「アメリカン・コミュニティ」(渡辺靖:著 私が持っているのは2007年に刊行された初版)。アメリカの多様性を知るきっかけとして、とても良い本だと思います。

奇妙なアメリカとアメリカン・コミュニティ<おまけ>

本ページでご紹介している同じようなテーマの書籍、話題を