今月の読本(特別編)「ドキュメント御嶽山大噴火」(山と渓谷社編 ヤマケイ新書)山岳図書専門出版社の良心に裏付けられた、あの時何が起きたかの手掛かりとしての一冊

今月の読本(特別編)「ドキュメント御嶽山大噴火」(山と渓谷社編 ヤマケイ新書)山岳図書専門出版社の良心に裏付けられた、あの時何が起きたかの手掛かりとしての一冊

ドキュメント御嶽山大噴火ヤマケイ新書51024-YS009。

シリーズで刊行される出版物には、大体通し番号が付けられますが、この非常に若い番号にも拘わらず、表題にある様な大きなテーマをシリーズ開始僅か2ヶ月目で手掛け、刊行に漕ぎ着けた版元様並びに編集スタッフに、まずは敬意を表する次第です。

そして、山岳関連図書出版のエキスパートとして、山の文化を活字と写真を以て伝える使命を社是とする出版社として、このようなテーマを速やかに扱って頂けた事を素直に嬉しく思っています。SNSの登場によって、情報が今まで以上にライブ感とスピードを競うようになり、その結果、僅かの時間で情報が消費され、忘れ去られる中にあって、情報、そして人々の記憶が風化する前に生の言葉を活字として記録に残して頂けた事は、今後起きるであろう類似の事例の為にも、極めて貴重な実録となるはずです。

ヤマケイ新書の第2回配本として緊急出版された「ドキュメント御嶽山大噴火」(山と渓谷社編)です。

本書は緊急出版のため、その過半がインタビュー形式の文章で綴られています。また、信州大学の研究陣より寄せられた科学的考察と題される寄稿文(火山噴火、防災、高層気象)も、その時間的制約から実質的には既存の知見に基づく、テレビ等でおなじみの識者へのインタビューを採録したような形に近い書式を採っています(その中でも、今回の噴火が防災上予想されていた範囲であった点はきちんと理解すべきですし、前兆現象が把握されていた中で今回のような被害が防げなかった防災学、減災の限界を直視させられます)。

それだけに、本書は読書を楽しむものでも、読むことによって知的好奇心を満たすための本でもありません。

前述のように、情報と記憶が風化する前に、当事者たちの声を採録し、それを記録することを最優先とした実録と考えたい一冊です。従って、インタビューのフォーマットはほぼ全て揃えられており、遭遇者の心境や現在の境遇を綴る事よりも、実際に起きた事の時系列性や当時の装備、登山経験といった遭遇者のバックボーン、そして避難や救助の状況描写に力点を置いている点からも、極めて記録性を重視した内容となっているといえます。

その上で、多くの遭遇者が「もっとしてあげられる事があった筈」と心境を述べていた事に配慮したのでしょうか、巻末には特別編として災害リスク心理学を専門とする研究者による「サバイバーズ・ギルト」という、聞きなれない言葉を用いた、所謂「生き残り」に対する後悔の念を持たれる方に対する、心理学的な配慮に関する見解が述べられていきます。

本書は、普通の新書本の新刊とは一線を画す一冊。同時に発売された今月号の「山と渓谷」の特集記事と併せて、山岳を愛好するすべての方々への、山に登るという事の極めて危険な一側面を改めて知って頂く事と共に、辛くも生還された方々の貴重な声を正しく記録しておくことを目指した本。あの日、あの時に起きた事を正確に理解し、次に山を目指す人々へ語り継ぐために。

<参考として>

本書の前に刊行されたもう一冊の緊急出版物である「緊急報道写真集2014.9.27 御嶽山噴火」と、数少ない火山としての御嶽山を単独で扱った書籍、今回の噴火に際して迅速な再版が行われた「御嶽山 静かなる活火山」(木股文昭著)。いずれも地元の信濃毎日新聞社刊も併せてご覧頂ければと思います(写真は2010年の初版本で、書店で確認したところ、再販本とは帯と掲載写真が異なっています)。

御嶽山関連書籍

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今月の読本(特別編)「御嶽山 静かなる活火山」(木股文昭 信濃毎日新聞社)緊急再版のご案内

今月の読本(特別編)「御嶽山 静かなる活火山」(木股文昭 信濃毎日新聞社)緊急再版のご案内

既に版元在庫なしとなっていた、元:名古屋大学地震火山・防災研究センター教授で、現:東濃地震科学研究所の副首席主任研究員である、木股文昭氏の著作である「御嶽山 静かなる活火山」(信濃毎日新聞社)が急遽再版されることになりました。

