ちょっとマイナーな中央構造線露頭は、ゲートの奥の素敵な小天地(中央構造線、板山露頭)

ちょっとマイナーな中央構造線露頭は、ゲートの奥の素敵な小天地(中央構造線、板山露頭)

中央構造線沿いには、幾つかのジオパークが控えていますが、その最も判りやすいポイントとして挙げられ、色々な解説でも採り上げられるのが「露頭」ではないでしょうか。

有名な観光地になっている糸魚川は良く知られているところですし、かの大鹿村の某博物館界隈には、国道152号線沿いに(この場合は正しくは酷道と書くべきですね)2つの露頭が控えています。

大鹿村に比べるとちょっとマイナーなのが、伊那市内の旧高遠と旧長谷にある露頭。長谷(溝口露頭)に関しては、それでも美和湖の畔にあり、駐車場が完備されていますので、道の駅(ここの手作りパン、特にクロワッサンは絶品です)に寄る序にでも訪れる事が出来ますが、それらに比べると圧倒的にマイナーな露頭がもう一つあります。

杖突街道を杖突峠から高遠に抜けていく途中、もう少しで高遠という場所にあるガソリンスタンド(エネオス)を抜けたすぐ先に、このような看板が立っています(本当は、この先100m程の所にもっと立派な案内看板が立っているのですが、左折すると、短い区間ですがいきなりすれ違い絶対不可の1車線道路に連れ込まれるので、個人的には多少なりとも道幅のあるこちら側から入る方がお好みです)。

暫く走ると、このように案内看板が見えてきます。案内に従って路地に入ろうとすると…。

中央構造線、板山路頭のゲート前

何とゲートで封鎖されています。なにやらゲートに書かれているのでもう少し近寄ってみましょう(道幅狭いので、路駐せずに奥へ)。

「ご自由にお入りください」の表示です。ちょっとほっとして、ラッチを外して中に車を進めます(お願い:ゲートの掲示にも書かれていますように、お帰りの際には「必ず」ゲートのラッチを閉めて下さいますよう、お願い致します。ゲート付き進入可の林道と同じルールですね)。

ゲートを開けたら、チェーンを左右のポールに引っ掛けておけばOKです。ゲート奥の右手が駐車スペースになります。

駐車スペースに用意された周辺案内看板。露頭までは約80mと至近です。

では、てくてくと歩いてみましょう。

ほんの数分歩くと、このように案内看板が見えてきます。すでにこの位置からでも露頭の様子が判りますね。

立派な案内看板が用意された、中央構造線、板山露頭。今まで中央構造線の露頭は5カ所見てきましたが(南アルプスジオパーク内はこれでコンプリートです。あ、程野は麓を通過しただけだった)、一番丁寧に解説された看板ではないでしょうか。こういう看板が糸魚川にも”露頭の目の前”に欲しいのですが…。

北川露頭のような、頭上遥か高くから目の前に迫ってくる圧倒的な露頭ではありませんが、高さは3m弱、視線の正面で見られて、はっきりと判りやすい露頭です。

露頭のアプローチ路の途中で見られるのですが、左側の脆く崩れた岩肌には植生が見られますが、右側の黒い岩肌には植生があまり見られません(僅かに松が岩に食い込むように生えているだけです)。脆く風化しやすい地質では定着するのは本来難しいですが、根を張る事は出来るためにこのような違いが生まれるようです。

南アルプスジオパーク内にある5つの露頭のうち、板山以外の4つは露頭自体の見学が終わればジオサイトとしての見所としてはそこまでですが、板山露頭の場合には、もう二つ、お楽しみが用意されていました。

一旦、駐車場まで戻って、案内板に従って、左側の細い道(階段)を登っていきます。

急な斜面の墓地を抜けると、目の前の視界が開けてきます。正面には、戦後、高遠城内から移築されたと云われる鳥居が立っています。

鳥居を抜けてすぐ先に小さな石柱で区切られた広場が見えてきます。

広場に入ると、狭い谷間を抜ける杖突街道とは一線を画す空の広さ。一気に視界が広がってきます。

正面には比較的最近に建てられた神楽殿。私の住んでいる場所もそうですが、この地方は神楽や農村歌舞伎(すぐお隣の大鹿はとくに有名ですね)の伝統が色濃く残っています。

神楽殿の裏手には、小奇麗な社殿が建っています。昭和23年にこの地に遷された、殿宮神社と呼ぶそうです。

そして、境内の裏手には、足元に杖突街道を見下ろすパノラマが広がります。

殿宮神社から見渡す、杖突街道と中央構造線の解説板。

解説板と同じカットを。杖突峠に向けてうねるように登っていく街道筋と中央構造線、そして左右の山並みの違いが判るでしょうか。

暫し周囲の山々の絶景を堪能した後で、今度は山側の遊歩道を降りていきます。

途中、眩しい新緑のトンネルを抜けていきます。

ぐるっと下っていくと、谷筋の窪地にレンゲツツジの群落が出来ています。

建てられた石柱を見ると、どうやら植樹したようです(三葉ツツジと彫られていますが、案内板にもあるようにレンゲツツジですね)。

下まで降りて、レンゲツツジの群落を。丁度シーズンを迎えて満開となっていました。

非常に綺麗に整備された中央構造線、板山露頭。要所に掲示されているように、南アルプスジオパークの登録に向けた一連の整備事業に依る所が大きいようです。

お天気の良い週末の土曜日、しかもレンゲツツジが見頃という絶好の訪問タイミングにも拘わらず、私が滞在していた小一時間ほどの間に訪れた方は残念ながらゼロ。国道沿いからこんなに近くて、しかも整備されて見やすい場所なのですが、なかなかに難しいジオパーク。杖突街道を見下ろせる貴重な高台に至るにしても、僅かに歩く事、5分ほどです。