信毎のホームページをご覧頂ければと思いますが、11月には各地の書店に入荷すると思われいます。

<信濃毎日新聞社オンラインショップの紹介文追記より>

※2014年9月の噴火を受けた緊急増刷版ですが、本の内容は2010年6月刊行のものです。ただし、帯を新装し、グラビアには2014年の噴火写真、また、巻頭に著者の言葉を追加しました。

—引用ここまで—

(著者は、現在欠品中で緊急増刷中の「緊急報道写真集 2014.9.27 御嶽山噴火」にも寄稿されています)

御嶽山を単独で扱った数少ない書籍の再版実現。このような事故の発生を受けての再版とは大変残念ではありますが、ご興味のある方は、是非ご一読頂きたいと思います。

御嶽山 静かなる活火山

(上記の写真は、私が所蔵する初版本です)

本書が刊行されたのは2010年の6月。まだ東日本大震災も発生しておらず、噴火に関する記述は2007年の噴火自体を直接確認できなかったこと、最後の地震に関する記述は宮城県内陸地震と、その後激変してしまった状況と大きくかい離している部分も見受けられます。

読み手である私自身も、最初に読んだときには、書かれている内容自体に対して、自身の切迫感もなかったこともあり、あまりピンとくるところが無かったのが実感です。むしろ、繰り返し述べられる苦言に、やや食傷気味だったと事を覚えています。

しかしながら、現在の御嶽山で発生している状況について、改めて本書を読みなおしてみると、現在議論となっているほぼすべて点に対してカバーしている事に驚かされます。

まず、研究レベルの話としては、御嶽山自体の活動実態が、実質的に1979年の噴火以降、僅か30年ほどのデータしかないため、全く以て活動の予測が困難であることが挙げられています。更に、地中のマグマの動きが極めて特異であり、他の活火山でのモデルを適用することが難しいこと、また火山活動がマグマとの直接の関係が示唆されるにも関わらず、これまでの噴火ではマグマ起因の噴出物が無いという複雑さを有するため、当時としても火山活動のモデルを構築することが難しかったことが判ります。

更に、噴火モデルを検証するにも、火山活動を詳細に把握するためにも必要となる、最後の頼みの綱である地震計による観測も、気象庁の地震計は僅か1か所(これは現在も同じ)。実際の観測には、大学や県が設置する観測機器にも頼らざるを得ないこという厳しい現実(さらに言えば、2007年の噴火の際にも、長野県が管理する山頂の地震計は使う事が出来ず、今回も停止していたという、同じ問題を抱えてしまった)。特に標高3000mを超える独立峰である御嶽山の場合、モニタリングカメラもかなり長距離から狙わなければならず、常に噴煙を確認できないというジレンマも抱えています。

以上のような観測体制上、データ蓄積上にも課題を抱えながらも実施に移された、警戒レベルの導入について、活動実態の把握が不足しているために、その後の観測の充実が既に求められていましたが、実際には前述のように2007年の小規模噴火や、その後の大震災による見直しも間に合わず、今回の結果となってしまいました。

そのような中でも、これまでの知見で山頂付近で噴火活動が起これば、噴火による生活への影響はほとんどないが、火砕流や土石流が大きな被害をもたらす可能性が実際に把握されており、実際に噴火活動に伴う警戒レベルに応じた対応により、今回の噴火規模(現時点で)では一般生活への影響はほぼ出ておらず、地元への被害は最小限度に留まっています(現在では、観光面での風評被害や他の活火山におけるリスクマネージメントの方が大きくクローズアップされています)。

この点は、1979年の噴火の時と同じく、今回の噴火でも不幸にして登山中の方が撮影された多くの写真や動画が噴火の様子を把握する第一次情報と なってしまったことからも明らかなように、集中型の観測体制における機動力の弱さを露呈してしまった感があります。この機動力の違いに対して、本書の刊行 当時には地元測候所の閉鎖を疑問視していますが、それから4年を経てSNSが大きく普及した現在では、気象庁や関係機関による情報発表の前にSNSで噴火 の情報や登山者による直接の投稿写真が配信されるという、更なるかい離が生じる結果となっています。

本書では、このような後手に回っている観測、監視、情報共有化への対応策として、2007年の噴火事例や、当時活発な噴火活動を起こしていた浅間山の例を取り上げて、ネットによる火山情報の共有化にまで踏み込んだ提起を行っており、その先進性には驚かされるばかりです。

この度の再販を機会に多くの方が本書を手に取られ、研究の最先端に就かれていた方の火山噴火、防災に対する想いを少しでも知る機会が増えることを願ってやみません。

御嶽山噴火緊急写真集

木曽馬の里のシンボルと御嶽山再び、のんびりと木曽駒達と戯れる、穏やかな日々が戻って来る事を願いながら(開田高原、木曽駒の里より御嶽山を遠望。2014年5月)。

<本ページ内の関連リンク>

新緑の山々を越えながら信州を西へ西へ(八ヶ岳西麓から開田高原へ)

素晴らしい五月晴れに恵まれた週末。

残雪残る信州の山並みを望みながら、山国、信州を西へ西へと横断していきます。

田植えを待つ水田と甲斐駒青々とした空の下、甲斐駒と鳳凰三山の山並みが広がります。

水田の田植えまであともう少しです(北杜市、小淵沢町)

田植えの終わった水田と南アルプスの山並みこちらはさらに標高の高い圃場。

田植えが始まりました。空気が澄んだ空の下に南アルプスの山々と、富士山まで望めます(諏訪郡富士見町、先達)

畑越しに北アルプスの山々北上しながら諏訪に近づくと、正面には北アルプスの山々が見えるようになります。

足元には茅野の街並みと僅かに諏訪湖も望めます(諏訪郡原村、阿久)

杖突峠から諏訪の街並み諏訪湖を回り込む予定を急遽変更して、諏訪の街並みを背に、一気に杖突峠によじ登ります。

クリアーな空。落葉松の新緑の先には、諏訪湖と諏訪の街並み、霧ヶ峰から美ヶ原を望む事が出来ます。

左手には雲に隠されながらも、北アルプスの残雪を望む事が出来ます。

杖突峠から八ヶ岳連峰麦草峠から、今まで走ってきたルートを足元に眺めます。

遠くには八ヶ岳の山並みを望む事が出来ます。左から蓼科山、横岳、麦草峠を挟んで、天狗岳、雪がまだ多く残る、硫黄岳、横岳、主峰・赤岳といった八ヶ岳の中核、離れて、編笠岳、権現岳です。

新緑の箕輪ダム湖(もみじ湖)中央構造線の東沿いに伸びる山脈を抜けて、更に西へ一山抜けていく途中に、小さなダム湖、箕輪ダム湖があります。

周囲の新緑が湖面に眩しく映ります(伊那郡箕輪町、長岡新田)。

新緑の箕輪ダム湖(もみじ湖)2湖面の周囲は、ダムを造る際に植林されたもみじの木々で埋め尽くされています。別名もみじ湖と呼ばれています。

このシーズンは落葉松より淡い、黄緑色の葉に染まっています。

牧草地越しに大芝高原から南アルプス南アルプスの山々を抜けると、南北に広がる伊那谷に到着します。

伊那谷が広がりだす場所に位置する大芝高原。ここからは伊那谷に沿って聳える、両名峰を望む事が出来ます。

まずは、これまで越えてきた、南アルプスの山々を振り返って(伊那郡南箕輪村、大芝)。

大芝公園前の牧草地から雪を残す木曽駒前方には、これから超えていく木曽駒が真っ白な雪を湛えて聳えています。

牧草地では春植え牧草の刈取りが真っ最中です(伊那郡南箕輪村、大芝)。

権兵衛峠麓から木曽駒白く輝く、木曽駒の頂を(南箕輪村、南原)。

開田高原・九蔵峠から御嶽山遠望1権兵衛峠を越えて、木曽谷に入り、更に西に進路をとり続けると、正面に真っ白な御嶽山を望む事が出来るようになります。

その雄大な山並に圧倒されます(木曽郡木曽町、開田・九蔵峠)。

開田高原・九蔵峠から御嶽山遠望2こんな南に位置しているのに、雪を満々と湛える御嶽山。

裾野に広がる高原地帯の広さも圧倒的です。この先は岐阜県、高山。信州を西に抜けていく旅程もここでおしまいです。

開田高原の青空と筋雲最後に、開田高原から望む青空を。

高い空に、筋雲が幾重にも伸びていきます。

標高は八ヶ岳西麓の高原地帯と同じ1100mほど。位置は西にちょうど60km程度なのですが、ここまで移動するのに、下道でも100km以上の距離を経ています。