高遠にお越しの際のほんのちょっとの寄り道として(実はこの先の小豆坂トンネルを抜けると長谷に通じており(反対側はかの有名な廃集落、芝平からラフロードを登り富士見方面に抜ける事が出来ます)、桜のシーズン、杖突峠側からの渋滞を避けて、逆サイドの美和湖側からアプローチするための抜け道だったりもします)、更にはこの先に繋がる”酷道”ツアーの付け合せに如何でしょうか。

中央構造線、板山露頭の周辺地図です(地理院地図を使用しています)。

<おまけ>

広告
たまには伊那も(中央構造線を下る)

たまには伊那も(中央構造線を下る)

さて、杖突峠を越えて、伊那に入ると風景は大きく変わっていきます。

急峻に立ち上がる諏訪側に対して緩やかに谷間を下っていく伊那側。構造線付近は地形の変化に富んでいます。

杖突峠を越えた時に寄り道するのは高遠の桜…ではなくてもう少し先まで進んで、旧長谷村にある「道の駅 南アルプスむら」だったりします。

この道の駅で作っているパンは美味しい事で有名で、近隣はおろか各地から観光バスが来訪するくらいの名物になっています。

到着が生憎お昼過ぎだったため、ほとんど残っていなかったのですが、名物のクロワッサンと少々をゲット。

こちらはお持ち帰りの抹茶マフィン(BB9790のカメラにて)。

道の駅・南アルプスむらのマフィン

そして、道の駅のすぐ目の前には全面結氷した美和ダムのダム湖が広がります(こちらもBB9790のカメラで)

結氷した美和ダム

真っ白に結氷した湖面が広がる美和ダム湖。もちろん、ダムのゲートは閉鎖中。

この美和ダム、中央構造線特有の不安定な地質のど真ん中に築かれたため、降雨の度に周囲の山から土砂がどんどん流入。余りの土砂流入の多さにダムの貯水容量が圧迫され、遂には史上初めてダム貯水容量を保護するためにバイパストンネルを掘るというとんでもない工事が行われたダムです。

バイパストンネルと併せてダム湖への土砂の流入を防ぐ目的で建設された、越流堤の上流になる長谷湖側は冬場の渇水期を利用した土砂の浚渫が真っ盛り。普段はエメラルドグリーンの水を湛える湖面も今日は工事現場の土場そのもので、ちょっとがっかりです(こちらもBB9790のカメラにて)。

浚渫中の長谷湖

そんな工事現場のようなダム湖の湖畔に、地学好きの方にはちょっとした見学スポットがあります。

中央構造線溝口露頭

ジオパークにも認定された「中央構造線溝口露頭」です【クリックでフルサイズ】。

ちょっと判り易くするために赤い矢印を入れましたが、この線沿いに日本の東西が分かれていることになります。

地学がお好きな方の中にはこのような露頭を巡っていらっしゃる方も多いかと思いますが、ここでちょっと困ってしまうのは説明用の看板です。

こちらのサイトをご覧いただければ判ると思いますが、何と言っても「柵の終端より先が中央構造線」なのですよ。

従って、この観察場所で看板を眺めて、実際の露頭を見ても一見して何処が中央構造線か判らないのです(正面の薄い変色部分と完全に見誤る)。

せっかく日本ジオパークの認定マークまでつけているのですから、一見してちゃんと把握できる説明板を整備してほしいものですね。

美和ダム湖

そんな事を考えながら氷結した湖面を照らし返す西日を浴びて、一旦高遠に戻りつつ、再び伊那谷へ向かいます【クリックでフルサイズ】。

この後、火山峠を越えて、駒ケ根まで行ったのですが、残念ながら木曽駒の写真を撮るチャンスを逸して、最後に辿り着いたのは、権兵衛峠の入口、与地から眺める伊那谷を。

権兵衛峠入口より伊那谷と南アルプス

もう夕日が西に傾きかかっていますが、伊那谷の広がりを南北に均すかのように並び立つ南アルプスが眼前に広がります【クリックでフルサイズ】。

普段、東側から見る南アルプスはいきなり聳え立つイメージが強いのですが、伊那谷側から見ると手前に中央構造線の山々が入るので、少し優しい雰囲気でしょうか(木曽駒はそれこそ覆いかぶさる位の迫力なのですが…やっぱり写真撮りたかった)。権兵衛峠入口より南アルプス夕景

最後に、我が家の方向に立ちはだかる仙丈ケ岳をアップで【クリックでフルサイズ】。

もちろん、このシーズンに(というか、何時でも)南アルプスの山々を越える事は叶わず、伊那谷が切れる諏訪湖へ向けて車を走らせる事と相成りました。